阿片の中国史

阿片の中国史 (新潮新書)

阿片の中国史 (新潮新書)

   
国史を身近に感じさせてくれる良書。平易で実感的な語り口も気持ちよい。
しかし気になることがひとつ。
著者の譚さんは阿片を危険な毒物と決めつけて書いているが、本当にそうなのか?
たしかに麻薬には違いないが、それほど危険な毒物なら中国国民の2割が喫煙者になるまで流行するだろうか、という疑問が湧いた。
   
ところでこの本には、現在も東洋に君臨する上海香港銀行の前身がジャーディン・マセソン商会であること、そしてその商会こそ、阿片戦争を引き起こした2大阿片商社の一つであることが書かれている。
動乱の日本に兵器を売りつけた死の商人トマス・ブレイク・グラバーのグラバー商会はジャーディン・マセソン商会のフロント企業だ。1860年にアロー戦争が終わる前年にグラバーは上海から長崎に上陸している。戦争が終われば武器が余る。それを日本に転売するのが彼の初仕事だったわけだ。ちなみにまったく同じようにアメリカも南北戦争終結で余った武器を幕末の日本に売り込んでいる。武器と並ぶ国際商品である阿片をイギリスが日本に売り込んでもおかしくなかった。他人事じゃないのである。ちなみに南北戦争の中古武器の売り込みの様子は糞映画『ラスト・サムライ』に描かれていた。グラバー派のパートナーは三井に、アメリカ派のパートナーは三菱になったわけだね。
   

グラバー商会は、資金の大部分をオランダ貿易会社とジャーディン・マセソン商会に依存していたが、薩摩留学生の学資もジャーディン・マセソン商会(香港)の信用状にもとづいて、マセソン商会(ロンドン)が薩摩藩の手形を割り引く形で前貸ししていた。従って、実質的な薩摩留学生の支援者はジャーディン・マセソン・グループであった。

TITLE:ビッグ・リンカー達の宴2−最新日本政財界地図(19)
URL:http://www.yorozubp.com/0411/041117.htm

多くの日本人はアヘン中毒は人を廃人と化すと信じているが、クィンシーは当時の欧州でもっとも重い麻薬中毒患者であったにもかかわらず廃人とはならなかった。一方、東南アジアや中国のアヘン禍ではTVでたびたび放映されたように多くの廃人を生み出した。これはアヘンの服用法の違いによるものである。欧州ではアヘンチンキを経口で服用してきたのに対し、東南アジア、中国では喫煙が主流であった。喫煙によるアヘンの摂取では脳中枢系に集中的に吸収され、しかも速効性である。一方、経口では腸管吸収を経るのでアルカロイドの大半は途中で代謝され、脳中枢系まで輸送されるのは比較的少なく、遅効性である。したがって、アヘンの喫煙の習慣のなかった欧州では、どの国もアヘンの乱用で深刻な社会問題までいたることはなかったのである。

TITLE:麻薬アヘン(阿片)の光と陰
DATE:2006/02/09 00:30
URL:http://www2.odn.ne.jp/~had26900/about_souyaku/on_opium.htm

            

