ファイナルエンペラー

 

  
え〜、LASTとFINALの意味の違い

last:連続したもののいちばん最後のものを表わすが, その一連の事物の完了・終結を必ずしも示さない
final:一連の事物がそれで終結することを示す

だそうで、”ローマ帝国終了のお知らせ”なんだからFINALで正しいのか。
でも皇帝=ホノリウスは全く出てきません。
ラヴェンナの宮廷の描写もありません。
そもそもホノリウスはFinal Emperorではありません。
漏れ的にはユリウス・ネポス、一般にはロムルス・アウグストゥスが最後の皇帝です。
それにホノリウスは悲劇の皇帝どころか帝国崩壊に手を打たず保身しか考えなかった愚帝です。
まったくもって映画『Last Emperor』の名声に肖ろうとした配給会社のあざとさ炸裂の邦題です。ひでえな、まったく。
 
これはローマ市長ルティリオ・ナマツィアーノがローマ帝国を救うため反ホノリウス帝の叛乱を呼びかけるために故郷のガリアに向け旅をする過程を描いた映画です。
20世紀に発見されたルティリオの手記を基にしたというセミ・ノンフィクションだそうです。
面白いのがローマ帝国の復興を願う彼は非キリスト教徒であって、映画全体がキリスト教批判になっていることです。
彼の見立てではキリスト教徒になったローマ市民はもはや現実を直視せず空想の神の国に逃げているわけです。
ゴート人もゲルマン人もひどいですが最大の問題はキリスト教によるローマ精神の喪失だというのです。
それにしても五賢帝の頃までは良く描かれますが、滅亡直前のローマ帝国の描写は極めて珍しく興味深く観ました。
兵士や貴族の服装や生活などはあんまり大きな変化はないようなんですが、フツーに野蛮人が闊歩していて元からのローマ人が怯えて暮らしている。
滅びんとする帝国というのはこんな具合にカオスに戻ってゆくのでしょうか?
ユダヤ人やキリスト教に改宗したローマ人がお祈りだなんだと騒いでいる様子。
未だオシリス信仰の村があったり、古来の生き方を守るローマ人が孤独に頑張ったり高貴な自死を選んだり。。。
ただ予算の都合もあったのでしょうけれど、やっぱりラヴェンナの宮廷の様子を見せて欲しかったなあ。
因みに最後に登場する皇帝親衛隊らしき兵士は異様な甲冑でしたがちゃんと考証されているのかなあ。
  

ローマ陥落。
キリスト教はローマを守ってくれなかった!憲法九条にお祈りしても駄目ですよ(笑))
それで懐柔のために非キリスト教徒のルティリオが市長になったのです。

ホノリウスさんです。鶏の”ローマちゃん”に餌をあげてます。
ローマ陥落は25歳のとき。あとはひたすら生き残ることだけが目的の人生。

その親衛隊長にして実質の支配者スティリコ。

ローマからミラノに逃げ最後にラヴェンナに立て籠もった。

最後まで残っていた帝国領。
でも、蛮族が闊歩しているので内実はローマ人の帝国と言えたかどうか。
ということで現代のイタリア人って古代のローマ人とは直接関係ないと見た方がよいでしょう。
これはギリシャもチャイナも同じ。みんな自称子孫ですから(笑)