田母神論文騒動(2)

     


     
やっぱりアサヒが”理論武装”を宣伝し始めた。
なかなか検証するサヨがいないなか、立場をはっきりさせるのはエラい。
さて、右派のみなさん、ちゃんと論破できるかな?
  

田母神前空幕長論文 近現代史家が検証
  
事実誤認の感想文
  
波紋を広げる防衛省田母神俊雄・前航空幕僚長の論文。日本の侵略を否定する考えは、自衛隊内でどう受け止められているのか。幹部の歴史教育はどうしているのか。11日の参院への参考人招致を前に取材し、論文の問題点を、近現代史が専門の秦郁彦保阪正康両氏に聞いた。
 
論文要旨 

 
日本は十九世紀の後半以降、朝鮮半島や中国大陸に軍を進めることになるが相手国の了承を得ないで一方的に軍を進めたことはない=①。我が国は日清戦争日露戦争などによって国際法上合法的に中国大陸に権益を得て、これを守るために条約等に基づいて軍を配置したのである。

この日本軍に対し蒋介石国民党は頻繁にテロ行為を繰り返す。実は蒋介石コミンテルンに動かされていた=②。毛沢東共産党のゲリラが国民党内に多数入り込んでいた。コミンテルンの目的は日本軍と国民党を戦わせ、両者を疲弊させ、最終的に毛沢東共産党に中国大陸を支配させることであった。我が国は蒋介石により日中戦争に引きずり込まれた被害者なのである=同。
  
1928年の張作霖列車爆破事件も関東軍の仕業だと言われてきたが、最近ではコミンテルンの仕業という説が極めて有力になってきている。
1937年の盧溝橋事件も、今では「仕掛け人は中国共産党」という証言が明らかになっている。
   
日米戦争も、日本を戦争に引きずり込むために米国によって慎重に仕掛けられた鳥だったことが判明している。実は米国もコミンテルンに動かされていた。ルーズベルト政権内のコミンテルンのスパイが大統領を動かし、我が国を日米戦争に追い込んでいく。日本はルーズベルトの仕掛けた罠にはまり真珠湾攻撃を決行することになる=③。
   
大東亜戦争の後、多くのアジア、アフリカ諸国が白人国家の支配から解放されることになった。それは日露戦争大東亜戦争を戦った日本の力によるものである。
   
東京裁判は戦争責任をすべて日本に押しつけようとしたものだ。そのマイシドコントロールは今なお日本人を惑わせている。
   
私たちは多くのアジア諸国大東亜戦争を肯定的に評価していることを認識しておく必要がある=④。我が国が侵略国家だったなどというのは正に濡れ衣である=⑤。私たちは輝かしい日本の歴史を取り戻さなければならない。

史実 無理な解釈
    
①日本の進軍 (日本は相手国の了承を得ず軍を進めたことはない)
   
秦 これは思いちがいだろう。「満州事変はどうだったのか」と反問するだけで崩れてしまう論だ。満州事変は、日本の関東軍が謀略で鉄道を爆破し一方的に始めた戦争だ。
謀議者から実行部隊の兵士まで関係者の多くの証言がある。当時の軍首脳も政府も追認、予算も支出している。日中戦争大東亜戦争も相手国の了承なしに始めた戦争だ。
 
保阪 史実を押さえれば、田母神論文のような解釈はできない。「国際法上合法的に中国大陸に権益を得て…」
とあるが、西欧列強もアジアでの支配を合法化した。だから正しい、と言うのは歴史の見方ではない。帝国主義の支配者は被支配者より何倍も狡猾だ。「多少の圧力を伴わない条約など存在したことがない」とも記述しているが、子どもの言い訳に等しい。
 

(にゃんこのコメント)秦さんは敬愛する歴史家だが、事実関係に強いけどフレームはいまいちなんだよなぁ。満洲無政府状態だったから簡単に侵略とはいえないだろう。”無理な解釈”であって”史実に反する”と言わないのはそのせいかな?日中戦争、太平洋戦争は了承なし、というのは正しいね。だけど前者は蒋介石による開戦、後者は日本軍による開戦という違いがある。したがって、反論になるのは太平洋戦争だけ。保坂は嫌いな歴史家だ。というか、この人ただのヲタクにしか見えないんだけど。。大きな意味で侵略かどうかは難しい問題だけど、ここでの論点は合法性だというのが明らかなんだから道義的な糾弾しても仕方ないだろう。