1.アヘンアルカロイドの実際

 アヘンが採れるケシの汁は、我々の文化におけるドラッグ以上の意味をもつ。

数千年にわたって使用され、崇拝されてきたアヘンは、美と危険の両方を象徴するようになった。

アヘンは期待を裏切らない。

アヘンは吸煙しても、食べても、飲んでも、必ず疲労と痛みを癒し、精神を刺激して愛用者を心配や不安から解放してくれる。

とりわけビクトリア時代の作家はアヘンを愛したことで知られている。

また、アヘンを愛したのはイギリス人だけではない。

アメリカでも十八、十九世紀を通じて、アヘン嗜好は着々と増大した。

アヘンは悲嘆にくれる人を苦悩の淵から救済することができる。


 今日、英語のYen」という語はうずきや欲望を意味する。

この語源は中国語の「煙」、すなわちアヘンのことで、より絶望的な感情、アヘンを絶つ苦しみを表している。

アヘンを断とうとする中毒者は、その感覚を神経に火がついたようだと表現する。

「1000本もの針が皮膚を突き破ってくる」。

筋肉が突然萎縮するため、何の前触れもなく腕が痙攣したり、脚をキックしたりする。

このため英語で麻薬をやめることを「kick」というようになった。

 アヘンを長時間持続的に使用すれば、身体的依存症になるのはほぼ間違いない。

アヘンに対する精神的依存症の可能性は、愛用者の人格と深く関わり、アルコールやマリファナと大差はない。

アヘンによって、人格が崩壊したり、狂気に至ったり、肉体に害を及ぼすこともない。

アヘンが身体的依存症を招くことは事実だ。

だが、すぐに陥るわけでも、抜け出せないわけでもない。


 アヘンの禁断症状はつらいが、苦しみは通常三日から五日でおさまる。

これは、ショックを受けた人体が、絶え間なく供給されていたアヘンの代わりに化学物質を生産するようになるまでに必要な期間なのだ。

インフルエンザ同様、苦しみが消えればそれで終わりだ。

アヘンがある生活は、ない生活よりずっといいという人は多い。

例えばカフェイン中毒者は、アヘン中毒の特徴をすべて備えている。

依存は深まり、やめるのはつらいが、次第にコーヒーのない生活になじんでいく。

コーヒーなくても精神が蝕まれて我慢ができないというほどのことはない。

それにそう簡単にアヘンは身体的依存を招くわけではない。

人体が本当にアヘンに依存するようになるまでには、愛用者は少なくとも二、三カ月にわたって、毎日アヘンを摂取しなければならない。

それは人体が体内でのアヘン性化学物質の生産をやめて、外部からの供給に頼るようになるまでの時間である。



アメリカにおけるアヘンの使用は、ベンジャミン・フランクリンの使った時代から着々と増加し、国民の十人に一人がアヘン中毒であったにもかかわらず、アメリカ合衆国は隆盛をきわめ、すべての分野で著しく繁栄した。

アヘンが社会に害を与えたことはない。中国を隷属させたのはアヘンではなくイギリスだ。

 たいていの人は、ある特定のドラッグを自由に入手できるとしてものめりこむことはない。

アルコールと一緒だ。



たいていの人は四六時中アルコールを飲んでいるわけではない。

コーヒーも同様だ。

薬理学的にみてもアヘンは使用を自律する性質がある。

例えば、アヘンは肝臓の第一次審査を受けるが、ここでかなりの量が不活性化される。

必要量のアヘンを飲み下す前に気分が悪くなるか、満腹になってしまうはずだ。

それでもアヘンがもたらす快楽のため、使用は習慣になりがちだ。

だが、ひとたび身体がほしくなくなれば、使用を一、二日おきにするだけで、再中毒を防ぐことができる。

これは多くの中毒者がしっている、アヘンをやめる場合の利点だ。

実は、アヘンは無害ではないのか、十九世紀の作家を中心とするアヘンへの感謝を表現した詩は、一般にアヘン使用擁護のよりどころとされた。

(ベンジャミン・フランクリンやトマス・ド・クィンシーといった)ヘロインはアヘン剤(アヘンの誘導体)ではあるが、薬理作用は異なってる。

モルヒネ分子の姿が変わった、ヘロインと似ても似つかない

今、我々がアヘン中毒者と呼んでるものは、二十世紀になるまでアヘン愛用者の中には存在しない



愛用者が軽蔑されるようになっても、中毒者という言葉は使われてなかった。

医者はふつうに常用者という言葉をつかった。

アヘンは体になんの悪影響もあたえないのだから当然である。

アヘン愛用者は朝になれば目覚めて普通に仕事にでかけて、家族を養っていた。

何故、大騒ぎをする必要があるのだ ?

アヘン常用者は麻薬中毒者といわれるような反社会的な怪物ではなかった。

だが、アヘン中毒者はアルコール中毒者と同じように犯罪ではなかった。

医学的にアヘン中毒者はまったく問題視されなかった。

医者がアヘンをやめようとする患者に、何故わざわざそうする理由がみあたらなかった。

アヘンが生命や健康をおかすわけではないのに、だったら何故?

エドガー・アラン・ポーをアヘン中毒者と呼ぶのは殆んど意味のないことである。

おそらくアヘンは彼にとっては、日常生活の他の要素とはなんらかわらないものであったのだ。

つまりエドガー・アラン・ポーにとっては「家賃を払っていた」に等しいものであったのだ。



アヘンの特性の一つに中毒があるが、ここでは、アヘンとアヘンに密接に関連したものの中で最高のものをお話しているつもりであるが、アヘンとその原材料となるケシの情報については多くの間違った情報が流布しており、そうした誤解された情報の中でさいたるものは中毒に関してのものである。

依存という側面は確かに弊害は大きいがアヘンは比較的温和であることもここでお話させて頂く。

ただし、度を過ぎなければというお話であるが。

アヘン中毒の最大の問題は多分供給であろう。

依存症は慢性的な痛みを和らげる場合は日常生活に影響はしない。

一度、アヘンのとりこになると抜け出すことはほぼ不可能に近いが、無慈悲な獣がアルコールやタバコの中毒者にとりつくようにアヘン中毒者の背に取り付くことは殆んどない。

アヘン依存は手に負えないものではなく、ひかえめで衰弱もまねかない。

アヘンによって勿論人生がよくなる可能性もあるが、ほとんど人生に影響をあたえないであろう。

アヘンは酒肴の問題であろう。

多くの人々にはアヘンにひそむ危険より、得られる利点の方が遥かに重みがあった。

他のアヘン愛用者のようにアヘンの使用がひきおこすといわれているささいな問題を、飲酒が日常的に招いている惨状に比較しようとする人々に抗議する。

http://m-kaneko.sexdrug.jp/drug/ahen01.htm