別冊正論 Extra.14 皇室の弥栄、日本の永遠を祈る

別冊正論 Extra.14 (日工ムック)

別冊正論 Extra.14 (日工ムック)

 
「女系論争」は近代化以降揺れ動いた皇室のidentityを確認するためにはある意味「歓迎すべき」論争だったと思う。
ただ最近は小林よしのりさんの側がロジックではなくプロパガンダに堕ちてしまったのでもう生産的な議論は期待できなくなり興味を失っていた。
だけどAmazonの評価欄がおもしろいことになっているとチャンネル桜で言っていたので改めて読んでみる気になった。
結局新味はなくて論争は決着がついていることが確認できただけだった。
   
いちおう総括すると、女系派は「男系に固執すると断絶する+現天皇家が好き」、男系派は「歴史的宗教的に天皇は男系」というのが主張の根幹。
前者は「歴史的宗教的に女系も認められていた」と主張しようとして自滅。
後者は歴史宗教論争に勝利したが、一般庶民を説得できたとはいえない。
漏れは尊皇派(男系派)は、小林さんの相手はもう切り上げて庶民の啓蒙に軸足を移すべきだと思う。
 
だいたいなぜ男系なのかと言われたら究極的には理由は示せない。
神話上そういうことになっている、としか言いようがない。
 
もちろん「男系だけ」を取り出せば近代人権原則に違反している。
ただ人権云々についていうならそもそも世襲身分という時点で違反であるし、それを日本国民は支持しているのだからそれほど重要ではない。
むしろ現皇室への敬愛が女系(直系)を支持している。
だから尊皇派は素朴な庶民感情を説得する必要があるのだ。そっちのほうがよっぽど大仕事だ。
 
そこで大事なのは佐藤優さんがいう「神話に手を触れるな」という原則だ。
どんな伝統も宗教も(イスラム教ですら)時代に合わせ修正を繰り返してきている。
しかし変えて良い部分と変えてはならない部分を見誤ったときAuraは霧散し伝統は崩壊する。
だいたいコアというのはそもそも簡単にロジックを語れるようなものじゃコアたり得ないのだ。
 
結局女系問題は皇室存否の疑似問題である。
反天皇制サヨクがこぞって女系支持に廻ったのは反皇室主義者で芥川賞候補者の小谷野敦さんの指摘するとおり。
そして奇しくも小林さんが自称しだしたように女系派の正体は直系派なのだ。
断絶への危機感ではなく、明治大帝・昭和大帝への恋闕の念から「他家」へ皇統が移動することへの拒絶感が起点だろう。
しかしそれこそ皇室を私物化する堕落だとなぜ分からないのだろうか?
皇族のために皇室があるのではなく、皇室のために皇族がある。
また旧皇族は現皇族と女系を通じて縁戚にあることも多く、現皇室より輿入れすることもできる。
女系容認するくらなんだからそれなら文句もないだろうw
 

皇室の弥栄、日本の永遠を祈る
―皇統をめぐる議論の真贋―
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1月7日発売
 
 「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」。皇室典範第一条にはこう明記されています。現在皇位継承権を持つ男子の皇族は7人、未成年は秋篠宮ご夫妻の長男、悠仁さまだけです。
 平成17年11月、小泉政権下の「皇室典範に関する有識者会議」が、女性・女系天皇を容認する報告書を提出しましたが、悠仁さまのご誕生を受けて見送られ、女性・女系天皇をめぐる拙速な議論は沈静化した感がありました。
 4年後、民主党政権の発足を受け、宮内庁羽毛田信吾長官は現行の皇室典範改正への取り組みを政府に要請したほか、論壇でも、今上陛下の内意を挙げて(根拠は定かでありませんが)女性・女系天皇を積極的に認める意見が展開されるようになってきました。
 日本国の永続と皇室の弥栄を願う国民にとってあるべき皇位継承とは。なぜ女系容認が皇室の危機を招くのか。125代にわたって連綿と受け継がれてきた皇統の重みに思いを致し、我々の先祖が大切に守ってきたことは何かを真摯に考える1冊です。
 
