日中歴史共同研究だって

   


   
文章を書くなら5W1Hをはっきりさせよと習ったものだが、新聞社によってはポジショントークのためにいかに誤魔化すのかよくわかりますね。
  

日中歴史研、報告書1月に延期 南京犠牲者数で対立
  
 日中両国の有識者による歴史共同研究委員会の最終会合が24日、都内のホテルで開かれた。報告書の発表は来年1月に延期し「古代・中近世史」と「近現代史」を通じて両論併記とすることで合意した。懸案となっていた「南京大虐殺」の犠牲者数は双方の見解が最後まで対立。近現代史のうち戦後史部分は、世論の反発を警戒する中国側委員の要求を受け、報告書への盛り込み自体を見送った。
  
 日本側座長の北岡伸一東大教授と中国側座長の歩平・社会科学院近代史研究所長は記者会見で共同研究の意義を強調。共同声明で「相互理解を促進する第一歩」と位置付けたが、日中間の歴史認識の溝もあらためて明らかになった。
   
 南京大虐殺の犠牲者数について、歩氏は記者会見で「南京裁判記録では30万人以上となっている。極東国際軍事裁判東京裁判)も20万人以上で、引用は可能だ」と主張。これに対し、北岡氏は「「裁判記録の信ぴょう性も問う必要がある。(発言を)訂正してほしい」と反論した。
   
2009/12/24 21:41 【共同通信
http://www.47news.jp/CN/200912/CN2009122401000870.html

歴史問題の敏感さ改めて露呈=共産党が絶対、独自見解出せず
    
 24日に一区切りを迎えた日中歴史共同研究は、両国に横たわる歴史問題の敏感さを改めて露呈させる皮肉な結果となった。戦争などで対立した日中の近現代史をめぐっては共産党歴史観が絶対的な中国側の研究者が、独自の見解を提示することは不可能だった。発表が予定より約1年半も遅れた背景には、昨年の北京五輪や今年の建国60周年で国家の安定が求められる中、国民の根深い反日感情を荒立てたくない中国側の警戒感があった。
 同研究は、小泉純一郎首相(当時)の靖国神社参拝問題で悪化し続けた日中関係が、「歴史問題が政治の重荷になった」(日本側研究者)教訓を受け、2006年末にスタート。政治に翻弄(ほんろう)されてきた歴史問題の「トゲ」を、研究者の「知的対話」によって取り除く挑戦だった。
 しかし、中国にとって共産党指導下で抗日戦争に勝利したことは今も共産党の正統性を示す柱だ。党の歴史解釈を乗り越え、政治体制の違う加害者・被害者が接近できるか注目されたが、中国側座長の歩平中国社会科学院近代史研究所長は記者会見で「これからの道のりは長い」と漏らした。
 例えば、中国側は南京大虐殺(1937年)について「犠牲者30万人以上」と、党の公式見解を踏襲する原則論に固執。一方、日本側は「虐殺があった」と認めたものの、事件の背景、原因、犠牲者数は平行線をたどった。さらに天安門事件(89年)など現共産党体制の評価に直結する戦後史の公表も見送られた。
 ただ、近年の日中関係を見ると、小泉政権時代の反省に立ち、日中指導者は両国関係改善を優先させ、歴史問題の誇張を回避してきた。日中関係筋からは「敏感な歴史問題は結局、研究者間で解決するものではなく、指導者が政治的に抑える以外に解決方法はない」との見方も出ている。
  
2009/12/24 22:28  【時事通信
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2009122400927

日中歴史認識、両論併記に 共同研究委
   
 日中両国の有識者による日中歴史共同研究委員会(日本側座長・北岡伸一東大教授)は24日、都内で最終会合を開いた。争点となってきた1937年の旧日本軍による南京占領時の犠牲者数については「30万人以上」とする中国側に対し日本側が資料の信ぴょう性に疑義を唱え、対立が残った。同日公表した報告書は「日中両国民の間で戦争の本質と戦争責任の認識に関し、相互に理解するにはかなりの困難が存在する」と認めた。
    
 記者会見で北岡氏は南京事件について「虐殺があったことでは一致しており、基本的な責任が日本側にあったことは認めている」と指摘した。
  
 ただ、中国側座長の歩平社会科学院近代史研究所所長が「裁判で30万人以上、20万人以上という記録が残っている」と語ると、北岡氏は「資料の信ぴょう性を問う必要がある」と反論。事件の背景や原因、犠牲者数については一致しなかったことを明らかにした。

