B・アンダーソンかく語れり

nyankosensee2007-06-09

   
論座7月号にベネディクト・アンダーソンのインタビューが載っていたので早速読んでみた。
それにしてもこの記事タイトル(「排外主義は何世紀も前から存在するが、成功しないだろう」)はひどい。「日本は右傾化している。だけど右翼は失敗するだろう。」と言うような内容なのかと期待して?読んだが、実際アンダーソンさんが言っているのは「日本は右傾化などしていない」ということだった。さらに日本で歴史問題がくすぶっているのは日本の進出地域が近隣諸国だったせいで、もっと遠くなら歴史問題など存在しなかったはずと断言。そもそも歴史問題で謝罪するなどという国際慣行はないとイギリスの例(個々の犯罪事件には謝罪するが、植民地支配や戦争そのものを謝罪などしない)をひいて語る始末。これって朝日新聞的にはおもいきり墓穴なんじゃね?
(追記:どうでもいいけど彼は1936年生まれだった。長生きしてくださいね。)
     
もう一人のガイジン論者ニコラスさんというのは知らなかったが英領インド史の専門家らしい。彼はグローバリズム時代こそ国民国家が強化されると託宣。これも朝日的には微妙な話だな。
       
なお、今号ではまたも小林よしのりがメイン扱いされている。論座どうしたんだψ( `∇´ )ψやっぱり売れるんだろうな〜。
小林は格差社会を是認する新自由主義従米保守を批判しているのだが、同時に戦争論を出すに至る経緯を堂々開陳。姜尚中の愛郷論など話にならぬと切って捨てる。朝日記者もそれ以上つっこめなくて黙って聞いている。(w
   

特集 現代のナショナリズム
グローバル型ナショナリズムの時代
  
解題に代えて──
●山本信人 慶応義塾大学教授

「排外主義は何世紀も前から存在するが、成功しないだろう」  
ベネディクト・アンダーソン コーネル大学名誉教授 
  
「グローバリゼーションは人々をネーション(国民)に立ち返らせる」
●ニコラス・B・ダークス コロンビア大学副学長

特集 格差、保守、そして戦争。
戦争論』、それから
  
わしが格差拡大に反対するワケ
小林よしのり 漫画家
  
小林よしのり×雨宮処凛
「現代の貧困」の現場
新宿・マンガ喫茶探訪

   
ところで今月は「日本の右傾化」ψ( `∇´ )ψを象徴するムックがでていた。
別冊宝島の特集は軍歌!CD付!編集長は1963年生まれ。
もはや江戸時代特集と同じ感覚でムックが組まれるんだなあと慨嘆。敗戦ショック世代じゃないからノンシャランとふつうに軍歌を取り上げている。あまりバイアスかかった話は載っていない。ごく良識的な特集だ。なぜか奈良谷隆睦月影郎がインタビューに出ていた。太ったし年取っていた。氏が所属した雄叫会は軍服コスプレイヤーの闖入で活動停止状態だとか。もうリアル戦争を考える世代すら終わりに近づいているのだろうか。ちょっと暗いニュース。あと、しらなかったけど奈良谷さんは色盲だったんだな。表現者ってプチ障碍者おおいな。
   

別冊宝島1428 軍歌と日本人
■定価1200円(本体1143円)
■雑誌:66082-93
■ISBN:978-4-7966-5890-4
■2007年6月5日発売
   
戦時下、日本を鼓舞したメロディの真実
聴けば「やまと」の血が騒ぐ
歌えばわかる「愛国心」と「人間愛」
【永久保存版】
当時の“貴重音源”を再録した「傑作軍歌」12曲CD付き!!
(1)抜刀隊(2)敵は幾万(3)喇叭の響〜勇敢なる水兵(メドレー)
(4)軍艦行進曲(5)月下の陣(6)日本海海戦(7)上海陸戦隊
(8)爆弾三勇士の歌(9)行進曲「愛馬進軍歌」(インストルメンタル
(10)愛国行進曲(11)大東亜戦争・海軍の歌(インストルメンタル
  
URL:http://tkj.jp/book/book_20142801.html

    
あと中央公論とか世界とかぱらぱら読んだんだが、なんかもうホソボソというか痛々しい誌面。皮肉じゃなく誰が購買層なのか見てみたいのだが、未だ嘗て誰かが買っているところを見たことがない。
中央公論はすっかり右傾化?していて、ナベツネ路線が定着している。なんだよあのアメリカの手先みたいな編集後記は。防諜論議に大御心を奉じての平和主義護持論。論者は保阪正康御厨貴。_| ̄|○ il||li 
世界は高橋哲哉にコリン・コバヤシ、斉藤貴男に金子勝。。。_| ̄|○ il||li 
もうダメかもしれんね。
その意味で情況の巻頭言はまったく正直だ。「21世紀を迎えましたが左翼運動の低迷を救う理論は現れていません。でも新帝国主義に流されるのは悔しい。なんとか新しい理屈を考えていきます!」しかしデリダじゃなぁ・・・
    

編集後記
   
アル・カポネに代表されるアメリカのマフィアは、一九二〇年代の禁酒法時代に、現在まで続く隆盛の基礎を築きました。禁止しても、悲しいかな飲酒癖という人の性は変わることなく、結局この悪法は密造・密売という商売に携わったイリーガルな連中を急成長させるだけに終わりました。
★どこの国でも現実の社会実態と遊離した規制は、大抵の場合、腐敗の温床になります。最近痛ましい自殺が相次いだ公共事業不正も、自由競争というこの国の建て前と、公費によって全国津々浦々に利益配分することで地方経済を成り立たせるという隠された本音とのギャップによって生じています。法的に禁じられている恣意的配分が事業の目的なわけですから、水面下での「顔役」たちの跳梁跋扈は当然。利益誘導政治や果てはアングラ勢力の温床となっている現実を思うと徹底排除を目指す以外はありません。
★「本音と建て前」という都合のいい理屈の中で宙に浮いた世界に、腐敗がばらまかれています。学校、役所、家庭など、あちこちにイリーガルな状況を垣間見るのは私だけではないと思います。開発途上国的、村社会的なものと、近代的な社会システムとの相克という構図は、日本では長く続いてきましたが、ここにきてようやく天秤が傾いてきたよう。ちなみに弊誌編集部の部屋では、先日、換気窓の開閉装置が故障。管理者は「エアコンの能力だけで十分なはず」と言いますが、みるみる空気もモラルも腐敗してしまいました。(間)
       
中央公論』編集後記
URL:http://www.chuko.co.jp/koron/

21世紀を迎えましたが、現代文明の閉塞をいかに打開すべきか、また、しうるのか、その方途は依然として昏迷を続けております。
私たちはいまだ新しい時代を担う新しい知的パラダイムを持つに至っていません。変動する世界の構造を批判的に剔抉し、歴史の趨勢に棹さすためにも、今ほど批判精神の求められている時はないでしょう。
私たちは出版活動を通して、新たな知的・実践的パラダイムを読者とともに模索し続けてまいります。
   
『情況』巻頭言   
URL:http://situation.main.jp/index.php