非常に分かりやすい説明。大ボスはCDSってこと。これが鍵。

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【第158回】 2011年10月25日 週刊ダイヤモンド編集部
ギリシャ債務元本削減で欧州61行が資本不足の衝撃
http://diamond.jp/articles/-/14562
(略)
 もはやギリシャ財政の立て直しには債務元本の削減が不可欠と判断した欧州首脳は、7月にギリシャ向け第2次金融支援に合意した際、2012〜20年に償還期限が来る国債を、より長期の国債に借り換えることで支払いを先延ばしすると同時に、債務元本を21%削減することも決めていた。
 
 ただ国債の借り換えは、格付け会社に「選択的デフォルト(一部債務の不履行)」と見なされる恐れがある。そうなれば、今度はギリシャの破綻に備えた保険(CDS)の清算につながり、CDSの売り手に巨額の損失が発生する。まさに08年のリーマンショックのときのAIGと同じ構図で、金融危機に発展しかねない。
 
 そこで、民間債権者の協力を得る必要が出てくる。債権者による“自主的な”借り換えであれば、CDS清算はなんとか回避されるからだ。世界の銀行業界団体である国際金融協会は、ギリシャ向け債権を抱える世界中の銀行の説得に奔走、ようやく9月9日までに9割の了承を得たとされる。
 
 ところがここにきて、欧州首脳は債務元本の削減率を21%から、50〜60%にまで引き上げるかどうかを検討し始めた。ギリシャの再建計画に狂いが生じ始めているからだ(上表参照)。
(略)
 銀行が自己資本比率の最低水準を達成するには、分母であるリスク資産、つまり貸し出しを減らせばいい。事実、すでに仏銀大手BNPパリバが総資産の1割に当たる700億ユーロものリスク資産の削減計画を明らかにしたほか、仏ソシエテ・ジェネラルも同様の計画を発表している。
 
 欧州当局が迫る銀行の資本増強は大きな矛盾もはらむ。原則として各行は市場での自力増資を求められるが、それが難しい場合には、各国政府による公的資金注入が実施される。結局は、欧州各国の納税者負担となるのである。
 
 仮にギリシャと周辺国のアイルランドポルトガル、スペイン、イタリアの国債を市場実勢価格に応じて評価した際に発生する銀行の損失分を、すべて各国政府が公的資金で穴埋めしようとすれば、ギリシャ政府の債務は対GDP比で10%前後も上昇する。各国の債務増加は避けられない。
 
 そこで最後の増資資金の出し手として期待されるのが、欧州金融安定化基金(EFSF)だ。
 
 しかし、10月13日にユーロ圏17ヵ国すべての合意が得られたEFSFの融資能力の拡大でも、危機の波及を抑えるにはまったく足りない見込みで、使える資金は限られる。融資能力をさらにもう1段階拡大しようものなら、負担率の大きいフランスの国債まで格下げとなる可能性が高い。
 
 10月23日、欧州首脳会議はEFSFの融資能力のさらなる拡大を実現する具体策に加えて、ギリシャの債務元本の大幅削減、銀行への資本注入の三つの対策を示す模様だ。だが、それぞれが矛盾を抱えており、危機打開の決定打とはなりえない。根本原因であるギリシャの返済能力を高める具体策が求められる。
 
 競争力を高める企業の賃下げは消費を押し下げかねず、財政出動による景気刺激策も取れない。ギリシャの経済成長を促すにも、欧州各国による資金支援が不可欠だ。ギリシャ救済がユーロ圏の安定と繁栄につながることを、自国民に納得させられるか。欧州首脳に今、強いリーダーシップと決断が求められている。
 
(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史)