昭和天皇論

   

ゴーマニズム宣言SPECIAL 昭和天皇論

ゴーマニズム宣言SPECIAL 昭和天皇論

   
天皇論と昭和天皇論は違う。と漏れも書いたことがある。
サヨクは今上陛下をどう貶めるか困っているように見える。
なにしろ今上は護憲で戦争反対のひとだからね。
言うにことかいて「戦争犯罪人の息子」とか批判するバカサヨクがいるけど、血族連座と発想する時点で近代人失格です。(^_^)
   
よしりんは前著『天皇論』で皇室の意義を語ったわけだが昭和天皇に関しては別のスティグマが残されていた。
それに正面から取り組んだのがこの本で、つまり昭和天皇(に固有の)戦争責任論がテーマとなっている。
非常によく描かれていた。
幼稚な反天皇論はこれでトドメを刺されと言って良いだろう。
   
というか、読書人の間では山本七平の時代から昭和天皇の戦争責任論など終了していたのだが、テレビや新聞などの大衆メディアでは破綻したはずの責任論が流布しつづけていた。それを掃除してくれたのがこの本の意義だ。
だいたい「ウヨク論客」の人たちってのは狭い業界内?でウンザリするような細かい議論するけど、大衆へ請求するのが下手なんだ。
そのせいでいつまでたっても論理で勝って宣伝で負けていた。
とくに戦争を知る世代が減ってウスラダンカイサヨクが退職を前にマスゴミ権力を握るようになってからは学問的深まりに逆行するように新手の偽装をした戦争責任論が浮上していた。
それをよしりんは綺麗に掃除してくれた。
昭和天皇に不利な(とサヨクが考えている)事例を丁寧に紹介してから検討してゆく手法が非常に効果的だった。
ともかくテレビは見るけど本を読まない大衆を脱洗脳することが大事でそれができるのはよしりんだけだったんだな。
よしりんは保守陣営の論客100人に匹敵すると思うよ。まじに。
だってもはや「従軍慰安婦」やら「強制連行」なんて脳硬化したダンカイサヨク以外誰も言わなくなったもんね。
それにしても右派は考えなくちゃならない大事な問題がたくさんあるのに無意味なサヨクの粘着に対応するのにどんだけ消耗してきたことか。
だからこういう地道なドブさらいをするひとが一番えらい!
    
あと感心したのは、よしりんはこの本のなかでは”女系論”に一切触れていないことだ。
前著『天皇論』ではあとがきで触れたばかりに余計な論点を残してしまった。
昭和天皇を論ずるのに”女系”の問題はノイズを生むばかりだ。
この編集上の配慮があったがゆえに完成度が高いものとなったと言える。
やっぱりよしりんはエライ。
 
ぎゃくに一点不満があるのは戦争責任を論じた部分だ。
よしりんは開戦責任=侵略責任・戦争犯罪責任は戦勝国にもあると指摘している。
これは非常に大事な点だ。
百歩譲って日本軍に南京虐殺の責任があったとしよう、だとしても同時に米軍の原爆投下や無差別爆撃、中国の抑留者強制労働・略奪強姦の罪が相殺されるわけではない。
ただし問題は、よしりんが日米戦争は米国に開戦責任がある、としているところである。
これは法的な問題だから、いかに経済封鎖でいじめられたとしても「開戦責任」という限り日本に責任があるのは明白だ。
東京裁判に反対だったマッカーサーは、真珠湾攻撃の責任を裁くことだけは賛成していた。
なぜなら計画的に攻撃を開始した側が裁かれるのは不戦条約以来の戦争の世界での掟だと正しく認識していたからだ。
よってこの部分のよしりんの批判は気持ちはわかるが間違いだと思う。
そして兵頭氏や別宮氏が指摘するように「米国の開戦責任」に囚われる人は「支那の開戦責任」を看過するというトラップに嵌る。
よしりん支那の開戦責任=上海日本租界攻撃についてなんら指摘していない。
なにもかも一冊に詰め込むのはムリだし、まして昭和天皇論の主題ではないのは承知なのだが、大事なことなのでメモっておく。