なにを今更w・・・中国新幹線問題

官民一体で中国から国産技術を守ろう
(日経、11年07月25日)
 
 中国の高速鉄道で惨事が起きた。多数の犠牲者が出たのは残念だ。原因究明と再発防止を求めたい。
 
 中国はこれまで新幹線で世界最長と最速を目指し海外から技術導入を進めてきた。国威発揚のためとはいえ計画を急ぎすぎた可能性がある。
 
 一方、日本の技術を使った別タイプの「中国版新幹線」では特許申請の動きを見せる。「改良し国産といえる水準に高めた」との主張だが、そうした強引な手法も気にかかる。

 鉄道に限らず、自動車やハイテクでも、中国政府が現地生産を認める代わりに中核技術を開示させたり、合弁相手の中国企業に設計を自由に変えていい権利を認めさせたりと要求をエスカレートさせている。技術を出せば「独自技術」と言い出さないか。企業には大きな不安だ。

 競争力の源泉である国産技術を中国に取られないために、企業は何ができるか。有力市場で事前に特許を押さえておくなどの目配りは経営の基本だ。ただ知的財産権を守る法的措置だけでは十分ではない。

 中国市場への進出を目指す外国企業は、中国の規制当局から工場立地の許可や事業認可を受けなければならない。許認可の見返りとして技術移転を要求されれば、現実には抵抗するのは難しい。

 たとえ世界貿易機関WTO)協定に抵触する可能性があっても、中国との関係は悪化させたくない。要求を拒み、中国が米欧のライバル企業に許認可を与えるのも困る。苦渋の決断を迫られ、泣く泣く先端的な技術を中国の合弁相手に開示する日本企業は少なくないはずだ。

 現実には、少しでも要求を緩めるよう中国側に個別に「陳情」するだけの企業が多いのではないか。こうしたジレンマから脱却するには、中国に対する日本の産業界全体の立場を強くしなければならない。

 そのためには、日本の競争力に関わる重要な案件では、官民一体で交渉にあたり、不当な要求に対抗する必要がある。経済産業省や外務省は個別企業の問題だとして看過せずに、交渉の前面に立つべきだ。

 米国や仏独の政府は企業の対中進出の交渉の要所で外交力を発揮し、企業の利益を守っている。首脳外交で企業の個別案件を取り上げる場合も多い。日本の対中外交の当事者に企業の利益を守る気概はあるか。

 長期的には、中国に依存しない分散投資や、知財権の保護を強化した国際的な貿易ルールの整備が重要になる。米国が進める環太平洋経済連携協定(TPP)が、そのための土台になると考えるべきだ。

中国を非難するより前に川重の田舎モノぶりに唖然。 
防衛企業なんだけど。。。○| ̄|_

川重、なぜ特許で守られていなかったのか
 
 中国に鉄道車両の先端技術を供与した川崎重工業。地下鉄車両などでは海外特許を押さえる川重だが、虎の子の新幹線技術はなぜ特許で守られていなかったのか。
 
 「出願内容を確認したうえで対応したい」。6月末の川重の株主総会。中国版新幹線の特許出願問題をただす質問に、松岡京平常務はこう答えた。だが特許のルールでは出願後18カ月は内容が開示されず、「当面は手の打ちようがない」と関係者は漏らす。
 
 川重も技術流出に警戒はしてきた。ただ新興国の技術供与先が特許戦略に打って出るリスクをどこまで想定していたのか。西村あさひ法律事務所の岩倉正和パートナー弁護士は「技術供与の場合は特許出願でそれを守っておくのが一般的」と川重に甘さがあった可能性を指摘。川重は「守秘義務があり契約内容は答えられない」と説明する。
 
 日本の新幹線製造は国内向けがほとんど。部品メーカー幹部は「国内に仕事が十分にあった。海外市場を見据え特許を取得する発想は無かった」と打ち明ける。同じく中国に技術供与した独シーメンスは北米やアジア向け輸出を早くから志向してきた。海外特許の申請にも積極的で、今回も中国での特許を巡る問題に巻き込まれていない。
 
 日本では旧国鉄時代から鉄道事業者と複数のメーカーが車両を共同開発してきた。特に新幹線は様々な技術を高度に擦り合わせて造り上げる。それだけに海外で特許出願するには複雑な調整が必要とされる。対するシーメンスは1社で車両を設計・開発し、技術も自社で保有する。
 
