古事記の宇宙論

      

古事記の宇宙論(コスモロジー) (平凡社新書)

古事記の宇宙論(コスモロジー) (平凡社新書)

      
以前から「神社」についてわかりやすく解説してある本を探していた。
しかし神話や神社について説明しようとするとすぐに記紀の文献解釈にスライドしてしまい、却って錯綜してしまう。
この本は記紀を解釈しながらも、より大きな枠組みとしての古代人の宇宙観=世界観から神話を位置づけ直すという画期的な本だ。
ともかくこの本で僕は初めて日本の神様というものに納得がいった。
文献の裏付けが難しいため大胆な仮説を天文学や他の「未開社会」の宇宙観との対比で補っている。
                      
たとえば、住吉神は海の神様であり、稲荷神とは田の神様であり、八幡神は天候の神様だ。
そのような自然神への信仰がやがて記紀の神々に結実していったのであり、その逆ではない。
記紀の記述内容から神話の発生を説明するなら多くの神々が天皇家の成立以降の話になってしまい、いかにも新しく局地的で政治的過ぎるし、なによりも普遍性が無さ過ぎる。信仰自体は太古からのものだろう。それが古代国家成立時に起源神話とともに再編されたのだ。
               
というわけで本書によって漏れは古事記に関する違和感をきれいに払拭し頭をすっきりさせてくれた。
ありがとう!76歳の大先生!