2009/12/24 00:06  【日経新聞
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20091224AT3S2402524122009.html

日中の歴史共同研究、隔たり埋まらず
  
 日本と中国の有識者による歴史共同研究の全体会合が24日午後、東京で開かれ、近く報告書が発表されることになりましたが、中国側の要請で戦後の歴史については掲載が見送られるなど、両国間の隔たりを示す結果となりました。
  
 日中歴史共同研究は小泉総理の靖国神社参拝で日中関係が悪化したことを踏まえ、2006年12月に始まりました。
  
 日中両国の有識者が時代ごとに分科会に分かれ、議論を重ねてきましたが、来月発表される報告書は、全ての項目について日中双方の論文がそれぞれ掲載されるという両論併記の形となります。また、戦後については、議論はしたものの報告書への掲載が見送られました。
   
 この理由について、日本側の座長の北岡東京大学教授は、「現代に直結する問題で、国民への影響から中国側が掲載の見送りを求めた」と説明しています。また、共同研究では、議論の過程で南京大虐殺について虐殺はあったということで一致したということです。
  
2009/12/24 19:27  【TBS】
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4317481.html

日中歴史共同研究 成果発表へ
 
日本と中国の歴史認識の溝を埋めるため共同研究を行ってきた有識者の会合が、24日に都内で開かれ、これまでの研究成果が発表される予定ですが、近現代史では、双方の意見の隔たりや中国国内の事情から、両論併記や一部の発表が見送られる見通しです。
  
この共同研究は、小泉元総理大臣の靖国神社参拝をめぐって日本と中国の関係が冷え込んだことから、両国の歴史認識の溝を埋めるため、3年前に当時の安倍総理大臣と胡錦涛国家主席が合意して始まったもので、有識者の会合が24日に都内で開かれ、これまでの研究成果が発表される予定です。有識者の間では、両国がともに歴史に向き合うことが相互理解の強化につながるという認識では一致しているものの、日中戦争中、日本軍が多くの市民を殺害したり、暴行や略奪を行ったとされる「南京事件」については、中国側が犠牲者の数を「30万人」とする一方、日本側が「数万から20万人」とするなど、双方の意見に隔たりがあるということです。また、1989年に起きた天安門事件についても、中国国内の事情から中国側が共同研究で取り上げること自体に難色を示しているということで、研究成果の発表では、近現代史で両論併記や一部の発表が見送られる見通しです。

2009/12/23 04:45  【NHK】
http://www.nhk.or.jp/news/k10014602911000.html

「戦争理解に困難ある」日中歴史研究委が総論公表
    
 日中の有識者による「日中歴史共同研究委員会」(日本側座長=北岡伸一・東大教授)の最終会合が24日、都内のホテルで開かれた。
   
 報告書の発表は来年1月に先送りされ、「総論」のみが公表された。
   
 さらに、中国側の要請で、1945年以降の現代史の部分は今回の報告書に掲載しないこととなった。
    
 多くの論点で日中双方の見解は隔たりが解消できず、今後、委員を入れ替えて第二期の研究を始める。
    
 近現代史に関する総論では、「日中両国民の間で、戦争の本質と戦争責任の認識に関し、相互に理解するにはかなりの困難が存在する」と指摘。研究者の歴史認識にも違いがあることを考慮し、報告書は「完全に意見が一致することを求めず、研究者が各自の視点で論文を執筆し、相手側の意見を取り入れて修正した後、双方の論文を併置する形式で発表する」ことにした。
     
 会合後の共同記者会見で、北岡氏は「一定の進展があったので第二期(の研究)をやる意義があり、逆に言うといろいろ問題があって、第二期をやる必要がある」と述べた。一方、中国側座長の歩平・中国社会科学院近代史研究所長は「日本による侵略戦争は中国人民に多大な厄災をもたらした。この点に関して日本の学者が明確化した」と語った。    
 来年1月に公表される報告書は「古代・中近世史」と「近現代史」の二部構成となっており、主として古代・中近世史はテーマごと、近現代史は時代ごとの構成になるとしている。
  
2009/12/24 22:15  【読売新聞】
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20091224-OYT1T01198.htm

