時事深層
厚生年金保険料が2倍になる
田村 賢司
2011年11月18日(金)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20111115/223866/?mlt
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大企業の中高年サラリーマンを狙い撃ちした社会保険料の大幅引き上げが始まりそうだ。厚生年金では、保険料が1.4倍から2倍近くになる層まで出てくる。裏にあるのは、年金・健保財政悪化のつけ回し。政策不信と景気不振をもたらしかねない。

 復興増税社会保障改革のための消費増税に続いて、厚生年金、健康保険、介護保険の保険料が高所得の会社員を対象に大幅引き上げとなる可能性が出てきた。特に厚生年金は、月収63万5000円以上の212万人に影響し、年収1500万円層では年間保険料が1.4倍、同じく2000万円を超える層ではほぼ倍増する計算になる。

「大企業」「中高年」狙い撃ち
 同時に健康保険や介護保険の保険料も、相対的に所得の高い大企業の中高年社員を中心に、年間数万円以上上がりそうだ。負担増が偏り、一方で定額保険料である国民年金に加入している弁護士や開業医など、高額所得の自営業者との負担のアンバランスはさらに拡大する。

 デフレで賃金が減る中、「取りやすいところから取るだけ」(堀江奈保子・みずほ総合研究所上席主任研究員)とも見える政策は、経済の活力を損ないかねず、議論を呼ぶことは必至だ。

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 米ウォール街発のデモの広がりに象徴されるように、世界を見渡せば格差の拡大が一段と深刻な問題となっており、高所得者を負担増の標的にしやすい状況は各国とも同じ。しかし、厳しい環境に流されただけの弥縫策の積み重ねは、格差是正というより不信の増幅をもたらし、経済の活力低下にさえつながりかねない危うさを秘めている。