日本のナショナリズムを再発見するために

ネイションとの再会―記憶への帰属

ネイションとの再会―記憶への帰属

              
ブックレビュー
●日本のナショナリズムを再発見するために 評者:柴山桂太・滋賀大准教授
        

近年、日本では、サッカーの代表チームに熱狂する若者たちや、ネットで愛国的な書き込みが増えたことを指して、危険なナショナリズムが高まっているとする報道が多い。だが、本当にそれがナショナリズムなのか、という疑問を持つ者は評者だけではあるまい。(略)グローバル化が進んだことで、国家は不要になったとする意見や、ナショナリズムは幻想に過ぎない、とする意見まである。
本書は、そうした現状への一撃となる書だ。運命共同体としての国家、という自覚こそナショナリズムの本質であり、その自覚は現代の日本でも必要だ、と主張する。
単純な愛国のすすめではない。むしろ、単純な愛国者になれなかった、哲学者のハンナ・アレントに、著者は深い共感を示している。(略)おそらく国家とは、失ってみて初めて、その存在の重さに気付くものなのだろう。(略)昨今の日本はむしろナショナリズムを失っている、という本書の逆説的な指摘は、国家を実存的に捉え直すきっかけを与えてくれるに違いない。
[週間東洋経済2007/4/21特大号 130P]