インタゲ派は論破されたか?

ところで反増税インタゲ派にとって最大の敵は池田信夫さんでしょう。
だったら池田さんを論破するロジックをまず喧伝すべきです。
ところが先日読んだ『日銀の大罪』にしてもそこが曖昧なんです。なんで〜?
 
一方池田さんはインタゲ派に完全勝利宣言(笑)
どうして話がすれ違うのかは簡単です。
財政政策についてハッキリ言わないからです。
 
経済について政府ができるのは金融政策と財政政策しかありません。
たしかに金融政策だけでは限界があります。
インタゲ派は財政政策もセットだともっと大きな声で言うべきでしょう。
池田さんはさすがに意識していて
財務省の介入=財政支出は為替変動を起こせるbut財政赤字の限界あるのでNG」
と急いで付け加えている。
本文じゃなくてコメント欄追記の3行ですよwww
ここが弱点だってバレバレじゃんψ(`∇´)ψ
だからインタゲ派は「デフレ下の財政出動は怖くない」ということを粛々と説得すればいいのです。

2011年08月14日
円高はなぜ止まらないのか
池田信夫blog
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51734256.html
 
 リフレ派も、経済学界ではほぼ壊滅したが、稲葉振一郎氏のような素人や政治家の世界ではまだ生き残っているようだ。こういう宗教的信念をもっている半可通を説得するのは一番むずかしい。「日銀がマネーをばらまけばインフレになる」とか「円安になる」というのは、一見わかりやすいからだ。
 
 現在のような流動性の罠では、中央銀行がいくら通貨を供給してもインフレにならないことは、他ならぬクルーグマンが強調しているところだ。これはアメリカのQE2の経験でも明らかで、バーナンキも認めているので、さすがのリフレ派もいわなくなった。
 
 ところが、今度は「円高は日銀が通貨を十分供給しないからだ」という話が出てきた。高橋洋一氏は「円・ドルレートの動きは、日米のマネタリーベースの比によって、90%程度も説明できる」というのだが、本当だろうか。彼のグラフは都合のいい部分だけ切り取っているので、ここ25年の動きを示す読売新聞の吉田恒氏のグラフをみてみよう。
(図)
 
 ご覧のように、日米のマネタリーベース(ベースマネー)の比とドル円レートの相関は、ないとはいえないが強いともいえない。特に2002〜6年の量的緩和の時期は、日銀が激しくマネタリーベースをふくらませたが、円は逆に強くなった。最近はFRBがQE2でマネタリーベースを激増させてドルが弱くなっているが、相関はそれほど強くない。マネタリーベースだけで決まるなら、1ドル=50円台になっていてもいいはずだ。
 
 こういう乖離が生じる理由は簡単である。貨幣の流通量は通貨供給(マネタリーベース)だけで決まるのではなく、経済学の教科書に書いてある通り、資金需要と供給が一致するように金利が決まるからだ。金利がゼロではない1980年代のような状況なら、均衡は内点解になるので、金利を下げてマネタリーベースを増やせばインフレが起き、円が弱くなる。しかしゼロ金利状態というのはコーナー解なので、日銀がいくら通貨供給を増やしても資金需要を作り出すことができない以上、インフレにはならず、円高も止まらない。
 
・・・といっても稲葉氏のような「人文系ヘタレ」(と自称している)にはわからないだろうから、超わかりやすくいうと、バナナが貴重品だったときには、バナナの供給を増やせば流通量が増えるが、バナナが余って価格がゼロになると、それ以上バナナを供給しても売れ残って腐るだけだ。貨幣も一つの商品だから、超過供給で価格(金利)がゼロになったら、それ以上ふやしても「ブタ積み」になるだけで意味がないのだ。わかるかな?

