工学部出身小宮山東大元総長語る

ポスト3.11の論点 日本と日本人の選択肢
【第25回】 2011年7月6日エネルギー政策の第1の柱は省エネ
21世紀の戦いに勝つためには固定価格買い取り制度導入が不可欠
――三菱総合研究所理事長 小宮山宏
http://diamond.jp/articles/-/12994
(略) 
 太陽光発電のコストが15円になったときに、火力発電のコストは10円から11円、12円と上がっているでしょう。恐らく今後10年から15年の間に、太陽光発電のコストと火力発電のコストが、逆転している可能性が非常に高い。ということは、国として再生可能エネルギーの導入を積極的に進めるべきであるということです。そして導入を促進するには、フィードインタリフが、最もいい制度です。
 
――しかし、急激に太陽光発電のウエイトを上げると、発電コストが大幅に上がり、日本の産業にとって、大きな打撃になるという主張もありますね。
 
 この間20世紀派のだれかが、フィードインタリフを入れると、発電コストが最高で45%上がると言っていたが、あの人たちは火力発電のコストは現状と変わらない、太陽光発電のコストもいまのままの状態が続いて、買い取り価格は40円がずっと続くという前提で話をしている。
 
 私の計算では、フィードインタリフを入れても、発電コストは10%も上がらない。というのは、一遍に大量の太陽光発電が入るわけではないからです。45%上がると言っている人たちの計算根拠は明確ではないが、恐らくいきなり1000万キロワットの太陽光発電を入れて、40円の買い取り価格と火力発電のコスト10円の差である30円が、ずっと続くと考えているとしか思えない。
 
 太陽光発電は設置容量で、今年ようやく100万キロワット入った程度です。もしフィードインタリフを入れて、これが来年200万キロワットになったとしても、実効発電量は12%なので24万キロワット。これは日本の発電量の0.25%にしかならない。もし買い取り価格を30円とすれば、火力発電の10円に対して200%のコスト増になるけれども、シェアが0.25%だから200×0.25÷100で0.5%しかコストは上がらない。
 
 そもそも日本の太陽電池の生産能力は2ギガワット=200万キロワットなので、たとえ太陽電池の輸入が増えたって、いきなり1000万キロワットも増えることはあり得ません。来年、再来年と導入量が増えても、買い取り価格が下がります。コストの増加はせいぜい5〜6%くらいのものでしょう。やがて火力発電とのコストが逆転しますから、その先は得するということです。そして、自然エネルギーに移行できるのです。
 
 21世紀には、世界はこれまでの大規模集中電源システム中心から、分散電源の方向に向かう。この21世紀の戦いに勝つために、フィードインタリフはとてもいい方法なのです。短期的なコストの増加を過大に言いたて、20世紀の戦い方で21世紀の戦い方を抑圧してはいけない。
 
――菅政権が成立に意欲を見せる再生可能エネルギー特別措置法の柱は、全量固定価格買い取り制度つまりフィードインタリフです。菅政権の取り組みを評価しているということですか?
 
 それを言われるのがいちばん困る(笑)。ただ、あの法律自体は正しいと思います。菅さんがやるから法律が通らないのではないかと言う人もいますが、もう一つの割り切りは、フィードインタリフが通るのであれば、政権はだれでもいいという考え方もできる。私はその立場ですね。私は日本のためを考えているのであって、怨念で動いているわけではありませんから。