ETV特集『鶴見俊輔 戦後日本 人民の記憶』

 
『プロジェクトJAPAN』でさんざん憤ったNHKだが、これは本当に良い番組だった。
鶴見俊輔という人は「永遠の不良少年」とかいうけれど、それは本を読んでだけいては実感できない。
その佇まい、語り口、やっぱり素晴らしい思想家だと思う。
漏れが鶴見さんを知ったのは高校生になってからだけど、大学時代には選集を読破した。はっきり言って心情的に一番心酔した思想家だったかもしれない。
サヨクの鶴見さんに対するスタンスは微妙だった。
鶴見さんはプラグマティストだから、マルキシズムの硬直した公式史観に反対する。
昭和史の当事者として、天皇尊いと思い、君が代を懐かしいと思い、大東亜戦争と呼ぶ。
とうぜんセクト各派は罵詈雑言。ψ( `∇´ )ψ
でも平気。だって最初から評判なんか気にしないんだもの。実質的に何ができるかだけを考える人だから。
亡くなる前に講演とかないかなあ、いまだ直接謦咳に接していない。九条の会とかやらない?
   


哲学者・鶴見俊輔(86歳)は、自分より先に逝ったさまざまな人に追悼文である「悼詞」を発表してきた。1951年、銀行家・池田成彬から2008年、漫画家・赤塚不二夫まで57年間で125人にも及ぶ。高橋和巳竹内好志賀直哉寺山修司手塚治虫丸山眞男小田実など戦後日本で一世を風靡(ふうび)した人物たちに送った悼詞だ。半世紀以上に渡って書き続けてきた「悼詞」を改めて見て、鶴見は逝く人たちからさまざまな知恵と思いを授かったことに感謝すると共に、今、生きている者の使命として、まだ語り残さなければならないことがあるという。
   
鶴見俊輔は、知識人の戦争責任を問う「転向」など、常に戦後日本社会に鋭く切り込んできた。60年安保、ベトナム反戦運動など精力的に活動し、ふつうの市民と共に走り続けた。そんな鶴見にバトンを渡した死者125人の「戦後精神」を見つめ、鶴見の行動の軌跡をたどりながら、戦後精神史の前線を描く。長時間インタビューと今も精力的に活動する模様をドキュメントしていく。死を意識した鶴見俊輔が語り残す言葉は、急激な変化が進む今、日本の戦後の貴重な証言である。未来へのメッセージとしたい。
http://www.nhk.or.jp/etv21c/backnum/index.html

  
ところで、NHKはこの番組をオンデマンドで売るらしい。漏れは賛成だし金も出すだろう。だけど本当はようつべとかニコ動とかで金のないクレジット決済の出来ない中高生に見てほしい番組なんだよなあ。教養番組については金とるなよ。それがNHKの役割だろう?
https://www.nhk-ondemand.jp/index.html
  

  
16歳の俊輔君 ジャンだ!
   
追記)
話は変わるが、NHKは国民啓蒙用の「タレント文化人」を常に何人もストックしている。
いま、サヨクNHK史観の広告塔トップタレントは姜尚中だ。(新日曜美術館ψ( `∇´ )ψそこまでやるか?)
次に育成中なのは爆笑問題(の太田光)、中島岳志あたりなんだろうけど、はっきりいって太田の知的能力は疑問だし、中島はもう駄目だろう。姜尚中は思想家ではない(というか主著とかあるの?)。言いにくいことをはっきり言うと、ザイニチに対する日本人の感情のお陰でポジションキープしている”文化人”に過ぎない。理論を提示できないから撤退線を偽装するだけなのだ。
そういう意味で、敗戦民主主義の感情記憶のストックはあと十数年で損耗するだろう、というのが漏れの見立てだ。
これはサヨクに対する悪意で言っているのではない。
むしろ元サヨクとしての忸怩たる思いだ。
少なくとも90年代にサヨクは自分らの劣勢を主体的に分析し、理論で(政治ではなく!)アセットを残すよう努力すべきだったんだ。もう遅いけど・・・
ただ、鶴見俊輔の思想は残る。彼の思想は泡ではないからだ。確実に言える。
    
追記)
なお、サヨクの反省ということについて、漏れの問題意識は2つ。
(1)ひとつは強い人間中心主義(なんでも理性で操作できる)という考えの破綻を経験主義的に修正すること。
(2)もうひとつは「戦争そのもの」とか「人権そのもの」とか「国家そのもの」という問題のたて方をやめること。
   これはなんか言っているようで実は殆ど無意味な問題設定だ。
   具体的には戦争反対=憲法九条まもれ、じゃ駄目で、官僚制の暴走を抑止する装置を考えるべき。
   日本国=悪、だから日本の戦争=100%悪。なんて杜撰で的を外した批判じゃだめ。
   官僚制度の何がどう機能しなかったのか、それを反省して工学的に修正するという態度が必要。当然感情論なぞ不要。
   とくに後者は戦後日本=アメリカの下僕として生き残った官僚制の弊害という基本図式を明確化すること。
   (おもえば、日本資本主義従属論争って、これを捉え損なった議論だったんだよなあ)