中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス
物乞いになった元金メダリスト なでしこジャパンの快挙と中国の五輪代表養成システム
福島香織
2011年7月20日(水)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110719/221538/
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 7月中旬、インターネットの微博(中国式ツイッター)で、2001年ユニバーシアード北京大会団体競技とつり輪で金メダルを獲った体操選手、張尚武さん(27)と思われる人物が地下鉄・王府井駅に通じる地下道や東方新天地前といった繁華街で倒立やトーマス旋回などを芸として見せて、投げ銭を得る一種の物乞い「売芸」をやっているというつぶやきが流れ、瞬く間にインターネットで話題になった。その情報を基に各メディアが取材を行ったところ、確かにそれは張さん本人だった。
 
 張さんはユニバ北京大会で金メダルを2枚取り、当時で賞金4万元を獲得するなど、学生体操界の希望の星と呼ばれたのもつかの間、2002年に練習中に左足の腱を切断する事故に遭い、2003年のアテネ五輪の代表選手に選ばれなかった。その後、足の傷の治療がうまくいかず、2005年に引退を余儀なくされた。
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 というのも、中国では張さん以外に、こういった悲惨な末路をたどるスポーツ選手は少なくないのだ。
 
 例えば全国重量上げ女子のチャンピオンとして1987年から93年まで活躍した鄒春蘭さんは、引退後に生活に困窮し、不本意ながら、いわゆるサウナで月収300元前後の「アカスリ」の仕事をして生計を立てていた。しかも、彼女は現役時代に服用させられた男性ホルモン剤のせいで、ひげが生え、医師から妊娠は不可能という診断を受けた。この問題が2006年に報道された後、北京婦女聯盟や吉林省体育局の支援を受けることになり、現在はクリーニング店を経営しているが、中国の選手養成のやり方によって「母になる望みを断たれた」点については依然告発し続けている。
 
 1990年の第11回アジア大会男子重量挙げ金メダリストの才力さんは2003年5月に33歳、睡眠時無呼吸症候群で急死した。その時、彼が持っていた現金はわずか300元だったという。引退後は遼寧省の体育学校の門衛の仕事についていた。
 
 1999年の北京国際マラソン金メダリストの陸上選手、艾冬梅さんは2003年に引退。生活苦から現役時代に獲得したメダル19枚を売ると2007年にブログで訴えたことで話題になった。この時、彼女は現役時代に賞金をコーチに横領されたことや、非科学的なスパルタ式練習方法で足の指が変形し、現在もその後遺症に悩むなどの問題を告発していた。艾さんは「もし娘が陸上選手になりたいと言ったなら、足を折ってでも阻止する」と語るほど、自身の選手生活を後悔しているという。
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 報道ベースでは、2010年末時点で、中国で養成中のスポーツ選手は3万3294人。そのうち正式に選手として契約されるのは1万7444人いる。北京五輪後から2009年末までの間で、再就職が決まっていない引退選手は全国で4343人に上り、2010年にさらに2193人が新たに引退するが、うち45%は再就職できないと言われている。
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