天皇・反戦・日本(浅羽通明同時代論集治国平天下篇)

天皇・反戦・日本―浅羽通明同時代論集 治国平天下篇

天皇・反戦・日本―浅羽通明同時代論集 治国平天下篇

         
浅羽通明は日本には少ない原理的な思想家だ。だから好きだ。
日本の場合、たいていの「文化人」屋は自らの立脚点に自覚がない。ずぼずぼの地盤に看板建築を建てている。それが気持ち悪い。
読者は結論から逆算してその前提を想像するしかない。そしてその地盤とは多くの場合、戦後民主主義屋さんの業界の掟に過ぎないのだった。
浅羽の論が明晰なのは、一旦対象を情緒的に切断したうえで操作的に論を組み立てているからだろう。
別な言葉で言えば、彼の議論はSF的なのだ。あるいはオタク的なのだ。
そして他にそのような論者を挙げるとすれば、宮台真司であり、その系譜は廣松渉小室直樹に繋がる。
つまり理系的知性なのだ。(浅羽は司法試験合格者であるが)
         
というわけで、頭をすっきりさせるのに最適な一書。
とくに戦後左翼という賞味期限切れの耄碌した体制派(本当は左翼こそが戦後の体制そのものなのだよ)を批判するには。
                    

第1部 まだ天皇が必要なあなたへ(誰かすめろぎを人間とさせ奉りしか―ソクーロフ「太陽」の告発;日本の中心で愛をさけんだ皇子―近代天皇制よ、安らかに眠れ;今こそ天皇制を無視する強さを―「太平記」が解禁された日;天皇報道のディテールを読む―平成はここから始まった)
                         
第2部 戦争が平成の奥に立っていた(反戦の姿勢―慣れないことは止めておけ;反戦の技法1―ロシアン・ルーレット計画始末;反戦と職能2―劇場アニメ「王立宇宙軍オネアミスの翼」を観る)
                             
第3部 同時多発テロの夜が明けて(テロルの技法―携帯電話を持った個兵の時代;激震はデニーズのメニューに及び―テロルとスウィーツ;替え歌「聖戦の朝」;テロルの曾孫よ、ぼくたちは―軍歌「アメリカ爆撃」と世界システム;今ぞ顧みる「富嶽」の幻)
                           
第4部 日本国を構想する(靖国歴史認識―日本は革命戦士顕彰碑を屹立させうるか?;アジアと歴史認識―韓流SF映画「ロスト・メモリーズ」を観る;日本国憲法1―まず「前文を削除」という改正を!;日本国憲法2―「国籍離脱の自由」から考える反戦平和;協働体日本の方へ―佐藤優国家の罠』を読む)
                         
第5部 治国平天下を展望する(帝国への逆襲―アメリカの戦争と日本の態度;祝祭と定常化へ向かう日本―小泉純一郎政権とライブドア騒動;もはや戦後ではない―そして戦前でも戦中でもない)