1920年代の日中と2010年代の中日

具体的に記述するのは立派だ。この人はただの増税派ではない。
1920年代の日中と2010年代の中日が鏡合せだという指摘は面白い。

ニッポンを俯瞰する基軸〜“思考停止”のあなたへ〜
日本を襲う金融の大津波にどう対応する?
プランBに備えよ
大上 二三雄  【プロフィール】 バックナンバー
2011年7月1日(金)

(略)
 そのようなトリガーにより起こった危機は、どのように拡大していくであろうか。筆者は、まずは年率20%程度の円安・インフレといった状況に陥る可能性が大きいと思う。
 円安・インフレの進行と同時に国債は暴落する。そうなると、国民は金融機関の経営への不安を感じ、郵貯・銀行預金の引き出しや保険解約へ殺到する。更には、自らの預金の実質的価値が目減りすることを避けるために実物資産を購入する動きが強まり、インフレはさらに昂進する。
 金融機関のバランスシートが国債やその他債権の暴落で傷んだところに、預金者の引き出しが殺到することになり、多くの金融機関は倒産の危機に瀕し、その結果産業界に資金が回らなくなり、経済混乱から経済はマイナス成長、物価は上昇というスタグフレーションの状況に陥る。
(略)
 
 このような20%のインフレが仮に5年続いたとすれば、計算上物価は2.5倍、為替は250%の円安となる。そこまで行けば、国家債務も実質上半分以下になり日本の価値も相対的に調整され、経済は落ち着きを取り戻すであろう。
 
 消費税よりもっと強烈な、国民等しく課税するインフレーション・タックスの効果である。日本の実質経済規模も半分以下とは言わないが、80%程度まで減少しているのではないか(かなり当てずっぽうです)。1997年に金融危機に襲われた韓国に比べるとかなり深くて長い危機ではありましたが、さあ、ここから再出発という感じであろう。
 
 しかし、インフレの初期段階でそれに合わせ年金や生活保護、その他社会保障費を上げたり、金融恐慌や経済対策のため国債の発行を拡大したり、外貨交換の規制などを行うと事態は破壊的な状況に陥る。津波の被害は幾何級数的に拡大し、最終的にはハイパーインフレーションに陥り日本壊滅、世界経済は大混乱といった状況が予測される。
  
 準備施策の中でまず重要なのは、日本の金融・経済システムおよび国家財政の体質向上施策であり、具体的には以下の項目が考えられる。

増税社会保障抑制の一体的改革により、財政バランスを良化させる。
・経済成長実現により経常黒字幅拡大をもたらす経済政策
 −新成長戦略の実施
 −政治主導による国内産業構造改革により過当競争抑制と国際競争力向上
 −徹底した規制・制度改革
 −国際的競争環境のイコール・フッティング
 −雇用流動性の向上
 −中小企業は弱者保護から強者育成へ

 これらはいずれも、現状政策課題に上がっているものの、実行局面において主として既存利害関係者の調整がかなわず、実効が上がっていないものが多い。
 それから、プランBの発動が想定されるような金融・経済状況において、現状の準備が十分でない項目は、以下のようなものがある。

自治体破産法制の整備
 −現状自治体再建の法制はあるが、債権カットや破産管財の法制は無い。
・諸外国との相互依存関係を強化(特に対中国)
 −中国を始め諸外国の上質な人的・金銭的資源を、日本に取り込む(老人施設入居、企業での採用促進)
 −中国特定地域との相互関係を重点強化(華北部?)
 −日本の中国向けプライベートバンキングビジネスを強化
 −ASEAN(非華僑国)、インド、EUとの関係強化(近攻遠親)
・外貨獲得手段の維持・拡大
 −円安で競争力を増す製造設備の維持・拡大
 −対外国人向け観光施設・拠点整備
・外交的安定の獲得と財政・金融外交政策準備
・プランB実施諸政策の準備
・金と外貨の蓄積
 −現在の外貨準備1兆ドルは充分か検証要

 

 
最後に
 東日本大震災の復興にもたつき原子力問題から全国レベルの電力危機が派生し、多くの製造業が国外移転を考える現状はプランBにとっては危機的な状況と言える。また、不穏な動きを強める中国は、軍部と現在の指導部が徐々に不穏な雰囲気を醸し出しつつあるさまは、1920年代から軍部が台頭した日本の状況を思わせる。
 
 一方で、太平の夢からいまだ抜けきれない日本は、当時の中国の状況に被るものが有るのではないか。このような迫りつつある危機に、日本の政治や企業、国民は未だ性善説を信じているように思える。それはそれで幸せなことであるが、政治が今の体たらくから脱し、リアリズムに基づいた政策を行わないと我々の日本の将来は危うくなると思われる。この課題提起が少しでも、そのような行動を前進させることを祈りたい。