選択7月号


    
株主が変わり、フォーマットが変わって、サヨ色・草加色が出てきて詰まらなくなったと思っていたが、今月はなかなか面白かった。
というか「国賊」とか「ユダヤ資本」とか、下品なキーワードがむしろ気になったくらい。どうしたのか?
    
労働党凋落の裏で 英国民に「上流階級統治」への郷愁再び  

「これでニュー・レイバーは終わった」──。
(略)
 十年余前のニュー・レイバーの躍進には中流階級の広い支持があったが、上の階級に対する敵対心をあらわにした現在の労働党には、階級闘争を手段にする古い労働党のドグマが垣間見えた。
 一方、保守党のイメージは今や大きく変わっている。
(略)
英国民は、家柄、富・収入、教育程度、英語の発音や語彙、衣服、食べ物の好みなどの様々な要素から複数の階級に分類される。王室を頂点とし、上流階級(貴族、紳士階級、土地所有者)、中流階級(企業の経営者、大企業の中間管理職、幹部公務員など)、労働者階級(主にブルーカラーワーカーや単純作業者など)が続く。世論調査会社ICMによれば、国民全体の五三%が労働者階級、四二%が中流、二%が上流と答えている。(二○○七年十月)。
(略)
英国論陣の旗手ニック・コーエンはオブザーバー紙上(五月二十五日付)で、上流階級に政治をまかせたいという国民願望の背景には「労働党の変質」があった、と分析する。上流階級を攻撃する労働党は「反エリート主義」のつもりだったかもしれないが、既に自分たちがエリート層になっていたことを忘れていたのではないか、と問う。
[p12-13]

  
・肥大化する官民の予算に群がる 「環境」貪る国賊企業
   

(略)
日本は最大二兆円近い排出権買い取りをする必要が出てくる。それ以外に電力会社・製鉄会社など、大口排出企業は、中国・インドなどで温室効果ガスを減らすプロジェクトを進めている。これもひとえに、足りない排出枠を買うためだ。
 京都議定書の約束を守る、というメンツのために、次々と日本の省エネ技術が、莫大な資金とともに流出していく。排出枠を巡ってこれだけキツイ状態になっているのは日本だけだ。EUは、域内排出量全体の八割を占めていたドイツと英国の二大国が東独統合、北海油田のガス化という二つの特殊要因により大幅に二酸化炭素排出量を削減することができた。しかもEUは非効率な東欧諸国をのみ込みながら拡大しており削減ポテンシャルは常に高い。
 EUが展開する政治ゲームにこれ以上巻き込まれてしまうことを日本経団連などの産業界は強く警戒している。産業界の反発に対応し、経済産業省は、業種別にベストプラクティス方式でエネルギー効率を上げようとする「セクター別アプローチ」を提案しているのだが、EUは歯牙にも掛けない。アジア太平洋における技術支援の枠組みを進めても、まったく相手にされない。この問題における主導権をEUは譲る気などないのだから当然だ。
(略)
そうした中でドイツ環境省の躍進を横目で観てきた日本の環境省は、環境統制による省益拡大を狙う。
(略)
「二年ほど前まではIT関連であれば簡単に予算が取れたが、社会保険庁問題を経て、風向きが悪くなった。今は何と言っても環境だ」と経産省中堅は臆面もなく語る。
(略)
 地球を守る──ポスト京都議定書の枠組みにおいても、この錦の御旗を掲げるEUの思惑通り、政府主導による炭素管理経済が、その度を増すことになる。
(略)
[p68-70]

 
グローバル資本主義の手本を示せるか スチュアート・チェンバース(日本板硝子社長)
  

 日本板硝子の「三日天下」だった。二○○六年六月に同社が二倍の売り上げ規模を持つ世界第三位のガラスメーカー、英ピルキントンを総額六千億円で買収した際に、日本の経済界は日本企業のグローバル化の象徴として賞賛した。だが、わずか二年で日本板硝子そのものが外国勢に乗っ取られる羽目に陥った。(略)藤本前社長ら日本側の誤算は、グローバル市場で戦うための力量にピルキントン側と埋めきれないほどの格差があったことだろう。(略)世界各地でガラス事業の拡大チャンスが広がる中で、「日本板硝子主導では成長機会を逃す」との焦りは同社の外国人株主やピルキントンの社員の中に急速に広がった。それを日本人経営陣も認めざるを得なくなったのが、三日天下の背景だろう。
(略)
さらに今年二月には八百人の管理職を対象に希望退職を募った。日本板硝子の間接コストの高さを問題視するピルキントン側の批判に抗しきれなくなったからだ。
[p71]