 世界で激しさを増すインフラの受注競争。国内で培ってきた常識は通じない。東京大学大橋弘准教授は「(今回の問題は)国内向けが主力だった他のインフラ産業でも起こり得る」と警鐘を鳴らす。
 
日中、新幹線特許で火花 インフラ輸出で守りに甘さ
 
 中国版新幹線には南車のライバル、中国北車の「CRH380B」も走行する。鉄道省は380Bも独自開発だと主張するが、鉄道省、北車との間で技術供与契約を結ぶ独シーメンスの関係者は「我々の技術だ」と明かす。
 
独社と戦略に差
 
 だがシーメンス側は「中国側が独自開発と政治宣伝をするのはいつものこと」と冷静。「技術供与料が支払われ、我々の許可なしに輸出をしないなら目くじら立てずに実利を取る」と話す。
 
 何が違いを生んだのか。川重は新幹線に絡んだ技術を海外で特許出願していない。対するシーメンスは米国などで申請済み。中国側に供与した技術の扱いは「契約で全て明確にしている」。シーメンスの技術力と北車のコスト競争力を組み合わせ、米国で車両受注を狙うとの見方も浮上する。特許戦略の差を中国側に突かれた可能性がある。
 
 1978年、来日したトウ小平氏は新幹線に感嘆した。その後、日中友好の歴史を刻んできた中国版新幹線。だが特許での日中対立に加え、開業1カ月足らずで故障などトラブルが相次ぐ。鉄道省元幹部は「日本の新幹線は運行管理も含めて技術が高い。感情論にとらわれず協力を深めるべきだ」と融和を説く。
 
 特許の国際出願は中国の愛国運動の材料なのか、受注競争の新たなライバル登場を意味するのか。火種はしばらく消えそうにない。

【姓名】大橋忠晴(おおはし・ただはる)
【肩書】川崎重工業社長
【生年】昭和19年11月9日
【出身】兵庫県神戸市
【学歴】昭和44年神戸大学工学部卒業
【経歴】昭和19年11月9日生
    昭和44年神戸大学工学部卒業
    昭和44年4月川崎重工業?入社
    平成13年4月執行役員
    平成15年4月車両カンパニープレジデント
    平成15年6月常務取締役
    平成17年4月取締役副社長
    平成17年6月取締役社長
    平成21年6月取締役会長就任

長谷川聰
昭和22年、愛知県生まれ
昭和47年4月 入社
平成17年4月 執行役員就任
平成19年4月 ガスタービン・機械カンパニープレジデント就任
平成19年6月 常務取締役就任
平成21年4月 取締役副社長就任
平成21年6月 代表取締役社長就任

珍しく『選択』が褒めていたのに、実はなんにもしてませんでした、というオチ。。。?

「インフラ輸出」で真価問われる
長谷川聰(川崎重工業社長)
(選択、10年12月号)
 
 日本の産業界に「インフラの時代」が戻ってきた。道路、鉄道、電力などのインフラ整備を担った企業群が、今度はグローバル市場で強い競争力を発揮し始めている。経済成長に伴いインフラが不足する新興国、途上国はもちろん老朽化したインフラの再構築を図る米欧などで、需要が急増しているからだ。
 その代表格が「シンカンセン」ブランドを武器に世界に鉄道車両を売り込む川崎重工業であり、長谷川聰社長の打ち出す戦略に日本の産業界全体が注目している。長谷川氏は発電用のガスタービンジェットエンジンの設計などに長く携わり、世界市場で勝負してきた。鉄道などインフラは必ずしも専門ではないが、グローバル戦略には最適のトップといえる。
(略)
 世界では新興国、途上国の人口増加、都市への集中によって交通需要は急増しており、地下鉄、都市間鉄道などの整備業務は急増している。二〇年には鉄道だけで二十二兆円の市場になる見込み。日本のインフラビジネスの主軸として川重を率いる長谷川社長の実行手腕が問われる場面がきている。
 今、日本のインフラ業界にとって大きな問題は中国メーカーの海外進出。日欧メーカーが中国のプロジェクト受注の際に供与した技術を転用、改良し、独自技術として世界市場に売り込み、日欧メーカーのライバルになりかねない状況だ。「はやて」型車両を果敢に中国に売り込んだ川重として知財権にどう対応するか、別の意味でも長谷川社長は日本のインフラ業界に大きな責任を負っている。