緊急増刊 朝日ジャーナル

週刊朝日緊急増刊 朝日ジャーナル [雑誌]

週刊朝日緊急増刊 朝日ジャーナル [雑誌]

   
見田宗介さんと鶴見俊輔さんが書いているので脊髄反射で購入してしまった(^_^)
それにしても八代尚宏つかうかぁ?
朝日=米国に都合の良い政権交代させるためのプロパガンダ誌という定義そのものですなあ。
 
全般的にショボくてどこが「知の復権」なんだと小一時間(ryであり結局のところ貧困問題特集であった。
そのなかで興味深かったのは、湯浅誠の実務的解決論と山口素明のユートピア的理念論だった。
  
湯浅には既成の左翼思想・右翼思想の色は薄い。貧困問題への取り組みは極めて実務的であり、政治思想へのプロパガンダに転落していない。(とはいえ廣松読みだが(^_^))そこが、宇都宮が悔恨を込めて評価する点であり、サヨクから警戒される点だろう。
一方の山口は「派遣村の問題のその先」を提起する。労働とリンクしない生活保障制度だ。しかも対象は日本国民だけではなく日本国に合法非合法に住む全ての人となる。
湯浅の思想が「社会コスト」というコンセプトから極めて現実的であるのに対して、山口の思想はたしかに空想的で突飛に感じる人もいるかもしれない。しかし実は山口の思想自体は極めてありふれたものなのだ。それは「能力に応じて働き必要に応じて取る」という共産主義思想そのものだからだ。山口だって現実には自前の組織を運営して思想の限界は弁えている。(「実際、どうしてもタスク中心になってなにかをやるという話になると、これをやるためにはこういう仕事量があって、それを誰に割り振ってという話になる。それじゃあ組合でも会社になります。運動の会社化。」[p91])だから彼の理想は実際の国家運営・福祉政策では現実化できないことはわかってるのだが、その”ユートピアの側からの批判”は常に意識しなければ特権階級としての日本国民主義国家主義に堕しかねないという指摘は正しい。
思えば、最近のウヨクというのは日本民族優越思想というわけでもなく尊皇思想でもなく、単に不公平(不平等ではない)への苛立ちの表明のように思う。彼らは本質的に排外的でもなければ非理性的でもない。合理的な不遇なら忍耐する。不合理不透明な欺瞞に苛立っているのだ。するとポイントは有限資源の分配を巡っての現実性設定なのではないだろうか?ウヨクはそれをストリクトにとり、サヨクは非現実的に広く(お花畑)とる。その意味で湯浅〜山口ラインの視軸というのは現実分析に有効に思う。
 
追記)
ところで、山口が言うようにこれまでのところ「運動」は「会社化」しないと社会に影響を与えられなかった。これを徹底したのが「グリンピース」だ。でもそういうのって実存的な意味ではオルタナティブじゃないんだよねえ。
つうか、「会社」なんかまだ良い方で、現実に歴史に影響を与えた共産主義っつーのはより恐ろしい「マフィア」だもんなあ。
官僚の仇敵=高橋洋一さんのいうように、そもそも世界経済というのは「ノーフリーランチ」が原則中の原則。そこに「フリーランチ」を持ち込もうとしても現実的にはアリエナイで終わって、主唱者は単なるサークルクラッシャーになってしまう。
でも、漏れ的にはひとつ案があって、それは「ふるさと納税 for サヨク」というアイデアなのだ。
つまり、相互扶助のために特化した基金を設けて、そこに自由に”税金”を納められるというもの。サヨクが嫌われるのは「良いこと」を賛同していない人にも押しつけるから。考えを同じくするサヨク同士でやるなら文句ないだろう。それが成立しないなら彼らの性善説が否定されるだけのこと。
もっともこう提案すると彼らは、庶民の手元には社会的に搾取されたあとの金銭しか回ってこないのだから社会全体も分担すべき、とか反発しそうだけれど、それじゃその搾取分っていくらだよって話になり、自分たちだけで「新しき村」でも作ればいいじゃん、となりそう。実際山岸ズムってのはそういうものなんだけどね。柄谷行人とかの「地域通貨」というのも指向は同じだけど。ようするにコミューンだよな。
漏れはこれを揶揄で書いているんじゃなくて、素朴にやってみればいいのにと思うんだ。見田宗介さんがいうように安定平衡期には成立する可能性がある。誰かがブログで書いていたけど、スタートレック型社会では、人並み外れて財を成すという意味がない。それに、ある人が一生そのシステムにいる必要はなくて、人生の一時期非資本主義的コミューンに生活し、また資本主義社会に出ていき得た利益を寄付する、とか、150年前より格段に豊かになった現代世界ではアリなんじゃないかと思うのだ。
マルクス主義という現実主義から理想主義への回帰、「科学からユートピアへ」というわけ。
  

それにしても、あの悪名高い亡国のエコノミスト八代尚宏氏が、「大失業時代に日本的雇用慣行を打ち破れ」と言っているが、やはり朝日新聞だなあ、と思った次第である。
 
URL:http://d.hatena.ne.jp/dokuhebiniki/20090415/1239773160

 