 
実証性に乏しい俗論
 
コミンテルン謀略 (我が国は蒋介石により日中戦争に引きずり込まれた)
 
秦 国民党内にコミンテルンのスパイがいたから、蒋介石コミンテルンに動かされていたなどと言うのは、「風が吹けばおけ屋がもうかる」式の強弁だ。張作霖爆殺事件についても、コミンテルンの仕業だという説が「極めて有力になってきている」などと田母神論文は書くが、歴史学の世界では、問題にされていない説だ。
 
張作霧爆殺事件が関東軍の仕業であることは、首謀者の河本大作はじめ関係者が犯行を認めた。このため田中義一内閣が倒れ、「昭和天皇独白録」でも、「事件の主謀者は河本大作大佐である」と断定されている。他にもコミンテルン謀略説が論文のあちこちに出てくるが、いずれも根拠となる確かな裏付け資料があいまいで、実証性に乏しい俗論に過ぎない。
 
保阪 当時の国民党の指導者に取材したことがある。共産党側の人間が国民党に入っていたのは事実だが、コミンテルンが国民党を動かしていたというのは間違いだ。日本の軍部がソ連共産主義への危機感をあおっていた見方だ。「盧溝橋事件でだれが撃ったか」は本質的な問題ではない。中国で日本軍が軍事演習を行っていた背景を見なければならない。
 

(にゃんこのコメント)コミンテルン説はいまだ仮説に過ぎない。だいたい『マオ』って玉石混淆だし。だけどコミンテルンの影響をまったく排除するのも変だろう。秦さん硬すぎ。張作霖爆殺は関東軍でFAなのは同意。しかし・・・保坂はまるで話にならない。ここでは「だれが撃ったか」が論点なんだろうが!中国で日本軍が軍事演習(しかも空砲で!)していたのは駐留権があったから。合法的駐留でも狡猾な侵略だからだめというんじゃそもそも議論する意味ない。

 
推理小説のたぐい
 
米大統領の罠 (日本はルーズベルトの罠にはまり真珠湾攻撃を決行)
 
秦 これも、バージョンを変えて繰り返し出てくる「ルーズベルト陰謀説」の一種だ。ルーズベルト大統領は日本側の第一撃を誘うため真珠湾攻撃を事前に察知していたのに現地軍へ知らせなかった、という筋書きのものが多い。こうした話はミステリー小説のたぐいで、学問的には全く相手にされていない。
 
保阪 米国が日本に先手を打たせたかったというのは事実だろう。だが、日本外交の失策に目をつぶって共産主義者が悪いというのはおかしい。41年4月に日米交渉が始まり、7月に日本は南部仏印に進駐。それに対し、米国は日本の在米資産凍結、石油禁輸措置を決める。政府や大本営が米国を見誤った「甘さ」の方が問題だ。日本が正しくてはめられた、などという諭は無責任だ。
 

(にゃんこのコメント)ここが一番の肝かな。戦後ニッポンのセントラルドグマに抵触するからねぇ。だいたい「学問的には全く相手にされていない」というのはなんら反論になっていない。漏れもこの説はいまだに保留しているけど、秦さんが青筋たてるほど突飛な説とは思わないし、かなり説得的だよ。アカヒ=日本国宣伝省が守ってきたご本尊が「悪いニッポンを正義のアメリカが成敗しました」という東京裁判史観なんだ。だからこそ「アメリカが騙したんだ」というのは一番認められない指摘なんだよね。日本国政府は敗戦後アメリカの手下になった。その日本国政府の下請けが政治家だ。だから、日本の右派政治家はアメリカの手下である霞ヶ関東京裁判史観を強要される。マスゴミも官僚だよ。あんな法律で保護された民間企業があるかって。( ´,_ゝ`)プッところで保坂だけどまたも論点がずれている。問題はアメリカが日本をはめたかどうかだ。フォローのつもりなんだろうけど、保坂は秦さんが否定した陰謀説を肯定しているに等しい。まぁ、「騙された責任」については同感だけど。

 
都合の良い話つなぐ
 
アジア諸国が評価 (多くのアジア諸国大東亜戦争を肯定的に評価)
 
