日本の歴代権力者

   

日本の歴代権力者 (幻冬舎新書)

日本の歴代権力者 (幻冬舎新書)

   
小谷野先生は共和主義者で皇室制度批判者でもあるのだが、実証的な日本文学者だから鋭いことを言う。
この本自体はただの権力者データブックであってたいしたものじゃないが、あとがきで「天皇は日本の法皇である」というきわめて真っ当な指摘をしていた。
何点かあげると、
ローマ帝国では皇帝=神だったがキリスト教がつたわると皇帝と教皇に分離し後者は権威として残った。
教皇はしばしば世俗の権力を巡って皇帝と競合対立した。
教皇天皇も「神の代理人」としては等価である。
・ただしローマ皇帝教皇世襲ではない点が天皇とは異なる。
   
最後の点については、ドグマの違いから説明できる。
神と人間が絶縁し前者が後者を創ったという世界的に極めて特殊なユダヤキリスト教の世界観からは神に対する代理人は誰でもよい。
しかし多くの民族にとって人間は神の子孫であり、祖先神の最高神の子孫が現世の民族の長であり代理人となる。
よって祭司長は世襲でなければならない、というのは自然なことだ。
むしろ非世襲のほうが特異なのだ。