これでもわからない人がいるので補足しておくと、これは​中央銀行の供給する通貨の話で、通貨当局(日本では財務​省)が介入によって供給する資金は為替レートに影響しま​す(財政政策がインフレにきくのと同じ)。しかしその効​果は短期的で、財政的な制約があります。政府が為替相場​に持続的に影響を与えることはできないのです。

リフレ派の敗走
2009年02月11日
池田信夫
http://agora-web.jp/archives/452944.html
 昔々あるところに、「リフレ派」という(自称)経済学者がいました。リフレーションというのは要するにインフレのことで、「インフレ派」というのは格好が悪いので、こういう名前にしたんだそうです。こんな奇妙な「派閥」が存在するのも日本だけで、ガラパゴス経済学の典型です。
 彼らの主張は「日銀がお札を刷ってインフレにすれば、日本はデフレから脱却できる」というものです。このもとになった1998年のクルーグマン論文はなかなかよくできており、私も最初読んだときはなるほどと思ったものです。彼の論理は単純で

1.日本の不況の原因は「貸し渋り」ではなく、投資需要が低くて自然利子率がマイナスになっていることだ。
2.名目金利をマイナスにすることはできないが、インフレを起こせば実質金利名目金利物価上昇率)はマイナスになる。
3.しかしゼロ金利では国債と貨幣は同じになるので、いくら貨幣を供給してもインフレにはならない。
4.中央銀行インフレ目標を設定して「4%のインフレを15年間続ける」と宣言すればインフレは起こる。

 というものです。この3までは正しいのですが、問題は4です。日銀がインフレを起こす手段をもっていないことはクルーグマンも認めているのに、彼はなぜか「日銀が約束すればインフレ期待が起こる」という。では日銀が期待を変えるメカニズムがはっきりしていなければならないが、彼のモデルでは期待は外生的に所与なので、中央銀行が変えることはできない。モデルとして破綻しているのです。
 
 これは日銀の白川総裁も植田和男氏も指摘し、「クルーグマンの理論には論理的な『穴』があるので、日銀としてはとりえない」というのが彼らの結論でした。しかしリフレ派がうるさいので、2000年ごろから「時間軸政策」を採用しました。これは一定の効果があったというのが白川氏や植田氏の総括ですが、それは長期金利を抑制する効果で、リフレ効果ではありません。
 
 そんなわけで、彼らの主張は日銀に無視され、学界でも忘れられたのですが、最近の金融危機でまた注目を浴びました。10年前の日本と同じ「デフレ・ゼロ金利」という状況がアメリカに出現したからです。しかし、かつて日銀に「インフレ目標を設定しろ」と迫ったバーナンキは、まったく人為的インフレ政策に言及しないし、クルーグマンは"There's no realistic prospect that the Fed can pull the economy out of its nose dive"と金融政策の無効を宣言して、財政政策に専念しています。
 
 すっかりハシゴをはずされた日本のリフレ派は四分五裂状態で、竹森俊平氏は「構造改革派」に転向してしまいました。飯田泰之氏も成長理論に軸足を移し、教祖の岩田規久男もリフレをまったくいわなくなりました。田中秀臣氏ひとりが「屋上の狂人」状態で、今度は政府紙幣に「転進」をはかっていますが、メディアも相手にしない。でたらめな話を誇大に宣伝して他人を中傷したことで、彼らの学問的な信用は失われたのです。
 
 いかにも日本的な、みっともない「学派」の興亡ですが、教訓も少しあります。第一は、日本の経済学者があいかわらず「アメリカの学界の権威」に弱いこと。クルーグマンスウェーデン銀行賞を受賞したとき、彼らは大喜びしましたが、その後かれは1998年の論文の話をしない。かつてインフレ目標を推奨したスティグリッツも、「インフレ目標なんかやめろ」と言い出す始末。
 
 第二は、自前の理論も実証データもなしに、自分と違う意見を「経済学を知らない」などとこき下ろす党派的な傾向が強いこと。これは日本の経済学にまだマル経の影響が残っていることも原因でしょう。リフレ派の活動家にもマル経マル経崩れが多く、そもそもマクロ経済学なんか知らなかった。彼らの振り回した理論は学部レベルのIS-LMで、今では専門家は使わない骨董品です。
 
 彼らの引き起こした騒ぎは、およそ学問的な論争とはいえない醜いもので、英語にならなかったことがせめてもの救いでした。これはガラパゴスの唯一の取り柄ですね。これでリフレ派は壊滅し、ようやく日本のマクロ経済学も、まじめなオリジナルの実証研究が出てくるようになるでしょう。めでたしめでたし。