「南京で大虐殺」認定 規模は今後の課題 日中共同研究
   
 日中両政府が進めてきた有識者による初の日中歴史共同研究の報告書の内容が明らかになった。1937年の南京大虐殺「大規模な虐殺行為」との認識では一致したが、犠牲者数は今後の研究課題とした。一方、日本の途上国援助(ODA)が中国の発展に貢献したと評価。共同研究の日中両座長は「相互理解を促進する第一歩」と位置づけている。
    
 報告書は「古代・中近世史」「近現代史」の2部構成で、同じテーマに関する日中双方の論文を収録している。
    
 近現代史の「総論」によると、日中全面戦争の発端となった37年の盧溝橋事件について、日本側は事件の「偶然性」を、中国側は事件発生の「必然性と計画性」を重視。毒ガス兵器の使用や市民への無差別爆撃など、日本軍の中国での侵略の傷跡が今も残っているとの考えで一致した。
     
 南京大虐殺については「大規模な虐殺行為であることを認めこれを討論した」と明記。ただ、規模、原因、背景などについては「深く追究する必要がある」とした。
     
 虐殺の規模をめぐっては、中国の大虐殺記念館が「30万人」と表示。日本の研究者の間では「数万〜20万人」などの諸説があり、虐殺そのものを否定する研究者もいる。日本政府は「多くの非戦闘員の殺害や略奪行為などがあったことは否定できない」としつつも、犠牲者数について「諸説あり、政府として正しい数を認定することは困難」との見解を示している。
    
 戦後の歴史については、日中双方が、日本が新憲法のもとで平和国家として歩んだことを肯定的に評価。靖国神社参拝問題や日本の歴史教科書問題などについては、今後研究する必要があるとした。
     
 共同研究は、小泉純一郎首相(当時)が靖国神社に参拝し、日中関係が悪化したことを踏まえ、2006年10月に安倍晋三首相(同)が中国の胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席と合意。日中それぞれ10人の有識者による委員会が設けられ、座長は日本側が北岡伸一・東大教授、中国側が歩平・社会科学院近代史研究所長が務めた。両政府は研究を継続することで合意している。(東岡徹)
    
2009/12/24/04:40  【朝日新聞
http://www.asahi.com/national/update/1223/TKY200912230377.html

日中歴史共同研究、24日発表 「近現代史」は見送りか
  
 【北京=野口東秀、矢板明夫】2006年末にスタートした日中歴史共同研究の報告書が、予定より1年半遅れてようやく東京で24日に発表される見通しとなった。複数の日中関係筋が明らかにした。しかし、中国側の強い意向で、民主化運動を武力鎮圧した天安門事件(1989年)に関する記述を含む近現代史の部分は今回、発表されない可能性が高いという。中国国民の歴史についての感情を考慮、日中関係に波風を立てたくないとの考えとみられる。
    
 発表されるのは、日中の文化交流などを盛り込んだ対立がほとんどない古代・中近世史が中心。近現代史部分も完成しているが、双方の見解や主張の対立が多く、調整がつかなかった。日本側関係者は「中国国民は歴史の解釈はひとつしかないとの認識がある。日本側の表記に中国国民が反発し、日中関係に波風を立てるのは避けたい」と説明した。
   
 例えば、中国側は1937年に起きた南京事件の被害者の数を、中国側が主張する「30万人」として盛り込むよう強く主張したという。基本的に日本側のほとんどの委員はそれより少ないとの認識を持っているが、結局、「被害者30万人の説もある」などの表現で妥協したとみられ、双方の認識の相違は「解消されていない」(関係者)。
特に、民主化運動を武力鎮圧した天安門事件や、中国側が「愛国主義教育」と称して“反日教育”を行っているなどの部分は、中国側が強く反発し削除を求め続けたため、近現代史の発表は難しい状態となっている。
  
 報告書は当初、昨年夏に発表される予定だったものの、何度も延期された。いったんは、日本の民主党政権発足直前の今年9月4日に記者会見を設定したにもかかわらず、中国側が突然延期を伝えてきた。「親中的な民主党政権に、歴史問題で対中配慮を期待したためではないか」との指摘が飛び交った。
  
