戦略なき日本勢のLCC参入

戦略なき日本勢のLCC参入
佐藤央
2011年8月31日(水)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20110829/222312/
(略)
 もう1つの不思議が、国内線の事実上の外資への開放だ。国内線の搭乗率は減少傾向にあるとはいえ、売り上げの半分以上を稼ぐ両社の“虎の子”。外資と手を組むことが目的なのであれば、国際線に限定するという選択肢もあったはずだが、なぜドル箱の権益を自ら開放したのか。

 業界関係者によると、「LCCを設立するに当たり、外資2社が国内線への参入を強く要求したのではないか」という。つまり、単独でLCCに参入するだけのノウハウを持ち合わせていない両社が、足元を見られたとも言える。

 外から見て極めて分かりづらいLCC設立の背景に、こうした諸々の事情があったとすれば、明確な戦略性が感じられないのもうなずける。

 だが、「中途半端な事業形態では決してできない」(戸崎教授)と言われるのがLCC。しかもジェットスターエアアジアは昨年、LCC同士では世界初の業務提携を発表した昵懇(じっこん)の仲だ。今後、両社が後ろで手を組み、国内線を牛耳るというシナリオもあながち絵空事とは言い切れない。「庇を貸して母屋を取られる」事態に陥ると、日本勢は一気に苦しくなる。