やめ官のプロデビュー

古賀さんも高橋さんたちの政策工房に入ればいいのに。
政策工房が日本初の自律的なシンクタンクになればいいのになあ。

すべてに危機感がない政と官
田村賢司
2011年7月5日(火)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20110629/221186/

日本中枢の崩壊

日本中枢の崩壊

問 なぜ今、この本を執筆したのか。日本の中枢である永田町(政治)と霞ヶ関(官僚)の何が崩壊しているのか。
 
答 ひと言でいえば(政と官に)危機感がない。みんな危機だと言い、平成維新が必要だと叫ぶが、やっていることは日常のレベルのものでしかない。大震災や原発事故の危機への迅速な対応はもちろん、経済の停滞に対する策もない。
 政治家は消費税引き上げは不人気な政策だから、これをやったら逆に後世に名を残すといった単純な思いこみで政策に手を付けてしまっているし、官僚は、政治主導を官僚排除にしてしまっている政治家を支える気になっていない。自己保身と利権維持に走ってしまっている。この本では、その問題の根元と危機を訴えたつもりだ。
 
問 具体的に言うと、どうおかしくなっているのか。なぜおかしくなったのか。
 
答 例えば、成長戦略は毎年のように作っているが、いっこうに成長の気配はない。伸びる産業を押し上げるというが、農業や医療などそこで重要になる産業には担い手が足りなくなっている。資金や人材が規制で流れ込みにくくなっているからだ。みんな無理だというが、農業や医療に株式会社を参入させ、ヒト・モノ・カネを投入しやすくしたらどうか。高齢者ばかりで後継者も担い手も不足している農業に企業を参入させ、農業従事者はサラリーマンになってもいいではないか。なぜそれができないのか。それは集票マシンである農協を中心にした農業の仕組みを政治は維持しようとし、官は、それにのって自らの利権を守ろうとするからだ。
 
 官僚は、国民のためと口では言っても、自分の所属する役所のためという発想をまず持つ。総理が、そんな政策でリーダーシップを発揮するためには、国家戦略スタッフのような自前の強力なスタッフをもって立案しなければできないが、それも進まない。
 
問 市場重視の考え方・政策は、自民党小泉純一郎政権時代の小泉・竹中(平蔵・元総務相)路線として反発も強い。
 
答 小泉・竹中路線は間違いではなかった。ただ、母子家庭、父子家庭、貧困など弱者対策に踏み込んでいなかったところに問題はあった。大事なのは、大胆な改革も迅速な対応もできていないということに目を向けることだ。
 
問 東京電力の処理策についても厳しく批判している。
 
答 なぜ、株主にも債権者にも責任を問う、つまり減資で株式の価値をゼロにし、債権も一定以上をカットして東電を出来るだけ身軽にして再生を早く図ろうとしないのか。
 閣議決定された原子力損害賠償機構案には、(1)今後の原発事故への損害賠償、(2)今回の福島原発の事故への損害賠償、(3)東電の再生支援の3つが混ざり、極めて分かりにくい仕組みになっている。
 一義的には東電が損害賠償をすることになっているが、最後は各電力会社が電気料金を上げることで損害賠償と東電支援のコストを国民負担にすることになる。政府が直接負担する道も実は用意されている。その一方で銀行など貸し手の債権は守られることにもなる。
 膨大な額の損害賠償を行いながらこの枠組みで東電の再生支援も行おうとすると、数十年利益も出せないゾンビのような会社を作ることになり、電力料金は下がらず、国民にはいいことはない。
 電気料金にせよ、税にせよ最後は国民が一定の負担をすることは避けられないのだろう。とすれば、銀行を守り、表向き国民負担がないように見せてゾンビ会社を作るこんな案よりも、株主、債権者に負担をかけ、最後は国民全体の負担もありえるが東電を破綻させ、速く再生させた方がいい。
 発送電分離などの改革を行い、電気料金を下げ、電力供給の多様化を図るにも数十年に渡る東電処理は良くない。どうしてこうした政策が出せないのか。
 
問 改革が進まない根底に利権維持と保身に走る官僚の問題がある。様々な改革の本丸は公務員改革ではないか。
 
答 政治主導を官僚排除にした政治の問題はあるが、それこそが最大の課題だろう。これまでも様々な改革が行われたが、やっている横からそれを邪魔する人が出てくる。骨抜きにする人がいる。官の世界を変えなければ、改革は動かない
 そのために例えば、国民のためになることをやらないと評価しないという風に官僚の評価制度を変えることも大事だ。今は、ひたすら長時間労働に耐え、大臣の答弁の資料を作り、法案を作ることが評価される。しかし、天下りやムダな独立行政法人を減らした人ほど評価されるといった方法に変えるだけでも状況はかなり違ってくる。そのために公務員の身分保障をなくして、国民のために働かなければ格下げも降給もあるという仕組みが大事だ。
 
問 民主党政権財務省の影響力が極めて強い。
 
答 財務省が予算を握り、力が強いから政治は財務省とだけ組もうとする。かつて公務員改革法案を議論する際にも提案したが、公務員人件費の基本方針や人件費予算の省庁への配分の企画・立案・調整機能さらに組織・定員の査定や省庁横断の人事権を(総理直属の)内閣官房に移すといったことに本気で取り組んだ方がいい
 それだけでも官僚の力の構造、政官の関係は変わってくる。まだぎりぎり今、改革に取り組めば間に合うかもしれない。日本を衰退させないために改革に取り組むにはもう時間はない。