日本気象学会が「研究結果を自由に発表してはいけない」と呼びかけた

なぜほかの学者は抗議の声をあげないのだろう?
サラリーマンしかいないのか?

原発 憲法23条違反が多くの人を危険にする
http://takedanet.com/2011/04/post_eeab.html
学問の危機である.そして「学問」が直接、国民の健康を脅かそうとしている。
福島の教職員が子供を守るために立ち上がることができず、教育委員会が「国が安全と言っているから」という一点張りの考えに押され、児童生徒を初期被曝から守れなかったように、学者も学問の危機に立ち上がれない。
「御用学者」という言葉が人目をはばからず語られるようになっても、学者は沈黙を守っている.
1990年の始め、「役に立つ研究」、「研究費の重点配分」になってから、学者は「すこしでも政府にたてつけば、来年から研究費がなくなる」という恐怖に身がすくんでいる.
その意味では、日本の学者の大半が「御用学者」にならざるを得ないのが現状で、学問の危機を目にしても行動ができない。
児童生徒を守ることができなかった福島県の先生方と、多くの学者は同じなのかも知れない。
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でも、何が学問の危機なのか? 
それは、憲法が定める「学問の自由」が公的に犯され、「憲法違反した学者(日本気象学会長)が逮捕されない」という事実が発生したからだ。
3月末、日本気象学会の学会長が、学会員に対して「研究結果を自由に発表してはいけない」と呼びかけた.
憲法第23条は「学問の自由」を明確に示している.そして、日本学術会議が認めた正式な学会は、学問の自由のもとで活動をしている。
学会が「年会」や「研究会」を開くときに、政府の許可を必要としないのは、学会が政府から独立しているからである。
学問に自由を与えることは時の政府にとっては都合が悪い場合がある.でも、近代社会はいくつかの経験を積み重ね、社会の健全な発展には学問の自由(テーマの選択、研究の実施、そして成果の発表について、不利益を被らない)を認めるようになったのである。
そして、学問の自由は「国家の危機」の時に、その必要性が増大する。例えば戦争の前、大災害の時などである。
ドイツのナチスヒットラーソ連・・・大虐殺が起こるような異常な社会では学問の自由が侵される.
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気象学会長は「気象学は当てにならない学問だ」という。
福島原発からの放射性物質がどの方向に飛ぶかを学問的に研究し、その成果を発表すると「人心を惑わす」ので、気象学会は「政府が一元的に発表するデータ以外の発表は好ましくない」とした。
気象の部門でも、学会は政府より力がないと言う。
一方、政府は巨費をかけて作った「重大事故時の放射性物質の飛散予測システム」である、SPEEDIを持っているが、結果は一度、発表しただけで、まったく公表されない。
このことについて二つの話を聞いた。
一つは「放射性物質の飛散については、政府高官が知るべき事であり、国民に知らせる目的ではない」という学会筋の話であり、二つは「SPEEDIのデータを国民に知らせる必要は無い」というSPEEDI研究者の話である.
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さらに気象庁は、政府に命令されて渋々、IAEAに報告していた福島原発からの気流の動きについて、そのホームページに掲載したが、そこに注釈がついている。
こともあろうに、気象庁は次のように言う.
1) このデータはIAEAに出すものであって、日本国民に知らせるものではない、
2) このデータは「予測にもとづいて計算したものであり、実際の観測地が入っていないから(予報だから)、本来は発表するべきものではない、
3) 放射性物質の拡散はSPEEDI の役割であり、そっちに聞いてくれ。
「気流の動き」という意味では気象庁は、花粉予想とか噴煙予想をする。また「未来の予想」では、天気予報、台風進路予報、それに100年後の温暖化予報もする。
それなのに、予報だからという理由で「放射性物質飛散予報」をしない。
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私は学者なので、学問の自由を享受している.何を言っても大学を首になることはない。中部大学は明るく、学問の自由を守ってくれる.
だから、私はその恩返しに、社会に私の専門で判ることをそのまま発信している.
そんな私にとってはこの1ヶ月でもっとも衝撃的だったのは、気象学会長のコメントだ.絶望で目の前が暗くなった。学問の自由がないのなら学問はしたくない。
それに加えて税金をもらっている気象庁が、もっとも大切な時期に福島原発からの放射性物質の飛散予想をしなかったこと、それをドイツ気象センターから供給を受けたことに、やりきれない思いをした。
平成23年4月10日 午後5時 執筆)

 2011 年 3 月 18 日
 日本気象学会会員各位
 

 日本気象学会理事長
 新野 宏 
 
 このたび発生した東北地方太平洋沖地震とこれに伴う津波では東北地方・関東地方に未曾有の被害が生じました。これらの地域にお住まいの皆様のご無事をお祈り申し上げますと共に、被害に遭われた皆様には心よりお見舞い申し上げます。
 
 また、困難な状況の中、救援・復旧に総力を注がれている皆様に深い敬意を表します。
 
 今回の災害は、私達に2つの重大な教訓を与えたと思います。
 
 第一は、災害は想定を越えた激しい現象によって起きること、第二は日頃から十分な防災訓練や対策を行っていても現実の現象の前では十分機能しないことがあることです。
 
 二度とこのような災害を繰り返さない防災体制や防災教育をいかに構築していくかは、当学会が関わる多様な気象災害
においても共通の課題であり、私達は今一層真剣に取り組んでいく必要があると思います。
 
 今回の地震災害の影響は、今後も長く継続していきます。避難所に避難されている方々への支援、被災地の復興の支援には、すべての国民と共に力を尽くしていく必要がありま
す。
 
 一方、この地震に伴い福島第一原子力発電所の事故が発生し、放射性物質の拡散が懸念されています。大気拡散は、気象学・大気科学の1つの重要な研究課題であり、当学会にもこの課題に関する業務や研究をされている会員が多数所属されています。
 
 しかしながら、放射性物質の拡散は、防災対策と密接に関わる問題であり、適切な気象観測・予測データの使用はもとより、放射性物質特有の複雑な物理・化学過程、とりわけ拡散源の正確な情報を考慮しなければ信頼できる予測は容易ではありません。
 
 今回の未曾有の原子力災害に関しては、政府の災害対策本部の指揮・命令のもと、国を挙げてその対策に当たっている
ところであり、当学会の気象学・大気科学の関係者が不確実性を伴う情報を提供、あるいは不用意に一般に伝わりかねない手段で交換することは、徒に国の防災対策に関する情報等を混乱させることになりかねません。放射線の影響予測については、国の原子力防災対策の中で、文部科学省等が信頼できる予測システムを整備しており、その予測に基づいて適切な防災情報が提供されることになっています。
 
 防災対策の基本は、信頼できる単一の情報を提供し、その情報に基づいて行動することです。会員の皆様はこの点を念頭において適切に対応されるようにお願いしたいと思います。