G−SIFIs

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【第148回】 2011年7月11日 週刊ダイヤモンド編集部
外交交渉で日本が“歴史的勝利”巨大金融機関めぐる攻防の舞台裏
http://diamond.jp/articles/-/13061
6月下旬、世界の金融監督当局で構成されるバーゼル銀行監督委員会の首脳グループ会合で、巨大金融機関に対する資本規制の枠組みが固まった。その中身は、邦銀にとってはいずれも受け入れやすい条件となっており、外交オンチの日本としては快挙といえた。金融庁を中心とした日本の金融当局はどう動いたのか。
(略)
 ただ、日本の金融関係者には、ハイリスク・ハイリターンを取る欧米の投資銀行と、商業銀行業務が中心でローリスク・ローリターンの邦銀が同じ土俵で扱われることに強い抵抗があった。

 そこで日本当局は、譲れない3原則を胸に秘めてG−SIFIsの選定基準をめぐる交渉に当たっていた。

 その3原則とは、①金融危機を起こした欧米の金融機関を適切に規制する②主要な金融当局による最先端の情報共有の場に参加するため1行は日本勢を入れる、③規制は一律ではなく、リスクに応じた段階的規制を設けること。

 しかし当初は、金融機関の規模を中心に議論されていた。そうなると、図体の大きい邦銀がG−SIFIsの上位に入り、ローリスクの事業モデルの割には、過剰な規制をかけられる恐れがあった。

 そこで日本当局は一計を案じる。個別金融機関のリスクに応じた選定基準となるよう、六つの基準を設けた日本独自案を提出したのである。それは従来の議論とは大きく異なるものだった。

 その最たる例が、「インセンティブ・フォー・リスクテーキング」という基準。欧米の投資銀行で高額になりがちな報酬体系を選定基準に入れるというものだ。

 この考えは、冒頭で触れたように猛反発が起きる。「賛成してくれる国はほとんどなかった」と日本の当局関係者も明かす。

 ただこれは、「議論の方向性を変えるための極端な提案」(同)であり、いわば“捨て駒”。日本側は残りの五つの基準が採用されれば十分と割り切っていた。

(略)
 しかし、1%の上乗せで1兆円近いキャッシュが必要になるため、経営が安定しているのに付き合わされる邦銀はたまったものではない。いつもならここで寄り切られ、“不平等条約”を結ばされるのが日本だが、今回は違った。
 
 日本当局はまず、自己資本の上乗せの上限について、財政危機に瀕するギリシャ国債を大量に抱え込み、大幅な規制強化に尻込みをし出していた独仏などを巻き込んで共同戦線を張り、上限を抑え込んだとされる。
 
 一方で、自己資本の上乗せ幅については、日本がリスクに応じて段階的にすべきとの持論を持っていたのに対し、独仏は一律と主張していた。そのため今度は戦略を転換し、「仮想敵国はフランス」(メガバンク関係者)と位置づけた。そして「日本案でこれだけ各金融機関の違いが出たのだから、G−SIFIsに課す資本の追加負担も差をつけるべき」などと主張。各国と連携して、上限値では同盟国だったフランスの案を場外へ押し出した。
 
 そうした努力の集大成が、6月25日に公表されたG−SIFIsに関する国際会合の合意内容だ。上表にあるようにG−SIFIsを「規模」「相互連関性」「代替可能性」「グローバルな活動」「複雑性」という日本案をベースとした5基準で判断し、1.0〜2.5%の範囲で資本の上乗せを求めるというもの。
(略)