トリウム原子炉 

むかしトリウム原子炉が負けたのは軍事に役立たないからだったんだね。
いまは余計なプルトニウムが溜まっちゃったんだから、それを消化する分だけ新設すればいいのにね。

WEDGE REPORT
日本に溜まるプルトニウムを消化してくれるトリウム原子炉 軽水炉と太陽光の弱点補うトリウム原子炉
2011年09月26日(Mon) 
亀井敬史
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/1507
電気自動車等の材料になるレアアースの副産物として産出されるトリウムが、再び脚光を浴びている。 安全性が高く発電出力を調整できるトリウム原子炉(溶融塩炉)を 実用化することができれば、軽水炉自然エネルギー発電の補完にもなる。
 
 原子力は発電時に二酸化炭素を出さないクリーンなエネルギーだが、放射性廃棄物が発生する。一般に意識されることはほとんどないが、国内の(a)使用済み核燃料の保管場所は、もうすぐ満杯となる。使用済み核燃料は、まず発電所の冷却プールに置かれるが、その容量は日本全体で約2万トン。現在、日本の使用済み核燃料の量は約1万4000トンだ。今後、毎年約1000トン発生する。抱え切れない分は六ヶ所再処理工場にある冷却プールに保管される。これは容量が3000トン。昨年、東京電力が中心となって青森県むつ市に「中間貯蔵施設」の建設を始めた。これも容量は3000トン。早晩、溢れることは目に見えている。
(略)
 プルトニウムは、ウランとともに高速増殖炉で燃やす以外にも軽水炉で燃やすプルサーマルがあり、さらにトリウムとともに軽水炉で燃やすこともできる。今、世界で注目をされているのはトリウムとともに“溶融塩炉”で燃やす方法だ。
(略)
 溶融塩炉は、高温で溶かした塩にトリウムやプルトニウムを混ぜた液体燃料を用いる。溶融塩炉の安全性が高いのには、いくつかの理由がある。たとえば圧力容器が必要ない。(a)軽水炉が沸点100度の水の熱効率を高めるために160気圧(加圧水型)もの圧力をかけているのに比べて、溶融塩炉ではわずか5気圧に過ぎない。それでも、熱効率は44%に及ぶ。装置の圧力が低いことは、製造面でも、運用面でも安全性の向上に貢献する。燃料棒を使わない─実はこれが、需要の変化に応じて出力を変化させる負荷追従運転を可能にする。軽水炉でも出力を変化させることはできるが、熱疲労で被覆管が破損する恐れがある。そのため、日本では一定出力で運転している。損傷する被覆管がない溶融塩炉ならではの特徴だ。被覆管がなければ、水素発生の原因となるジルコニウムもない。燃料棒を使わないため、その製造も毎年の交換も不要である。燃料にまつわるコストは大幅に削減される。燃料交換に伴う廃棄物の量も減少する。
(略)
 トリウム溶融塩炉は、それ単体で世界の環境・エネルギー問題を解決するものではない。しかし、既存のウラン軽水炉の円滑な運用の支援にも、核なき世界の実現にも、レアアースの健全な確保にも、途上国の支援にも欠かすことはできない。中国は今年1月にその開発を表明した。米エネルギー省はバックアップを約束している。インドは50年前からトリウム原子力を開発しているが、溶融塩炉も選択肢から排除していない。昨年の9月、筆者はトリウムが豊富なケララ州トリバンドラムで開催された持続可能な社会構築に関するシンポジウムに招かれた。IPCCのパチャウリ議長の主催だ。インドは、再生可能エネルギーとトリウム原子力を両輪で導入している。筆者は、トリウム原子力に関する講演を依頼された。再生可能エネルギーの議論の場でトリウムが出てこないのは、筆者の知る限り、日本だけだ。
(略)

 
※d【トリウム】
トリウムは、古くから原子力燃料として知られていました。昭和30年に作られた『原子力基本法』にも、「核燃料物質とは、ウラン、トリウム等原子核分裂の過程において高エネルギーを放出する物質」とあります。アメリカでは1960年代にトリウムを使うための実証炉まで作られました。
それが、なぜ今現在、トリウムの原子炉が一つもないかといえば、まさに時代のせいと言えます。第二次世界大戦後の冷戦時代、米ソは核兵器の増産に励みました。前述の通りウランはプルトニウムを生み出しますが、トリウムはプルトニウムを生み出さないのです。また、ウランと異なり、トリウムはそれ自身では核分裂性の同位体を持ちません。当時としては、新たなエネルギー源を生み出すウランのほうを選ぶというのは、自然な選択だったのかもしれません。そうするうちに、ウラン型の原子炉がコスト競争力をつけていき、トリウムを使った原子炉はマイナーの道を辿ることになったのです。

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