ローマはなぜ滅んだか

    

ローマはなぜ滅んだか (講談社現代新書)

ローマはなぜ滅んだか (講談社現代新書)

     

    
古代地中海世界ってなんだか資本主義の元像というイメージがあるけど、弓削先生によると、ローマはあくまで農業社会だったのだそうだ。で、ローマの貧富は所有する土地に依存していたと。にわかには信じがたいなあ・・・
で、ローマの対外戦争は要するに土地を奪うためにやっていたんだね。まさに植民地主義
ところが、手を広げすぎると、帝国の維持管理に2級市民=蛮族ゲルマンを活用せざるをえなくなってくる。
それでもローマが高飛車にゲルマンを使役しているウチはよかったが、382年、なんとローマ皇帝は西ゴート部族同盟と対等条約を結び辺境の防衛を委任した!唯一絶対のローマ中華思想が崩壊した瞬間である!
これは375年のゲルマン族の大移動から7年後のできごとだったが、さらにその13年後の395年にはローマ帝国自身が分裂してしまう。そうしてみると、名目的にローマ帝国は存続するものの、軍事警察は蛮族依存になってしまっており、そのうちの一軍管区が首都を占拠する410年まであと一歩である。なんとなく中華帝国軍閥の関係みたいだな。で、さいごには476年に崩壊してしまったと。
        
あたりまえだけど「民族」というのが分解して「ローマ人」=「ブルジョワ」に堕してしまった瞬間に運命づけられていたんだろうなあ。長沼伸一郎さん的にはコラプサー回収装置が壊れてしまったわけだ。
ちょっと気になるのはこの過程でのキリスト教の役割だ。392年にキリスト教民族宗教ではない。普遍宗教である。ローマ人であること自体が宗教的な意味をもっていた自己認識を世界宗教が掘り崩したのが民族帝国ローマ解体のもう一つの要因なんだろうな。ビザンチン帝国はもはやローマ人の帝国ではないもの。ローマ型帝国であって民族は問わずだからね。
弓削さんは優しい戦後民主主義者らしく、蛮族が対等をもとめるのに差別意識をもっていたローマ市民との宥和がならなかったことが崩壊の原因としているけど、漏れはそうは思わないね。いまのアメリカでもそうだけど、文化も文明も共有しない「貧乏人」がわんさか流入してきて収集つかなかくなって崩壊する、というのが帝国の生理なんじゃないかな。
ま、日本人は帝国なんてやらないで、日本民族国家でいつまでも平和に暮らしたいですね。