女系天皇論ふたたび


      
よしりんが皇統護持派を突如攻撃しだしたことで再燃した「女系」問題。
漏れはそもそも「女系天皇」など語義矛盾だという立場であるからよしりんには反対なのだが、議論が活発になるのは良いことだと思う。
よしりんが指摘するとおり近未来に直系以外の皇族男子が絶滅するという危機はなんら変わっていないからだ。
しかしよしりんも尊皇から「女系」を推進するなら「男系派」を悪魔化することもなかろうに・・・
よっぽど一部の「男系派」から苛められたんだろうか。
残念である。
   
で、最近よしりんが根拠として持ち出しているのは「陛下のご意志」だ。
ようするに本当は今上陛下は女系でOKと考えているのだが、直接発言できないので宮内庁長官が代弁している、その意を汲んで臣民は黙っとれ、ということ。
しかしこれってよしりんの嫌いな小泉内閣の副官房長官だった漆間がいいだしたもの。
ちょーあやしい。
その時点で陰謀を嗅ぎ取るべきじゃないの?
この動画では竹田氏はツテを頼って直接確認したら違ったと言っている。
どうも男系護持の𥶡仁親王がソースらしいのでいまひとつ確実じゃないんだが、そうであってもおかしくない。
今上陛下はなにより伝統を重視する方。
憲法を遵守するいっぽうで皇室神事を頑なに守られる。
皇位継承については事実上国会の介入を牽制する発言までされている。
2000年来変わらなかった男子相続のルールを変えてイイと簡単に思うわけがないんじゃない?
  
だいたい女系天皇は反皇室の小谷野敦さんが指摘するとおりサヨクの反皇室運動が推進してきた。
彼らがなぜ賛成しているのかよく考えるべきだろう。
あるいはダイアナ妃事件のことだ。
あれは王室が宗教権威を纏っている場合女系を認めたら必然的に発生する危機の典型だった。
ようするに王位継承権を女性が握った場合、どんな旦那を選ぶかを規制することはそれこそ人権的に?できないから、おかしなことが起こりう得る。
ダイアナがアルファイドと結婚したらイスラム教徒に王位継承権が発生しかねなかった。
英国国教会はちいさいとはいえローマ教会と同じ完結した信仰共同体。その長は英国王。(だからといって政教分離に反していないんだよ。これがわかっていないサヨクが多すぎてうんざり)で、その国王が私人としてイスラム教に帰依することは許されるか?という問題を制度的に防止してきたのが男系継承だったのに・・・欧州の場合、たかが封建領主にすぎない国王が一般人同様相続の観点から女系継承を認めたのに倣ったのが運の尽きだった。うちは違いますから!と言えばこんなへんな自体にはならなかったのに。宗教的ドグマと近代自由思想はときどき衝突する。しかし一般人と関係ない話なんだからフォローすることなかったのにね。
繰り返しになるけれど、女系と言った場合学術上は王朝交代と認識するのがグロスタなのだから、いくらニッポン人が天皇家が続いていると言っても外国人は冷徹に第一次天皇王朝が終演した、と認識するにきまっている。そんな状態で皇室制度が続いたとしても明治維新以上に不自然な伝統(伝統というのは正統を継ぐという意味なんだけど)になってしまう。いまですら作られた現在の皇室は伝統的なものじゃないから廃止しろといわれているぐらいなのに、そんな似非皇室になったら数世代を経ずして世論におされて廃止されることは確実だ。
  
またよしりんに引っかかるのは、どうも現皇室のメンバー、昭和天皇今上天皇への恋闕の情から支持しているようにみえることだ。
もちろん漏れとて現皇室の方々に敬意を抱いている。
しかし皇室という伝統は個々の皇室メンバーの人格の善し悪しとは別次元の問題だ。
究極的に言えばシステムの問題であって人格は関係ない。
天皇がイイヒトだから皇室を続けるという考え方は間違っている。
戦後民主主義では世論=大衆感情に配慮しなくてはならないのはやむを得ないのだけれど、原則は原則として踏まえておくべきだろう。