中国昭和50年説

天安門事件は60年安保だった、というのが漏れの雑な理解。
よっていまの「反日運動」は名目的で実態は全共闘アノミーだとみている。
そういう意味で中国ヲタク研究の第一人者遠藤先生の解説は極めて腑に落ちる。
中国の戦後は1980年に始まったのだ。いま中国は昭和50年なのだ。
戦後世代=80后で、その比率はもう直ぐ全人口の半分を超える。
それを見据えない過剰な中国脅威論はタメにする議論と言わざるを得ない。
しかし・・・マエバラは、アホなのか、わざとなのか?
いわゆる痛いやつなんじゃねえの?
 

2010年12月7日(火)
反日デモの背景には何があったのか(後編)
中国政府のヤラセはあり得ない
遠藤誉
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20101130/217336/?P=1
(略)
 この日、会場から反日デモに関連して「08憲章は中国ではどういう影響を若者に与えているのですか」という質問があった。
そこで筆者は「現在の若者は価値観が多様化しており、反日デモに参加するのはほんの一部分です。08憲章に関しては、ほとんどの若者が知らないというのが現状ではないかと思います」と答え、ついでに会場に居た清華大学張宝蛍くんに「あなたはどう思いますか?」と尋ねた。
 
 すると、その張くんは携帯電話を覗きこんでいてなかなか答えない。答えを催促すると、彼は言ったものだ。
 「先生、すみません。その08憲章って、何ですか? ちょっと聞いたことがないので、今、急いで携帯電話で検索しているのですが、憲章という文字は懸賞ですか?」
 
 会場が笑いの渦に包まれたことは、言うまでもない。
 しかし、この程度なのである。これが中国の現実だ。
 
 従って、反政府デモに切り替わることを十分に承知している政府が、わざわざ、その危険を冒してまで、「08憲章」から目を背けさせることを目的としてヤラセの反日デモをけしかけるわけがない。必要性は皆無だ。
 
(略)
 「そもそも、最近の若者が、政府の言うことを聞くと思いますか? もし素直に政府のヤラセに応じるようなら、中国政府は苦労しませんよ。今の若者たちは権利意識が強い。自分の天下だと思っている。だからこそ、政府は苦労してるんじゃないですか。まず圧倒的な発言力を持つ若い網民たちをなだめながらでないと、国際社会に立ち向かうことだってできないんだから、苦労しますよ、われわれも」と述懐したのである。

 ついでに「今回の反日デモ08憲章に対する関心をそらすためという分析をする日本人研究者が居るのですが、これについてはどう思われますか?」と聞いてみた。すると、こうした回答が返ってきた。

 「何を言ってるんですか! 冗談じゃない。08憲章なんて、若者は関心を持ってないし、知らない者の方が多い。若者が関心を持っているのは就職難とか住宅価格の高騰など、自分の身の回りの生活に関することで、デモの色合いがそちらにシフトするのをわれわれは最も恐れている。デモによる表現の自由はあるが、しかし、どんなデモでも歓迎はしない。理性的に表現するのはよいんだが…」。
(略)
 馬朝旭報道官の発言をじっくり読むと、中国政府の対日政策が浮かび上がってくる。中国の政治家あるいは報道官は、漢字一文字にも非常に注意深く神経を払った文言を、練りに練った結果発言するので、そこにはかなり深い意味が込められている。日本のような政治家の「うっかり発言」などという軽率なことはまず起きない。
(略)
 そのいっぽうで、インターネットを通してグローバル化していった中国の若者の精神性は、多様な価値観も育んでいることを見逃してはならない。
 
 デモに参加した者の合計人数がたとえ数万になろうと数十万になろうと、「80后(バーリンホウ)」(1980年から89年までに生まれた者)の人口は約2億人、「90后(ジュウリンホウ)」(1990年から99年までに生まれた者)の人口もまた2億人。合計4億人も居るのである。
 
 10月16日から始まり11月14日までくすぶったデモは数百人規模から最大で1万人であった。それらを合計しても4億人のほんの一部にすぎない。
 
 おまけにデモ隊の先頭を切る若者の中には、必ず「憤青(フェンチン)」(憤怒青年)という過激な民族主義青年が居る。彼らは「愛国か誤国(国を誤らせる)か」とよく批判されるように、中国の良識的な人たちからは警戒されている。
 
 4.2億人の網民(ネット市民)の60%は80后以下の年齢層によって占められている。10代か20代だ。愛国主義教育を骨の髄まで染み込ませた「中国の未来の担い手」なのである。
 
 そして彼らは決して中国政府の命令によっては動かない。
 こんな大変な存在を抱えながら、中国という国は動いているのである。
 強大さの影に、痛々しいほどの脆弱さが見え隠れする。
 
 10月に起きた一連のデモを「政府のヤラセ」だという推論が、どれほど罪深く、中国分析を誤らせるだけでなく、日本の対中政策を間違った方向に導いてしまうかを正視し、自重しなければならないのではないだろうか。
(略)