原発事故のA級戦犯はゼネラル・エレクトリック社だ
不思議なのは、こういうときにGEを訴える環境団体やらサヨク団体が出てこないことなんだよな。
どんなチンケな訴訟でも話題性十分。問題提起の意義だけでも莫大なものがある。
なのに出ない。
「主犯GE」フクシマの罪
米政府を後ろ盾に傍若無人
http://www.sentaku.co.jp/category/economies/post-1724.php
この未曽有の事故の真犯人は一体、誰なのか。東京電力福島第一原子力発電所の事故経緯が徐々に明らかになる中、原子力関係者の間では事故の直接原因を探る動きが広がっている。福島第一原発事故は想定外の津波が原因とされているが、これはあくまで事故原因の一端に過ぎない。原子力関係者の中でささやかれているのは、福島第一原発が欠陥品だったとする説、すなわち「GE主犯説」だ。
福島第一原発は昭和四十年代の原発草創期に建てられた老朽原発で、1号機は米国ゼネラル・エレクトリック(GE)が主契約者だった。2号機はGEと東芝が組み、3号機は東芝、4号機は日立製作所がそれぞれ単独で契約を交わしたが、いずれも核となるのはGEの技術であり、これらが「GE製原発」であることはまぎれもない事実だ。
1〜4号機はすべて初期の沸騰水型軽水炉(BWR)、「マークⅠ」を採用している。マーク・はフラスコ型の原子炉の下にドーナツ状のサプレッションチェンバー(SC)がある。SCは原子炉内の圧力を調整する重要な役目を果たすが、マークⅠは原子炉とSCを配管でつなぐ極めて脆弱な構造で、建設当初からアキレス腱として危惧されていた、いわく付きの代物だ。その証拠に後継機の「マーク・」はこの構造を刷新し、SCを原子炉と一体化している。
福島第一原発は今回の地震の揺れによる損傷はなかったとされているが、現実問題として2号機のSCは損傷した疑いが濃厚になっている。SCに穴が開けば、大量の放射性物質が外に漏れる。原発の歴史上SCが破損に至った例はなく、マーク・がいかに欠陥品かを世に知らしめる形となった。
疑惑はこれだけではない。1号機は隔離時冷却系がなく、万が一の際の冷却機能を非常用復水器のみに頼っているが、福島第一原発事故ではこれが十全に機能しなかった可能性が出ている。原因は供給配管隔離弁の不可解な閉動作だ。弁が閉まれば当然、蒸気を循環できず冷却機能に支障をきたすが、「この弁はそもそも閉じるはずのない弁だった」(東電関係者)。
弁が閉じた原因として今のところ考えられるのは、非常用復水器の配管破断信号の発出しかない。配管が破損した兆候はないが、破断検出のための電源が落ちた場合は、「フェイルセーフ機能」で閉じることが判明した。フェイルセーフといえば聞こえはいいが、要はシステムの誤作動だ。非常用復水器がうまく動かなかった1号機ではその間に原子炉が空焚きになり、メルトダウンを起こしたのだ。
構造上、設計上の不備がこれだけありながら、GEは事故後も沈黙を貫き通してきた。なぜならGEは知っているからだ。日本には原子力施設が大量の放射能を漏洩する事故に至った際、責任の所在を規定した原子力損害賠償法(原賠法)がある。この法に従う限り、「原発メーカー側の責任は一切生じない」(文部科学省関係者)。頼みの綱の製造物責任法も、第四条でご丁寧に「原子力損害については適用しない」と断っている。
これまで電力会社が原発メーカーに補償を求めたケースがないわけではない。中部電力はかつて、浜岡原子力発電所のタービン損傷で、日立製作所を訴えたことがある。だがこれは、放射能の漏洩を伴う原子力災害ではなかったために成立したケースだ。
つまり、被害の少ない通常の事故は賠償請求ができ、被害が甚大な原子力災害ではメーカー側の責任がかき消される。極めて不条理な法律だが、「それが原子力の特殊性だと考えるしかない」(同)のが実情だ。
もともと原賠法は原発技術を日本に提供した米国を守るためのものだった。原賠法が成立した一九六一年、日本はまだ初めての商業炉である東海発電所に着工したばかりで、原発の運転経験はなかった。東海発電所は英国製で、米国からの技術導入はこれからという段階であり、原賠法は米国製の原子炉を日本に導入するための生け贄にほかならなかったのだ。
製造物責任法の対象外という改悪が行われた九四年は、米国側の意向がより強く働いた。八六年には旧ソ連でチェルノブイリ事故が発生し、米国は原子力災害の恐ろしさを目の当たりにしていた。GE、ウェスチングハウス(WH)という二つの巨大な原発メーカーを抱えていた米国にとっては、原賠法改悪による永遠の免責が何よりも必要だった。
