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高速鉄道事故はなぜ起こったか
事故車両をつぶし、穴に埋めた思考回路と政治的背景
福島香織
2011年8月3日(水)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110729/221757/
(略)
だが、考えてみれば、中国で数十人の死者が出る事故は決して珍しいことではない。(略)
しかし政府がこれほど狼狽し、市民がこれほど怒り、国際社会がこれほど注目するのは「命の重さ」の差ばかりでない。中国の高速鉄道が国家の威信をかけたプロジェクトであり、その誇るべき技術の信頼が失墜しそうなことが狼狽の原因である。その技術への信頼失墜を防ごうと取り繕おうとした結果、乗客の救援が後回しにしたことが、遺族をはじめ市民の怒りを招いている。
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7月23日午後8時11分、浙江省温州市の永嘉駅付近の陸橋の上で、CHR2型、つまり「はやて型」のD3115列車が突然停車した。落雷による緊急停車だった。約20分後、カナダ・ボンバルディア社の技術をベースにしたCHR1型のD301列車が追突した。永嘉駅を出発し速度をあげていたところで、追突時のスピードは時速118キロに達していたという。
D3115列車の第15〜16車両は脱線し、D301列車の第1〜4車両は高架の上から転げ落ち、一部車両は橋から垂直にぶら下がった格好になった。追突したD301の先頭の運転席はぐちゃぐちゃにつぶれ運転手は死亡。しかし急ブレーキを引いた跡があるという。
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このICEは1998年6月3日、死者101人を数える大事故を起こしている。ミュンヘン発ハンブルク行き列車がハンブルク南方のエシェデ駅手前、時速200キロで走行中に脱線した。車両が玉突き状に折り重なり大破した凄惨な現場は、第二次大戦後最大の列車事故として今も人々に記憶されている。
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2008年からドイツで訪問学者として暮らす中国人フリージャーナリスト、周勍氏に、今回の事故について見解を求めるとこう答えた。「高速鉄道に限らず中国がハイテク技術を導入にこだわるのは、公民の暮らし向上を思ってのことではない。ハイテク技術分野には入札時や特許取得のキックバックはじめ種々の利権がある。また国家予算が優先的に投じられる。つまりは関係官僚や地元政府幹部らの懐が温まるからだ。だから、個々の技術が導入された後の、質の維持、技術の統合的運営、メンテナンスなどにまで考えが至らない。事故が起きてすることは、自分が責任を負わないよう、言い訳を考え、証拠を隠ぺいし、適当な人に責任を押し付けるだけだ。今回の事故は起こるべくして起きた。そして今後も起きるだろう」
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