秦 果たしてそうだろうか。田母神論文はこれに続けて「タイで、ビルマで、インドで、シンガポールで、インドネシアで、大東亜戦争を戦った日本の評価は高い」と国名を列挙するが、日本軍が華僑虐殺をしたシンガポールでは、最近まで反日的な空気が強かったと承知している。独立国だったタイも日本軍の駐屯で被害を受けているので、感謝しているとは思えない。
何より、列挙には、一番損害の大きかった中国が入っていない。満州事変に触れなかったのと同様、重要な史実からは逃げ、都合の良い話だけをつないだように見える。
 
保阪 インドネシア独立義勇軍に加わった何人もの元日本兵に取材した。独立のため戦死した日本兵も多い。本当に東南アジアの解放のために戦ったのはそういう人たちだが、国は「逃亡兵」とした。そういう事実を見もしないで都合のいいことを語っている。
 

(にゃんこのコメント)”都合の良い話”ねぇ。たしかにそれはそうだけど、逆に今まで”都合の悪い話”しか認められなかった異常さはスルーするのね。秦さんの「反日派がいるから評価は低い」ってのは「親日派がいるから評価は高い」の裏表でしかない。保坂・・・日本国が敗戦後もレジスタンスを評価できるわけないだろうが!敗戦までの日本国のあり方が問題だろ。頭が悪いのかわざとすり替えているのか。

 
戦後60年」を侮辱
 
⑤侵略「ぬれぎぬ」 (我が国が侵略国家だったというのはまさに濡れ衣)
 
秦 田母神論文は前の方で、「よその国がやったから日本もやっていいということにはならないが、日本だけが侵賂国家だといわれる筋合いもない」と書いている。そこはその通りだと思う。しかし、日本も他の国も侵略国家だったとすると、論理が合わなくなるのではないか。
 
保阪 「侵略国家」とは、どういう意味か。戦後、一つ一つの史実を検証したうえで「これは侵略だ」と認定してきた。中国を侵賂したことは政府でさえ認めたことだ。否定するならば論拠を示すべきだ。論文に書かれている事実はいずれも核心ではない。一部を取り出して恣意的につなぎ合わせるだけでは一面的だ。戦後、史実を実証的に積み重ね、一連の戦争を検証してきた。論文は「60年」という時間を侮辱している。
 

(にゃんこのコメント)「日本も他の国も侵略国家だった」とすると「日本が侵略国家だったというのは濡れ衣だ」という主張と矛盾すると言いたいのかな?それはそうだね。だいたい何を以て侵略国家とするか、定義がないところから議論が展開されるから紛糾するんだよ。でも保坂はそれをはっきりさせないまま「認定してきた」「検証してきた」といっているのじゃ田母神さんと同じだ。そもそも「政府でさえ認めた」ことに抗議するために書かれた論文なんだから、保坂の言い分はまったく田母神さんに届かない。反論するなら論理を見せろ、というのは( ´∀`)オマエモナー

 
自省史観こそ必要
 
⑥全体の印象
 
秦 論文というより感想文に近いが全体として稚拙と評せざるをえない。結論はさておき、根拠となる事実関係が誤認だらけで論理性もない。
 
保阪 かつて兵士たちが生還して色々なことを知ったとき、「日本もむちゃをやった」と素朴な感慨を持った。われわれはそこからスタートしている。昔の日本に批判的なことを「自虐史観」というが、「自省史観」が必要なのだ。「輝かしい」などの形容詞で歴史を誇ってはいけない。ナショナリズムを鼓吹した時、それは偏狭な運動になる。歴史を誇るのであれば、事実に謙虚でなければ。
 

(にゃんこのコメント)事実認定が甘いのは漏れも感じる。でも、それは漏れのこれまでの知識から自分で判断した結果だ。この特集しか読まない人には全然わからないだろ。なのにいきなり勝利宣言。もしかしたら紙面外で検証があったのかもしれないけど、この特集では史実の検証も論理の提示もないのだから、アカヒの反論はただ大声で「田母神は不勉強だ!俺たちが正しい!」と叫んだだけとなっている。これじゃ右派は説得されないよ。保坂の結論「自省史観」が必要、「歴史を誇るのであれば、事実に謙虚」というのは同意。でもさ、田母神さんはそこまで否定したんじゃないと思うよ。「日本=悪者、反論許さず」という空気に反論したんだろ。その意味では、この特集では秦・保坂の二人はまったく田母神さんを説得できていないのだった。

 
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