創刊50年 怒りの復活
 
崩壊寸前の「日本型社会システム」
いま問われているのは、私たちの「知性」、そして「感性」
 
風速計
 
見田宗介 現代社会はどこに向かうか

われわれは変化の急速な「近代」という爆発期を後に、変化の小さい安定平衡期の時代に向かって、巨大な転回の局面を経験しつつある。この転回の経験が、「現代」という時代の本質である[p8-9]
かって「文明」の始動の時に世界の「無限」という真実に戦慄した人類は今、この歴史の高度成長の成就の時に、もういちど世界の「有限」という真実の前に戦慄する。[p11]
けれどもこのことは、質実ではあっても健康な生の条件を万人に保障する科学技術の展開と、他者たちや多種の生命たちとの自由な交響を解き放つ社会の思想とシステムの構築と、なによりも<存在すること>の奇跡と輝きを感受する力の解放という、幾層もの困難な現実的な課題の克服をわれわれに要請している。[p11]

 
加藤典洋 「連帯を求めて」孤立への道を

その場合、加藤の論は、彼らにとっては、一つの症例、兆候、研究対象なのであって、彼らがその「症例」の主に批判の事実を知らせようとしないのは、文化人類学者がその研究論文を研究対象に向けて発信しようとは考えないのとほぼ同断です。[p13]

研究対象ね〜、ソエジーのいうジャパンハンドラーの土人研究そのものだねえ。
もうちょっと読者との連帯のために言葉を尽くそうかしら・・・政治宣言ということ?
 
高村薫 欲望の果てに、理性を
 

2009 日本の病理
 
・鼎談 「思想」は希望を語れるか
 浅田 彰 
 宇野常寛
 東 浩紀
 「言説空間」が失われ 批評と物語が衰弱したいま
 
柄谷行人 国家と資本─反復的構造は世界的な規模で存在する
 
鶴見俊輔 “大づかみ”できなくなった日本人 なぜ米国、米国と言い続けるのか?
 
斎藤貴男 貧困を生み拡大した構造改革の熱狂的支持者は有権者だった!?

戦争だけは認めない最後の砦を死守できる本能が、日本社会になお息づいているのであれば、未来は絶望だけでもない。きっとやり直せる。

未来への処方箋 2009
  
平野啓一郎 他者との関係で現れる別人格をシニカルにとらえず肯定する
  
・座談会 雨宮処凛 梶屋大輔/山口素明/園 良太
 「生存を無条件に肯定」し社会を変えるしかない
  

山口 派遣村批判のなかでも実際にあったけど、「クビになった人たちは人手不足の農業や警備や介護をやればいい」みたい言い方があるわけです。答えは簡単で、みんな労働条件が厳しいところでは働きたくないんです。人間はモノじゃないんだから。人手不足のところに”移動”させるなんて発想自体がおかしい。もっと考えるべきなのは、厳しい労働条件を改善することのはずです。
(略)
山口 そういった直接の貧困による圧力だけでなく、ナショナリズムの問題があります。日本全体の利益、国益という言葉にごまかされ、あたかも自分がその権益の一部にあずかっているかのように思ってしまうことが、貧困と戦争をつなぐ最大の要因です。
(略)
山口 ただ、派遣村の状況や報道があったおかげで、新自由主義的な弱肉強食を見直そうという機運は高まっている。ただ「労働者の使い捨てはやめましょう」という声は全員を救うことを意味しません。必ず、どこまで救うかという線引きの話になる。例えば実際、国籍法改正に反対した人々は、外国人が「偽装認知」によって「違法」に在留資格を得ると主張していました。日本人であることが権益として意識され、国籍によって分断されている。また、たとえ政府が福祉国家に立ち「使い捨てをやめる」と言っても、財源は有限ですから福祉の効率的運営のために移民や障害者、野宿者が排除される。
(略)
山口 生活保護だって、雇用を前提とした制度になっているので、結局は働かないといけない。雇用以外の形で生きていくことって難しくなっている。でも我々のこの活動のように必要だと思う働きは、実は無償でもやるんですよ。人はいろんな形で人とかかわりたいというのが根本にあるから。
(略)
山口 保守論壇の一部が「ホームレスもいたじゃないか」ということで派遣村論争に勝ったような気になっている。多くの人がまだそう思っているんですよ。ただ、そもそも論から言うと、「働くこと」と「生きること」というのは切り離して考えなきゃいけないことなんじゃないか。本当は派遣村派遣村で終わるのではなく、その先の問題をやらなきゃいけないんじゃないですかね。
(略)
山口 「賃金労働がなくても生きていける」という新しい保障を考えるとかですね。生活保護でも賃金労働のための就労始動は受け続けるわけだしね。あえて言うけれども、やっぱり「ベーシックインカム」(所得に関係なくすべての人に一定額を支給する制度)の発想をもたなきゃいけない。そうすれば失業の不安から解放されて、自分の能力を最大限に発揮することに時間を費やせるわけです。
(略)

