「栗原中将をヒーローにするな!」

 
映画『硫黄島からの手紙』の公開と前後して栗原中将はくだらない人間だったと主張する記事が大野芳というライターによって『SAPIO』10月25日号に「栗原中将の「死の真相」異聞」として発表された。
これに対して『散るぞ悲しき』を書いた梯久美子という作家が文藝春秋2月号で検証を行っている。
結論としては、これは●●という生き残りの兵士の捏造である可能性が高い。
●●は戦闘時に硫黄島にいなかったうえに、証言を聞いた相手と名指しされた日本軍人もそんなことを言っていないことが明らかになっている。そのうえ●●はあとで自説の根拠を米軍ということに変えたが、米軍内の記録に相当しそうなものはなかった。
・・・ここで僕には疑問が二つある。
なぜこのタイミングでSAPIOはそんな記事を載せたのか?
また●●は何故そんな嘘話を吹聴したのかである。
 
陰謀論マニア?の僕は、これはアメリカの意向を汲んだ一派による「栗原英雄説」つぶしだと思った。
栗原中将はいわば反米の英雄である。東郷元帥とは違う。アメリカがもっとも警戒するのは日本の民族主義である。その格好のアイコンになる可能性があるのが栗原中将だ。だからつぶそうとしたと。
(実は文藝春秋の記事も同趣旨かと邪推していたのだが読んでみたら逆だった。梯久美子さんが書いているのだから本来はそこで推察がついたはずなのに・・・反省)
しかし案外SAPIOは単純におもしろがって載せたのかも知れない。
また『手紙』をみても特に反米主義が盛り上がるというものでもないかもしれない。
ただ問題は●●のような詐話師である。なぜそんなことを言うのだろうか?
以前旧軍関係者の出席するシンポジウムに出たとき、聴衆からパネラーに「○○さんの証言とは違うが何故か?」というような質問が相次いだのに対して、言いにくそうに、「関係者のなかにはおかしな証言をする人が居る。本人は悪気はないのかもしれないがマスコミに取り上げられるうちにだんだんおかしくなって行き、最後にはマスコミに取り上げられるために見てきたような作り話をするようになる人がたくさんいる。」と語っていた。関係者の証言といえど検証しないで信じ込むのは危険ということで、最近で言えば「従軍慰安婦」の吉田清治や「南京大虐殺」の東史郎、「北朝鮮工作員」の安明進のような人だろうか。一種の承認欲と金銭欲で嘘をつく人である。政治的背景がなくてもそういう走狗を買って出るひともいるのである。人間って悲しいなあ。。
  

ノイローゼ、部下による斬殺説の真相
検証 栗林中将衝撃の最期
硫黄島 映画で話題沸騰の総指揮官、ついに明らかになる死の全貌
文藝春秋2007年2月号)

「栗原中将の「死の真相」異聞」
『SAPIO』10月25日号