福島・校庭放射線「20ミリシーベルト」国に不信感

福島・校庭放射線「20ミリシーベルト」国に不信感
http://www.47news.jp/news/2011/05/post_20110502062825.html
 

活動制限が解除された後も、校庭に子どもたちの姿は戻っていない=1日、福島市の福島三小
 
 学校などでの屋外活動を制限する放射線量をめぐり、福島県内で困惑が広がっている。「1年間に20ミリシーベルト」という目安に対して、内閣官房参与が反発して辞任した上、原子力安全委員会がたった2時間で「妥当」と結論付けていたことが分かったためだ。国のずさんな対応によって、県や市町村は一層対応に苦慮している。

■わずか2時間
 「政府の基準で一生懸命やってきたのに、困惑してしまう。正しい専門的な知見に基づく指示だと思って対応しているのに」
 佐藤雄平知事は1日、県災害対策本部会議で政府側の出席者を前に不快感を示した。県議会も不信を強め、2日の災害対策本部員会議で、政府への抗議に向けた意見を集約する方針だ。
 佐藤憲保議長は「政府内に反発した人がいるのに、原子力安全委員会がわずか2時間で決めるような基準では、県民が不安になるのも当然」と批判。「こんなことが繰り返されては困る。こんな付け焼き刃の結論だったのか」と吐き捨てた。
 内閣官房参与の小佐古敏荘東大大学院教授(放射線安全学)が放射線量基準の厳格化などを求めて辞任したことは、県にとっても影響が大きかった。政府内の「見解不統一」を露呈し、頼りにしていた20ミリシーベルトの正当性がぐらついてしまった。

■県民から苦情
 不安を訴える県民からの問い合わせも増えている。県の窓口には「もっと安全な基準を県独自で設定すべきだ」「土壌を入れ替えてほしい」といった声が寄せられている。
 県は必死で不安解消に努めるが、よりどころは政府の判断。頼りない政府の姿に、県民の不安を抑え切れない。
 福島市教委にも、小中学生の保護者らから「校庭や園庭の表土を早く削ってほしい。どうして実施しないのか」との要望や苦情が相次いでいる。郡山市が先月27日に校庭の表土を削り取ると、「なぜ福島市はやらないのか」という意見が目立って増えたという。
 福島市は「削ることは検討しているが、空気中に放射性物質が残っている状態だと、1回では済まない可能性もある。土の処分方法も問題で、動くに動けない」と決めかねている。
 福島市で1日あった市民団体の集会に参加した二本松市の加藤敬子さん(36)は「年間20ミリシーベルトが安全だなんて全然思わない。適当に決められて、命が軽視されているとしか思えない」と話す。
 集会には約250人の保護者らが集まった。3人の子どもを持つ加藤さんは「国を動かすような、保護者同士のつながりを持ちたい」と話していた。

[屋外活動制限の線量基準] 福島第1原発事故を受け、小中学校などの屋外活動を制限するかどうかの目安として文部科学省が示した放射線量の値。屋外で毎時3.8マイクロシーベルト未満の場合は平常通り活動できるとした。算定の目安となった年間の積算被ばく放射線量20ミリシーベルトは、国際機関が示した非常時の被ばく許容線量(1〜20ミリシーベルト)の上限に当たるため「子どもに認める放射線量としては大きすぎる」との批判が出ている。


2011年05月02日月曜日