造船三国志の行方を左右する「諸葛孔明」

 
ゆで蛙産業の典型造船w
ようするに船って基本的に人海戦術で作るものなので勝負の半分は人件費で決まってしまう。
日本だけじゃなく大抵の先進国では軍艦とか特殊船くらいしか作らなくなっているよね。
日本の場合は更にハンデがあって、円高に雇用規制と出て行けといわんばかりの反産業政策のなかで逆に良く保っていると思う。
逆に言えば、韓国造船の強さってのは日本の安価コピーを中国で作るってことだった。
開発費も人件費もタダ同然。そりゃもうかるよ。
でも巨額投資のファーストステップを英断した経営者は偉いよね。日本のサラリーマン社長にはできないことだ。
そもそも造船に限らず好調韓国企業って日本のコピーを中国で作るってのが多いんだよね。
それでも経験は技術を高める。
いまや造船技術の最先端を行くのは韓国じゃないかという関係者も多い。
だけど韓国企業は世界トップに立ってから守りに入った。
技術漏洩を懼れて中国投資に躊躇するって・・・いままでの成功パターンの真逆をしだした。
川重はそこを突くわけだ。
 
未来を見据えるなら先端生産を経験した若年世代がいるかいないかで20年後が決まる。
その意味で旅順攻略の本義は日本人技術者に学ぶ場を与えるという言葉は鋭いと思う。
自分が退社した後のことを考える経営者って今の日本にはなかなかいないものなあ。。。
でもその基幹造船所の株式を15%しかもっていないのは如何なものか。
すげえ足下見られている気がする。
別に悪口じゃなく、中国人は力関係しかみない人たち。
いまは技術移転があるから我慢しているけど用済みになったら排除にかかるだろう。
その対策はどう考えているのか気になった。
 

2010年11月15日(月)
造船三国志の行方を左右する「諸葛孔明
川崎重工業の造船部門トップ、神林伸光常務にインタビュー
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20101108/217001/
(略)
―― 川崎重工は今年10月、神林さんが社長を務められていた川崎造船を本体に取り込みました。これはどのような理由からなのでしょうか。中国事業に影響があるのでしょうか。
 
神林 中国事業ともある意味で関係するでしょう。それは川崎重工として、造船の技術力をいかに高めていくのか、という経営判断なのです。2002年に本体から分社化したのは当時、IHIとの事業統合を前提としたものでした。だが、それが破談になりました。そして、今なぜ、本体に復帰か、ということですが、川崎重工業の研究開発部門との連携を強めるためです。
 
 実は今、究極の低燃費船の構想を描いています。川崎重工が世界で先頭を走るのがガスエンジンです。ガスを燃料にした自家発電用エンジンですが、これを船のエンジンとして利用できないか、ということなのです。特に、最終形としてはLNGを燃料としたエンジンであれば、燃費性能は従来の3分の1になるのです。
 
 そのような将来の船を開発していくためには本体に戻ることが重要でした。そうすれば、研究部門と、造船部門の技術者たちの関係をより密接にできますから。そして、川崎重工が中国との合弁会社を進めていくためには技術的に常に先行していく必要があります。
 
―― 大連市郊外の造船所も本格稼働しましたね。
 
神林 我々は世界最強の造船会社になりたいと思っています。その意味では、大連では最先端の省力化設備などを導入しました。早ければ、2014年にも第二ドックも完成するはずです。そうすれば、韓国に対しても価格競争力で有利に立てるでしょう。今でも、中国は現場の従業員の賃金は日本や韓国の3分の1から4分の1なのです。
 
 大連ではNACKSの第一期生である王志炎氏が製造部門を率いており、素晴らしい仕事をしてくれています。日本人の若手も現場で活躍している。あの造船所をいかにうまく立ち上げるのか。川崎重工が今後の造船市場で勝ち抜いていくために非常に重要になるでしょう。
 
造船三国志の行方を左右する「旅順」
 
 次は大連の造船所について報告したい。今年夏に本格稼働したのは大連中遠造船工業(DACOS)である。これはCOSCOが7割を出資。残りの3割は川崎重工が50%出資するNACKSが株式を持っている。
 
