中国の人権弾圧

漢人(中国人)ですらこの虐待。植民地原住民(「少数民族」)に対する弾圧は想像に余りある。
この問題が他人事ではないのは、最後にあるように、こんな状況を「日中友好のために無視しよう」という屑のような日本人がいるからだ。
日本をそんな屑が屑として正しく軽蔑される社会にしなければならないと思う。

激烈極まる中国の人権弁護士弾圧
胡散臭さは承知だが、「正義」掲げずに隣人は救えない
福島香織
2011年7月6日(水)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110704/221271/
(略)

 このリポートで最初に迫害された人権弁護士として紹介され、今も「行方不明」の高智晟さんは、私自身、2006年3月にインタビューしたことのある人物である。

 彼は当時、当局の暴政を訴えるとして、ハンガーストライキリレーを呼びかけた。これに賛同してハンストリレーに参加する人たちは国内外で1万人を超えた。私の印象では、決して過激な扇動を行うような人には見えなかった。知的で落ち着きがあり、そして非常に楽観的だった。

 ハンストといっても7人の弁護士が1週間に1日ずつ曜日を決めて交代で自宅で1人で絶食を行うだけだ。静かな抵抗なので「当局も私たちを逮捕する理由を見つけられないよ」と言っていた。2001年には司法当局から中国十大弁護士として表彰されたこともある優秀な弁護士であり、中国の未来に希望を持っていた。「インドだって中東の国々だって民主化している。中国にできないわけがない」と笑顔で話していた。

 まさかその高さんが、拘束され、恐ろしい拷問にいじめ抜かれ生死も分からぬ状況になるとは、その時、想像できなかった。
 
 高さんは、恐らく宗教の自由や法輪功弾圧をやめるように訴えた胡錦濤国家主席宛ての公開質問状を出したり、外国メディアのインタビューを受けたりしたことを理由に2006年8月、国家政権転覆扇動罪で逮捕され、12月に懲役3年・執行猶予5年という判決を受けた。海外メディアインタビューを受けたことが逮捕理由なら、私にも多少の原因があるのでは、とやきもきしていたが、とりあえず執行猶予5年がついてほっとしたのを覚えている。
 
 ところが彼は、監禁されている間、連続して100時間も鉄のいすに縛られたり、累計800時間も地面に座らされることを強要されたりしたという。これを友人弁護士に漏らしたことから、2007年9月にふたたび拘束された。この拘束は約50日にわたった。うち約10日間は激しい電気棒でショックを睾丸に与えられる、煙草の火を目に近づけられる、尿をかけられる、睡眠をはく奪される、といった残虐な拷問を受け、共産党万歳と唱えさせられて、ようやく食事を与えられたという。
 
 釈放される前に「今回のことを話せば、次は死ぬ時だ。妻子の前でお前を可愛がってやる」と脅迫されたとも聞く。だが、高さん自身が書いたと思われる拷問記録は11月に密かに米国議員に送られた。そして2009年2月から再び当局に拉致される。その後、彼の情報は一切途絶え、拷問死の噂も一時流れた。しかし2010年3月、高さんが山西省の仏教聖地・五台山にいることが判明した。李和平氏ら人権弁護士仲間が電話で彼の無事を確認したことをツイッターにより、ほぼリアルタイムで知った。
 
 しかし高さんは同年4月にAP通信の取材を受けた2週間後にまた姿を消す。そして今もその行方は分からない。AP通信の取材時に高さんは言ったそうだ。自分が米国などに亡命して安全が確認されるか、あるいは再び長期に行方不明になった時、取材内容を公表してほしいと。
 
 AP通信記者はその約束を果たして、今年1月に、高さんが2009年2月から14カ月にわたって監禁されている間、どのような拷問を受けたか、その証言を公開した。高さんは北京、山西省新疆ウイグル自治区の刑務所で、裸にされ、昼夜を問わず殴打され続けたと言う。「お前は人間であることを忘れろ、畜生にすぎない」「いつでも好きな時に消せる」といった脅し文句を浴びせかけられた、という。
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 北京五輪のために土地を強制収容された住人の権利を代弁していた倪玉蘭弁護士は2002年4月に初めて逮捕され、その時、殴る蹴るの拷問を受けている。「自分の骨が折れる音が聞こえた。痛みで頭が真っ白になった」と後に述懐している。

 彼女はその後も「公務執行妨害」などの罪で収監され、1年の間、獄中で拷問を受け続けた。下半身に障害が残り、杖なしで歩行できない体になった。その後も公務執行妨害で2年収監され、獄中で彼女は杖を奪われていたので這って生活していたという。2010年に釈放されたものの、今年4月に夫ともに再び拘束され、現在も北京の派出所に拘留中である。
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 山東省のある村では、党支部書記に抵抗した村民たちが直接選挙で選んだ村長や村民委員を自らの代表としたところ、書記の雇った暴漢に襲われ瀕死の重傷を負ったという事件があった。私は当事者たちにも取材したし、大きく陥没した頭がい骨の手術跡も実際に見た。警察はグルなので事件として立件すらされない。
 
 北京の再開発による土地の強制収用の攻防も当事者たちに取材した。家人が中にいるにも構わず撤去が開始されるのを目の当たりにした。そんな庶民の人権侵害は日常茶飯事で、もはやニュースバリューもない、と言われるほど頻繁だ。
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 こういう話を書くと、日中友好関連団体の人から「ちょっと書きすぎですよ、中国と仲良くすることも必要でしょう」とたしなめられる。「日本にも人権問題はあるでしょう」と。
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