     
蒲島郁夫 自分たちの価値観を大切にして総幸福量を最大化する
  
・山森 亮 ベーシック・インカムの手前で…
 ──二つの当事者運動によるシンポジウムに参加して──
 
宇野重規 オバマ演説に感じる思考の厚みと国民に届かぬ日本政治の言葉
   
・対談 八代尚宏/木下武男 大失業時代に日本的雇用慣行を打ち破れ
  
・対談 堀江貴文浅尾大輔 立場は異なっても 共有が可能な「知恵」
  
・吉田 司 「老人全共闘」諸君!総幸福量を最大化する
  
蒲島郁夫 自分たちの価値観を大切にして「新・ルンペンプロレタリアート」と共闘しろ
   
木村三浩 政治家・官僚・マスコミに舐められて漂う「諦めムード」
  
本田由紀 見殺しにしつつ自らの首を絞める「正」と「非正」のパラドキシカルな関係
 
・富坂 聰 外交に民主主義は不要!難問を米に頼らずに解決せよ

2009年 取材の現場から 
 
・7年半酷使された29歳女性 人間性を奪われた“ハケン”の果てに
  
・「年越し派遣村」男性のその後 あなたは、いったい何者か?
 
・青森・沖縄の高校生2500人が回答 18歳の実像と憧憬 分析・玄田有史
 
・貧困が生んだカリスマ湯浅誠の一日
  

彼には高校時代からの親友がいる。柄谷行人吉本隆明廣松渉ニーチェなどについて高校時代から議論し合っていた。(王子賢太)[p56]
予定時間より早く終了し、雑談していると、湯浅は「KY(空気読めない)」という言葉が嫌いだという話に。「最近の職場に顕著ですが、どこにでも、もたついたり、空気が読めない人はいます。でも職場としては効率的な人間しか許容できない。その圧力を端的に示したのがKYという言葉でしょう。ただそうしてクビなどで排除された人たちが、犯罪に走ったり、多重債務になったりする。その方が社会的コストはかかる」「社会的コスト」という言葉を躊躇なく使い、政策提言を語れる湯浅は確かに希有な存在だ。「反貧困ネットワーク」代表の宇都宮健児は、「実践に裏打ちされた政策提言をする彼みたいな人物が、本来は理想的なタイプの活動家です。旧左翼型活動では何も変わらないし、実際に何も変えられなかった」と評する。一方その器用さゆえの危惧を持つのが親友の王寺だ。「今までの活動家のように、政治家に祭り上げられ、権力側に回収されないかが不安です」湯浅本人は、「僕は是々非々で、与党にも野党にも提言していきたいから政治家にはなりませんよ」と一笑に付す。[p57]

 
赤木智弘・思想の源流

赤木がイメージする戦争とは、日本が外国に攻めていくような「勇ましい」ものではないという。「僕が望んでいるのは、『負ける戦争』です。太平洋戦争のあとの日本のように、今の体制が崩壊して、もう一度再スタートを切れるようにしてほしい。その意味では、外国に侵略されるのでも、大災害に見舞われるのでも同じことです」[p60]
今回の「朝日ジャーナル」で複数の知識人たちに赤木との対談を打診したが、「戦争」を提唱するような人間と議論したくないなどの理由で断られた。

 
・吉岡忍が詠むニッポンの風景 この国で生きるということ
 佐久/夕張/高崎/原宿/名古屋/大川/与論島

文化2009 あるいはゼロ年代の“神々”として…
  
水無田気流 ビンボーブラボーの罠
 
・丸若裕俊 日本に息づく「正常」な美
 
・遠藤一郎 未来へと導かれる意識と価値観
 
・澤田サンダー 「不謹慎」の先の「癒やし」
 
・映画監督が若者に薦める至極の3本
 西川美和
 橋口亮輔
 佐藤嗣麻子
 村上正典

80年代 朝日ジャーナル回顧
 
・グラビア 「神々」と「新人類」の語録が映す四半世紀
 
・鼎談 新人類の24年“同窓会”
 中森明夫/辻元清美/秋元 康
 “青かった”私たちの背中を押してくれた「朝日ジャーナル

・グラビア ONE DAY WORK 個性が失われた風景
・こらむ 私、怒っています
 鈴木宗男

本来、世直しすべき政治家がしっかりしないから、代わりに自分たちがやってやる――いまの検察には、そんな歪んだ”気負い”を感じる。青年将校が暴走した戦前の「二・二六事件」(1936年)を彷彿とさせるものだ。

 森永卓郎

私は、竹中氏はディベートの天才だと思う。だから、彼の巧みな演説を信じてしまう国民が多い。しかし、竹中氏の師匠である中谷巌氏は、新自由主義を日本に入れたのは間違いだったことを認めた。だから竹中氏も間違いを率直に認めるべきだ。竹中氏の高い説明能力をいまの日本は必要としている。それは、構造改革の欺瞞を国民に示し、本当に豊かな経済への新しい道筋を示すことだ。もう本当のことを言ってもいいだろう。十分に稼いだのだから。

 杉田俊介
 長妻 昭
 水月昭道
 斉藤斎藤
 いちむらみさこ
 石川直樹
 新藤宗幸
 尾形真理子