正露丸で儲けたメディチ家


 

 

外科医のつぶやき
【第33回】 2011年9月13日
柴田高
正露丸を手に取ると“メジチ家の家紋”を思い出す
http://diamond.jp/articles/-/13991
(略)
正露丸の主薬効は木タールから精製されます。一方、木タールは紀元前2000年にエジプトのミイラに、遺体が溶けて腐らないようにと保存剤として使用されました」

 会場を見渡すと顔見知りのチェーン薬局の社長さん数名と目が合った。そして私は続けた。

「ミイラの保存用の木タールが南ヨーロッパでも伝承され、ドイツで1830年、木タールから精製された木クレオソートが胃腸薬となりました。もともと防腐効果を期待した木クレオソートの薬効が塩素イオンチャネルセロトニンの受容体を抑制することが近年明らかとなり、下痢全般に使用できる優れた胃腸薬として日本では進化を遂げました」

 そして講演の終盤にさしかかったとき、イタリアのフィレンツェで見たメジチ家の家紋が映し出された。

「このスライドは1400年代、栄華を極めたメジチ家の家紋です。この赤い玉6つは現在丸薬であったという説が最も有力視されています」と私。

 会場は物音ひとつしない。

「調べてみると、メディカル(医療)の語源ともなったメジチ家の先祖は木こりでした。そして医療に関係が深かったといわれるメジチ家は、金融業で財を成し、レオナルドダビンチ、ラファエロミケランジェロを輩出し、ルネッサンスを興しました。エジプトで生まれた木タールは、イタリアを経てドイツで医薬品になりました。ドイツの丸薬とメジチ家の家紋となった丸薬。そして国や世代を超えて受け継がれ、日本で進化し飲みやすくなった丸薬の糖衣錠。本日、皆様とともにこの医薬品を中国で発売できることを誇りに思います」
(略)