 関係者によると、今回、発表される方向となったのは、「国民の税金を使った研究なので、これ以上延期できない。年内には発表したい」との日本側の強い要望によるという。
   
 両国の学者は東京で24日に最終的な全体会議を開いた後、報告書を公開する記者会見を開くという。双方の学者らは岡田克也外相を表敬訪問、研究の終了を報告する予定だ。
    
 日中両政府は来年に第2期の共同研究委員会を発足させる方針だが、近現代史の発表時期は不明だ。
    
◇  
  
【用語解説】日中歴史共同研究
  
 2006年10月、安倍晋三首相の訪中時に首脳会談で合意、日中両国政府主導で同年12月に双方の学者ら有識者が集まりスタートした。それぞれ10人が参加、日本側の座長は北岡伸一・東大法学部教授、中国側座長は社会科学院近代史研究所の歩平所長。「古代・中近世史」とアヘン戦争以降の「近現代史」に分かれ、意見交換し見解を盛り込んだ論文を作成してきた。
   
2009.12.19 19:37  【産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/world/china/091219/chn0912191939005-n1.htm

   
追記)
しかし歴史観が支配を正当化する社会主義国歴史学会の要職にある人間が「市民の立場で対話・交流」なぞできると社民党は本気で思っているのかね?
こんなちんけなインタビューでも完全な公認歴史観ポジショントークしかしてないじゃん。
で、この直後に共産党に指名されて歴史共同研究の責任者になったと。(笑)
    

歩平さんと語る 〜 日中関係の未来 〜
 

歩 平(ぶぅ・ぴん Bu Ping)さん
中国社会科学院近代史研究所所長。1948年生まれ。ハルビン師範大学卒業。1978年より1992年まで黒竜江省社会科学院歴史研究所で助手研究員、副研究員、副所長、所長。1992年より2004年まで黒竜江省社会科学院副院長。2004年より現職。中国史学会理事。中国東北日中関係史学会会長。日本語の著書に『日本の中国侵略と毒ガス兵器』(明石書店)、『未来をひらく歴史−日本・中国・韓国=共同編集』(共著・高文研)。

 
 【対 談】日中ともに市民の立場で多様な対話・交流を
  
2005年度の日中間の貿易額が7年連続で増加し、 過去最高と伝えられました。 一方、 05年10月、 小泉首相は、 中国、 韓国など近隣諸国の批判も顧みず、 首相就任以降5回目の靖国神社を参拝するなど、 日中間の政治的な対立は目立っています。 そこで、 5月14日、 藤沢での国政報告集会に、 中国社会科学院近代史研究所所長の歩平さんにおいでいただき、 日中関係の未来について話し合いました。 歩平さんは、 学者として、 日中韓の市民、 研究者が共同で制作した 『未来をひらく歴史』 の編集・執筆もなさっています。
 
 あらゆる市民どうしの交流と理性的な対話を
 
○阿部 日本と中国の相互理解のためには、どんなことが必要でしょうか。
○歩  まず、 市民にできることはたくさんあります。
    むしろ、 両国ともに国民としての意識にとらわれるより、 市民の立場から相互理解について考えなければなりません。
    あらゆる市民どうしの交流や対話が必要です。
    
    私は、 学者として学問面で理性的に対話を提起しています。
    たとえば、 中国、 韓国、 日本の専門家が共同編集した 『未来をひらく歴史』 の編集にも参加しています。
    この本は、 国の命令で作られたわけではありません。
    中国、 韓国、 日本の市民レベルで、 東アジアの歴史認識について討論した友人たちが集まって、
    若者にできるだけ自国中心の歴史教科書以外の知識を教えたいという思いから作ったものです。
    2002年の春から3年ほどかけて作ったのですが、 出版までの道のりは簡単なものではありませんでした。
    参加者によって歴史認識にはさまざまなずれがあります。
    そこで、 3年で12回の会議をもち、1回に2、3日と時間が限られているため、工夫をし、
    朝食後すぐから議論、昼は弁当を食べながら議論、夜も議論を続けました。
    本ができあがっても、いくつかの出版社からは、このような専門的な内容の本は売れないと言われました。
    しかし、学術的な本は通常2000部ほどしか売れない中国で12万部が売れました。
    日本では、 初版2万部はすぐに売れて、今までに7万部ほどが売れました。
    韓国でも7万部ほどが売れています。
    