 DACOSは厚板の切断装置など世界最先端の自動化設備を大量に導入した。1998年に稼働したNACKSは、両社にとって最初の事業案件だったため、川崎重工も全ての技術やノウハウを持ち込んだわけではない。だが、それから10年以上が過ぎて、お互いの信頼関係が確立できた。このため、「日本の主力拠点である坂出工場でも導入したばかりの最新技術を全て持ち込んだ」と、DACOSの小島康弘副社長は言う。
 
日本や韓国より2割コスト低減
 
 例えば、月3万トンを処理する厚板の切断は95%が自動化されている。厚板をつなげる片側自動溶接機や、厚板に骨材を取り付けた後のひずみ部分を矯正する自動機も導入された。中国の人件費は日本や韓国の3分の1から4分の1である。建造コストに占める人件費率は3割程度であるから、日本や韓国に比べて2割はコストが有利になる。ただ、将来的には人件費の上昇が確実であり、中国の優位性を維持するには他社に先駆けて省力化のノウハウを現地に根付かせる必要があった。大連の造船所が成功すれば、川崎重工にとって、世界で最もコスト競争力ある造船所を持てる、ということなのだ。
 
 そして、もう一つ川崎重工にとって重要なのは大連の造船所で、日本の生産技術者を成長させられるということだ。例えば、小島副社長にしても、大連では造船所のレイアウト設計から担当した。日本では造船所を新設することなど考えられない。それだけに、こうした得難い経験を積めることは大きい。
 
 また、日本からも若手の有望株が現場で活躍している。1993年に川崎重工に入社した梅本浩一朗氏だ。梅本氏は東京大学で造船工学を学んだ生粋の造船マンだ。「大連では日本の坂出でもできないような仕事ができる。本当に刺激になる」と語る。
 
 梅本氏は大連では製造部副部長であり、組立課長だ。ドックへの大型ブロックを積み上げるのが仕事である。現在は大連では「ケープサイズ」と呼ばれる超大型バラ積み船を建造している。ここで梅本氏が挑んでいるのは1200トンもの超大型ブロックを反転させて、ドックに積み上げる仕事だ。
 
 これは日本ではほとんどできないような作業だ。というのも、大連のドックではドックサイドにあるブロック置き場は長さが900mで、幅も60m以上もある。だから、超大型ブロックを溶接して作り、それを直接ドックにクレーンで置くことができるのだ。
 
 NACKSで建造する1万3000個の大型コンテナ船もそうだが、日本人の若手技術者が燃えるような船の建造作業を中国の合弁会社で経験できる。中国人を育てるだけでなく、日本人も育つ。そして、中国の合弁会社があるから、日本の優秀な大学生も「造船ならば、川崎重工に」という感じで、他社よりも採用が有利になっているのだ。
 
王者・韓国にも焦り
 
 韓国の造船産業は今、台頭する中国の影に脅え、そして焦っている。今年、韓国は建造量、受注量、手持ち工事量という3部門で中国に追い抜かれることが確実になっている。特に建造量では韓国が想定したよりも5年も早く首位陥落が起きそうだ。
 
 世界首位にこだわる韓国の現代重工業など大手3社は中国に対抗するため、2003年以降、韓国内内で大幅な能力増強に踏み切った。しかし、2008年のリーマンショックで造船バブルが泡と消え、大量の余剰能力を抱えた。さらに、自社の従業員の雇用維持や技術漏えいを恐れて中国などコストの低い海外への展開も大きく遅れている。
 
 まさに、神林常務が突くのが、そこなのだ。川崎重工が人材を育ててきたがゆえに、生産コストでも品質でも韓国に対抗できるNACKSとDACOSという合弁2社が切り札になる。これまでは韓国はウォンの安さを使って、日本に安値受注を仕掛けてきたが、中国に同じ手を打つことはできない。逆に中国から韓国を揺さぶることができる。
 
 神林氏は自らの子供のように中国の技術者を育ててきた。大連の造船所の現場を率いる王志炎副社長はその中でも秘蔵っ子と言えるだろう。こうした人的なつながりを維持していけば、これまで散々、揺さぶられてきた韓国の造船業界を逆に揺さぶることもできそうだ。