原賠法を知悉したGEの振る舞いは、まさに傍若無人だった。東電が福島第一原発事故の復旧に四苦八苦する中、四月四日にはジェフリー・イメルト会長が提携先の中西宏明日立製作所社長と連れ立ち、海江田万里経済産業相を訪問。イメルト会長はこの会談で、福島第一原発事故の収束と電力安定供給に向け全面協力を申し出た。
全面協力とは表向きの説明に過ぎず、実態はただの商談だった。「イメルト会長が言ったのは、言い換えれば収束ビジネスをほかの国の企業に渡すなということ。廃炉、放射性廃棄物処分まで含めれば事業規模は数兆円になると知った上での訪問だった」(経産省関係者)。この訪問には、GE側に責任が生じないことを確認する目的もあったとされる。
イメルト会長はこの訪日で東電経営陣とも会談したが、これもまた重要な商談の要素をはらんでいた。東電は福島第一、福島第二の両原発を失ったため、夏に向けた応急処置として火力発電用タービンを掻き集めざるを得なかった。このタービンの中に、GE製のものが多く含まれているのだ。「GE側はタービンを有償で、こともあろうにいつもの五割増の値段をふっかけてきた。協力なんて名ばかりで、ただの火事場泥棒だ」と東電幹部は憤る。
収束ビジネスに色気を出す一方で、事故の解明に向けた取り組みには極めて後ろ向きだ。原賠法でいかに厳重に保護されているとはいえ、緊急時の復旧機能に支障があれば原発輸出に響くと思ったのだろうか。GEはこの期に及んでも「福島第一1号機の情報すべては東電に伝えていない」(原子力関係者)という。
GEが主契約者になった1号機はフルターンキーで建設され、東電は出来上がった発電所の鍵を渡されたに過ぎない。そのため東電はおろか、同じBWRを製造する提携先の日立や東芝の技術者でさえ、いまだに知り得ないブラックボックスが存在する。とりわけ原子炉破損を防ぐ生命線とされていた「ドライウェルベント」を巡り、それは顕著だった。
BWRは冷却機能の麻痺などで原子炉内の圧力が高まった場合、ドライウェルベントという手段を使って格納容器内の空気を外に逃がす必要がある。ドライウェルベントを行う際は空気が原子炉建屋に逆流しないように、非常用ガス処理系(SGTS)の上流側AO弁が閉まっていなければならない。六月四日付の朝日新聞朝刊は、この弁が電源喪失により閉まらなかったとの記事を一面トップで載せた。
東電は朝日新聞の記事を受けて各紙の問い合わせに答えたが、明確な答えを出せなかった。理由はSGTS上流側AO弁が電源喪失で閉まる構造なのかどうかがわからなかったからだ。だがわずか半日後、東電はこの朝日新聞の記事を明確に否定する。東電はそこで初めて「当該弁は電源を失うと閉まることが判明した」との公式見解を示した。
前出の原子力関係者は首をひねる。「重要な設備の構造を東電が知らなかったのも問題だが、それがたった半日で分かったのも不可解だ。GEが急遽、設計上の問題に発展するのを恐れて情報を渡したとしか思えない」。結果的に誤報となった朝日の記事には東電幹部のコメントが多数引用されており、東電内にGEへ不満を持つ勢力が存在することを浮き彫りにした。
そもそもGEが大手を振って歩けるのは米国政府の強力な後ろ盾があるからだ。事故発生当初、東電から情報を全く取れず、右往左往するしかなかった無能な菅政権は、不覚にも米国政府の侵犯を許した。米国政府関係者は首相官邸に陣取り、福島第一原発事故の復旧に向けた作業をコントロールした。菅政権は米国政府の暴走を止めることができず、原子力規制委員会(NRC)の現地視察では細野豪志首相補佐官が案内役を務めさせられるという体たらくだ。
米国政府の横やりで、事故収束への道筋が歪められた弊害も現実に起きている。汚染水処理の切り札とされる水処理設備は、フランスのアレバの装置に米国のキュリオンの装置を組み合わせるという不自然なシステムが採用された。「普通に考えれば実績のあるアレバに任せた方がいい。無名のキュリオンを使ったのは米国の意向ではないか」(電力関係者)。案の定、キュリオンの装置は水漏れなどの不具合が相次ぎ、水処理設備の稼働に遅れをもたらした。
米国政府の後ろ盾を得て、火事場泥棒を続けるGEを裁く手段を日本は持たない。菅直人首相の肝いりで発足した「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」も原子力専門家は排除されており、福島第一原発事故におけるGEの罪を暴けそうにない。
福島第一原発でこれだけの被害を出しながら、日本政府は停止中の原発の再稼働を地元に要請し始めた。GEが主契約者となった国内の原発は福島第一、福島第二原発以外にもまだ四基あり、福島第一1号機と完全に同型の原子炉さえ存在する。GEの責任を追及しないまま原発を動かし続ける事態など、許されていいはずがない。