学校って、どうやって設立するのでしょう?

学校って、どうやって設立するのでしょう?
第2回 理想の関係は生徒と学校が「相思相愛」
小林 りん、中西 未紀 【プロフィール】

 2013年、軽井沢に日本とアジアをはじめとする世界各国の子供が寄宿する全寮制の高校を作る――。こんな目標を掲げて、日々、奔走する女性がいる。一般財団法人軽井沢インターナショナルスクール設立準備財団代表理事の小林りん氏だ。

 なぜ小林氏は全寮制インターナショナルスクールを開校し、何を成し遂げようとしているのか。「ゼロから学校を作る」取り組みを追っていく。

旧来の友人である岩瀬大輔が、小林に声をかけた。岩瀬は、戦後74年ぶりに誕生した独立系生命保険会社であるライフネット生命保険株式会社(東京都千代田区)を社長の出口治明とともに立ち上げ、現在は副社長を務めている人物である。この想いを持った人物が谷家だった。

 この話を聞いた小林は、日本に帰国した際に谷家に会って相談してみようと思った。現在の仕事について谷家に聞かれた小林は、フィリピンでの活動やそこに対する思い、抱いている疑問や限界について語る。すると谷家は、こう言った。

 「実は、5年前から学校を作る構想を持っている。一緒にやらないか」

 谷家は「アジアのハングリーで才能のある子供たちを迎える日本で初めての全寮制インターナショナルスクール」を設立したいのだという。自身は灘高校から東京大学と傍目には堂々たるエリートコースを突き進んできたように見える谷家だが、「与えられた問題に対する正解を見つける時代は既に終わった。これからの時代は、確かな価値観と共に、課題を自ら見つけ自分なりの解決策を考える力やその考えを周りに協力してもらうコミュニケーション力が必要。理系や文系、芸術系などの分野の垣根を乗り越え、柔軟に考えられる、チャレンジ精神を持った人材の育成が世界に、特にこれからのアジアにとって必要だ」と語った。

 谷家は自身の子供2人をインターナショナルスクールに通わせている。それは世界共通言語である英語力を養うという点で良かったが、一方で懸念もあった。学校の生徒の大多数は、日本にいる一部の富裕層の子供ばかりが通っているのだ。

 谷野のグローバルな投資活動や新規事業の支援活動を通して得られた結論、「どんな事業も誰がやるかに尽きる。ハングリー精神を持って、自らの才能を存分に出し切ること」こそが大切だ。日本の子供たちにとって、そういうハングリー精神と才能を持ったアジアの子供たちとともにグローバルな教育をしていくことにこそ、意味があるのではないか――。だが、日本にそんな学校はない。そうであれば、さらに、日本だからこそ意味のある学校を作ってしまおうというのである。

 とはいえ、谷家は自分で会社を経営している立場にある。「人生をかけて学校作りを手掛けてくれるパートナーがいれば・・・」。そう考えていたところで、まさにうってつけの人材に出会った。それが小林というわけだ。

 谷家の想いに強く共感した小林だが、1つの条件を提示した。「絶対に、奨学金は出したい。アジアの国から子供たちが来るのはいいことだが、日本の学生にも奨学金を設けて国籍だけでなくバックグラウンドも多様な生徒たちに集まってもらうことで、本当の意味での多様性を実現したい」。これに、谷家も異存はなかった。

(略)
小林らは、学校設立を通じ、「アジアの子供たちに日本で良質の教育を受けてもらうことで日本のファンになってもらい、将来アジアと日本と世界を結ぶ輪を広げていってもらう」というビジョンを実現したいと考えている。

 「スイスがそうですよね。経済大国でもない小さな国で、しかも英語圏でもないのに、スイスには学校がたくさんあります。しかもそこへ、世界中から人が来る。それに伴って人もお金も入ってくるわけですね。それは、スイスに『治安』と『環境』と『いい教育』があるからです」

 日本にも、「治安」と「環境」は整っている。あとは「良い教育」だけである。これから小林らが設立する学校では、授業のカリキュラムに世界138カ国で認定されている国際バカロレアを採用する予定だ。

 「日本は人口がどんどん減っているわけですから、広く世界から人を受け入れる国になっていかなければ。その中で、教育の門戸を開いていくことには大きな意味があります。我々の学校が、その布石となれれば。ほんの小さな第一歩ですが・・・」

(略)