賢明な金正日

リビア崩壊で思ったのは、金正日核戦略は正しかったんだなあ、ということ。
欧米と妥協した全体主義国家は尽く崩壊させられた。
そのことを指摘する論評が日経新聞に載ったことにホッとした。
もちろん「独裁(・A・)イクナイ!」なので「反体制派の市民を無差別に虐殺」だから「国連決議に基づ」く米欧の侵略は正当化される、というポジションは示さざるを得ないけど。
(つうか、内戦状態で反体制派を攻撃したら「市民を無差別に虐殺」って何だよw)
 
漏れは日本は東亜の盟主として北鮮人民を解放する大儀を担うべきと思う。
しかし、外国勢力の直接介入には反対だ。
あくまでも人民主体の側面支援にとどめるべきだ。
その一線を越えると正当性の神学論争が始まって問題は余計に拗れる。
なので、ネトウヨ?の漏れであるが、今回は北鮮の評論に同意する。
 
ところで、なんでも詰め込めば良い訳じゃないけれど、この論評ではシナが出てこない。
北鮮問題とは結局のところ「シナの玄関問題」であって、北京を守るために北鮮が存在しているわけだ。したがって核兵器が無くとも北鮮がすぐに無くなることはない。北鮮が崩壊すれば必然的に朝鮮は統一される。民主北鮮という選択肢は無い。だからシナは韓国を完全に取り込むまでは北鮮を存続させる。そして北鮮の核はそのタイムリミットに対抗する北京へ向けた核でもあるのだ。
 
というわけで、対支対米の両面から北鮮は核武装を堅持する。
こんなことは本当は関係者には皆判っている話で、それを交渉できるかのような幻想を振りまいている人たちは、別の思惑があるに過ぎない。
 
参考)
北鮮〜北京距離:700km弱(東京〜広島とほぼ同じ)
http://www.benricho.org/map_straightdistance/

【中外時評】「アラブの春」と北朝鮮 リビア・モデル、反面教師に

論説委員 池田元博
(日経、11年08月28日)
 
 あれよ、あれよと狭まっていく包囲網。約42年間にわたってリビアに君臨してきたカダフィ大佐が追い詰められる様子は、シベリアの大地を走る特別列車にも伝わったはずだ。北朝鮮金正日総書記は、どんな思いで独裁政権の事実上の崩壊を受け止めたのだろうか。
 
 「アラブの春」と総称される民主化運動。チュニジアを皮切りに、中東・北アフリカの長期政権が倒れ、揺らぐなか、金総書記がとりわけ関心を寄せてきたのはリビアの動向だろう。
 
 カダフィ大佐と金総書記。2人はかねて、その類似性が指摘されてきた。同じ1942年生まれ。「大佐」と「国防委員長」。ともに特殊な肩書を持つ最高指導者として、強権と抑圧による独裁体制を築いてきた。
 
 国際テロにもたびたび手を染めた。北朝鮮は1987年には大韓航空機、リビアは翌88年にパンナム航空機の爆破事件を起こしている。
 
 大韓機の爆破は当時、父親の金日成体制のもとで軍の掌握を目指した金総書記が主導し、韓国でのソウル五輪の阻止をねらったとされる。パンナム機の爆破は米軍によるリビア空爆への報復とされるが、目的のためなら国際テロも平然と指令する独裁者の冷酷さをみせつけた。
 
 両国は長年にわたって、米国から「テロ支援国家」の指定を受け、国際社会による制裁にもあえいだ。そして国際的な孤立のなか、米国などに対抗する方策として、ともに進めたのが核兵器を柱とする大量破壊兵器の開発だった。
 
 2人の独裁者。その路線を分かつ転機は、2003年に訪れる。リビアは米英との秘密交渉の末、外交方針を大転換し、核兵器など大量破壊兵器の開発計画を放棄すると表明した。パンナム機爆破事件の責任も認め、遺族への補償にも応じた。
 
 これを受けて、米国は06年にリビアとの国交を完全に正常化し、テロ支援国家の指定も解除した。米欧との関係改善をテコに、経済再建への道を歩み始めたリビア。「核開発を放棄すれば、国際社会との協調で平和と繁栄の道が開かれる」。カダフィ大佐の選択は「リビア・モデル」として、米国などが北朝鮮との核問題をめぐる協議にも盛んに持ち出すようになった。
 
 ところが、そのカダフィ政権の末路はどうか。リビアの政変は確かに「アラブの春」がきっかけだが、平和的な市民デモが政権を倒したチュニジアやエジプトとは大きな違いがある。反体制派の市民を無差別に虐殺するカダフィ政権に対し、米欧が国連決議に基づいて空爆などの軍事介入に踏み切ったことだ。
 
 もちろん深刻な内戦を招いた非はカダフィ政権にあるが、北朝鮮の見方は全く異なる。
 
 朝鮮通信(東京)が伝えた朝鮮中央通信の報道によると、北朝鮮の外務省報道官は3月、米英仏などが対リビア空爆を始めたことを「無差別な武力干渉」と激しく非難した。そのうえでリビア・モデルとは、「『安全保証』と『関係改善』という甘言で相手をだまして武装解除した後、軍事的に襲いかかる侵略方式」と決めつけている。
 
 北朝鮮は今後、カダフィ大佐の選択を反面教師とし、核兵器開発を放棄するどころか、「核」への執着を一段と強める懸念が大きい。北朝鮮には08年、核開発計画を放棄しないでも、米国からテロ支援国家指定の解除を取り付けた経緯もある。
 
 北朝鮮にとって、来年は金日成主席の生誕100年という特別な年となる。政権は国威発揚と体制の引き締めに、より気を使わなければならない。しかも金総書記の三男、金正恩キム・ジョンウン)氏への3代世襲も控えている。この時期に「核カード」を安易に手放すとは、もとより考えにくい。
 
 国際社会から孤立した閉鎖社会、軍事優先の統治、そして核兵器開発への傾斜……。こうした独裁の代償は、当然ある。国際社会の制裁などによる極度の経済苦境だ。韓国統計庁によれば、韓国と北朝鮮の経済規模の格差は37倍にまで開いている。
 
 金総書記が9年ぶりにロシアを訪問するなど、ここにきて外交攻勢を強めているのも、経済支援の獲得が目的とみられる。
 
 新たに発覚したウラン濃縮計画を含めた北朝鮮の核開発は、北東アジアの安全保障にとって大きな不安要因となる。かといって、経済支援をテコに北朝鮮に核放棄を促しても、見返りだけを得ようする北朝鮮の術中にはまるだけだ。
 
 日本の次期政権も含めた関係国は当面、北朝鮮が「核」への執着を一段と強めているという前提に立ち、経済制裁の包囲網を維持しながら、冷徹に核問題に対処していくべきだろう。