他国救済禁止条項

熊谷徹のヨーロッパ通信
ドイツの苛立ちの理由と危機の根源
緊急連載 ユーロ危機と欧州合衆国の幻【3】
熊谷 徹
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20111128/224427/?P=1
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 通貨同盟が創設される前、ドイツの経済学者や財界関係者の間からは「ギリシャやイタリアなどが支払い不能になった時、我々の負担が増えるのではないか」という危惧の声が出ていた。多くのドイツ市民がマルクを捨てることに強い不安感を持っていた背景にも、こうした懸念があった。そこでEUは他国救済禁止条項によって「加盟国は他の国の支払い責任を負わない」ことを明文化し、ドイツ人を納得させたのである。この条項は、ドイツが南欧諸国の借金のツケを負わされないための、「安全装置」だった。
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 EUにとっては、来年が天王山になるかもしれない。そのことを示す数字をご紹介しよう。ドイツのある金融機関の試算によると、ユーロ 圏加盟国が来年償還しなくてはならない国債の総額は、6160億ユーロ(64兆6800億円)。さらに、各国政府は債権者に対し、この借金のために1970億ユーロ(20兆6850億円)の利子を払わなくてはならない。つまりユーロ圏加盟国が来年返済を迫られる借金と利子は、85兆円を超えるのだ。しかも、各国政府は債券市場で欧州の国債に対する不信感が高まる中で、国債の買い手を見つけなくてはならない。これらの数字から、EUが直面している試練の大きさが、ご理解いただけると思う。
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