[INTRODUCTION]

皇位継承をめぐる危機とは何か  
高崎経済大学教授 八木秀次

渾身一八〇枚!
墜ちたゴーマニズム―なぜかくも無茶苦茶なのか 小林よしのり氏の皇統論を糺す
論理矛盾と歴史の曲解を重ねる理由は何か。メンツを守るための論戦はやめて、もう一度「公」を向くべきだ
皇學館大学教授 新田 均

絶対君主と立憲君主の間―典範論議に大御心を持ち出す愚
世界に類を見ない「君民一体」の国体。天皇が国民統合の象徴であるとはいかなる意味か
作家・慶応義塾大学講師 竹田恒泰

“皇室軽視”民主党の理論的支柱を粉砕する
変節憲法学者宮沢俊義東大教授の恥ずべき天皇観。八月革命説で皇室を骨抜きにし、日本を共和制にする謀略を暴く
中央大学教授 長尾一紘

皇位世襲」の憲法解釈と「女系天皇」への疑問
憲法も政府見解も「男系が原則」である。立法者意思と百二十五代にわたる継承の重みに思いを致せ
日本大学教授 百地 章

小林よしのり氏に反論する
Y染色体説のどこがトンデモ説なのか
神武以来代々受け継がれてきたY染色体の刻印こそが皇統の証である。血統原理の本質を科学的に語る意義を無視するなかれ
高崎経済大学教授 八木秀次

女系容認論の過誤―「国民の総意」理念の欠如
皇統万世一系の史実を支へてきた、より高次の大御心とは何か
東京大学名誉教授 小堀桂一郎

平成「尊皇」論―今こそ正気の光を
民主党政権という「不敬装置」が皇室と国を揺るがせている。歴史の叡智に学びつつ「正統」を守るために心を奮い立たせよう
皇學館大学教授 松浦光修

“つくられた大御心”と側近たちの大罪
牧野伸顕、木戸孝一日記、富田メモ…、側近たちが残した昭和天皇の〝お言葉〟を改めて検証する。私意や政敵排除に“お言葉”を利用した君側の奸を看過してはならない
国士舘大学講師 倉山満

平成の世に生きる若者にとって皇室とは
皇居勤労奉仕に参加して両陛下からお言葉を賜った感激。皇室を戴く国の担い手としての自覚を共有する輪を広げたい
全日本学生文化会議「大学の使命」編集長 三荻 祥

THE SEIRON ARCHIVES 2005.08
「女系」を容認しても天皇の歴史的正統性は失われない
――皇室典範改正の「焦点」は何か
拓殖大学日本文化研究所客員教授 高森明勅

THE SEIRON ARCHIVES 2009.01
福沢諭吉の皇室論を読み解く
――混迷の今こそ賢哲の洞察の深さに学ぶ
衆議院議員たちあがれ日本代表 平沼赳夫

【検証】小泉政権下の危機―何が行われようとしていたのか  

THE SEIRON ARCHIVES 2006.05
政府文書から見えた皇室典範改正の「裏」
有識者会議の前に、内閣法制局宮内庁などの官僚で構成する非公式検討会が女系容認のレールを敷いていた
産経新聞政治部記者 阿比留瑠比

THE SEIRON ARCHIVES 2006.02
皇室典範有識者会議」とフェミニズムの共振波動が日本を揺るがす
改正報告書に仕組まれた“罠”とは何か。民主主義的手続きの中に皇室を位置づける危機を知れ
東京女子大学教授 林道義

THE SEIRON ARCHIVES 2006.09
皇室典範改正 議論すべき五つの論点
――天皇制廃止のもくろみをうち砕くために何をなすべきか
大月短期大学教授 小山常実

執筆者略歴・操舵室から

 
追記)
ところで兵頭二十八さんがこの問題をどう考えているのか気になる。
というのは氏の南洋天皇制論は「血統」を必然とするのか判然としないからだ。
単に「南洋天皇性」であればシステム上は「選挙で選ばれた天皇」すら許容できることになる。
実際神剣喪失や断絶の可能性についても言及しているしね。