 最初はけんかする若者も別れのときには涙
   
○阿部 歩平さんは、日本、中国、韓国の若い世代や学生同士が出会い、
    お互いの歴史認識について話し合う場作りにも関わっていらっしゃるそうですね。
○歩  『未来をひらく歴史』 を作るなかで、 毎年、 三国の青少年が交流する場をもっています。
    最初はけんかも、激しい討論もありますが、1週間くらいでお互い理解し合って、別れのときには涙を流す姿が見られます。
    じっくりと交流するなかで、友達になったのです。
    今年から、編集に携わった市民や専門家は、本を作るだけでなく、若者同士の交流をはじめ、いろいろな活動をしていきます。
    また、 この本への批判にも応えていきたいです。
    
    この本について日本の参加者から、東アジアの近代史、戦後の問題についての記述が詳しくない、
    朝鮮戦争や中国の文化大革命の問題への言及が少ないという指摘もありました。
    私たちが重視しているのは、歴史的事実の共有によって、徐々に共同の歴史認識を作り出すということです。
    まずは、あの戦争についての歴史認識が重要と考えましたが、もちろん戦後の問題も考えなければなりません。
    
○阿部 会場から「中国の人は、本音では日本人のことをどう思っているの?」という質問がありました。
    歩平さんは、中国では、親日派というと売国的というニュアンスが含まれるので、
    ご自身を知日派という言い方にとどめていらっしゃるそうですが、
    日本のなかにも「あいつは中国べったり」という言い方があります。
    
 中日ともに遺棄兵器・毒物で新たな被害が生まれている
    
○歩  「中国人」あるいは 「日本人」という言葉が示す範囲は広すぎると思います。
    それぞれの人が相手国について知っている情報によって認識も変わってくるからです。
    
    たしかに、戦争時代の負の影響は今も残っていて、狭隘なナショナリズムとつながっています。
    旧日本軍の遺棄した毒ガス兵器は、今でも中国で新たな被害を生んでいます。
    被害者が、日本政府を訴えた裁判も、まだ続いていて、戦後補償問題は解決したとはいえません。
    このことを知っていれば、日本に対して本音ではいいイメージを持っていないことが想像できます。
    一方、日本国内にも、旧日本軍が遺棄した毒物により、新たに健康被害を受けている人たちがいます。
    そのことを知っている中国人の本音はまた違うと思います。
    国民としての意識だけでなく、戦争で被害を受ける市民としての認識をもつことがまず重要です。
    
    また、1970年代に中日の国交が回復した直後、当時の政治家は毛沢東も含め、中日関係を守るために努力し、いい関係が続きました。
    しかし、80年代に入り、政治家の問題発言、日本の歴史教科書問題、靖国神社参拝問題が発生し、日中関係が悪化しました。
    ですから、 政治家の言動も重要と考えます。
    
 「おしん」 のふるさとに行ってみたかった
  
○歩  とはいえ、80年代半ば、中国では日本のテレビドラマ「おしん」が非常に人気を集めました。
    たしか、今も、再放送をしています。
    私は、当時「おしん」 を見て、貧しいなかでも一生懸命努力する日本人を尊敬しました。
    86年、最初に日本に来たときは「おしんのふるさとに行きたい」と言って、山形に行ったほどです(笑)。
    
○阿部 まぁ、そうだったんですか。文化的な交流が盛んなのは、嬉しいことですね。
    ところで、政治のレベルで日中関係をみると、小泉首相は、まともな説明もせずに靖国参拝にこだわり続け、
    国防では中国脅威論が煽られています。軍事費の額を見れば日本の方が上なのですけれど。
    日中間のパイプが細くなっていて、なんとも心許なく思います。
    私も政治家の一人として、たとえば、エネルギー問題、環境問題、人口問題、農業問題で、
    政治的関係ができないものかということも考えるのですが、歩平さんはいかがですか。
    
○歩  エネルギー、環境、人口、農業、そして人権の問題は、一国で完結する問題ではなく、世界規模で考えるべき問題です。
    
    日本の市民が中国で地道に植林活動をしているように、地球に生きる人間として関心を持つべき問題について、
    両国の市民も政治家も一生懸命取り組むなかで、中日の新しい未来がひらけると私は考えます。
    
(「阿部とも子News ともことかえる通信No.24」(2006年7月号)に掲載)
http://www.abetomoko.jp/taidan/24/24.html