■よっこら諸島【2012-1-3作文】

一。
 Andre J. Jackson 記者による2012-1-1記事「Does uncovered tombstone tie black family to Gen. Robert E. Lee?」。
  南北戦争前の1800年代前半、米国の奴隷黒人は、デトロイト河とセントクレア湖を渡って彼岸まで逃亡できれば、自由であった。ウィンザー市の東郊にある Puce Memorial Cemetery には、そうして南部を逃げてきた数百人の黒人死者が眠る。

 場所はPuce河岸なので、過去の増水で墓石が埋まったり、それが大雨でまた地表に出てくることもある。橋脚工事で地面が掘り返されたときに発見されるものもある。

 比較的最近、発見された墓石には Elizabeth Lee と書いてある。1894 年死亡。その配偶者は Ludwell Lee だとも石に刻まれている。そしてあるカナダ人一家に伝えられる口承では、彼は南軍のロバート・E・リー将軍の甥であり、南軍の一部隊を率いていたという。
 その口承によると、Ludwell の母は奴隷のKizzieであり、彼女は、Robert E. Lee とは異母姉妹であったと。つまりどちらも、父は、独立戦争の英雄であった、Henry (Light Horse ハリー) Lee だというのだ。

 しかしヴァジニアに遺されているリーのプランテーションの記録には、そういうことを裏付ける文書の証拠は何一つ無い。

 Ludwell Lee は1850年代にカナダに到達したのだろう。

 米国では有名人は黒人との血縁関係は否定することが多い。最も有名なケースは、大統領 Thomas Jefferson が奴隷の Sally Hemings との血縁を否定した話である。

 古く忘れ去られた墓地は、墓石が粉々になってしまっていることが多い。しかしエリザベスの墓石は、偶然、地面に倒れたあとで素早く泥に埋まったので、良好に保存されたのだ。

 Kizzie は Ludwell を1818-1に産んだらしいという。
 Ludwell という名は普通じゃない。じつは、Light Horse Harry の最初の妻は、Matilda Ludwell Lee という、遠い従姉妹であった。

 そこで空想。Kizzieの母は、Matilda付きの奴隷メイドの一人だったのだろう。そしてマチルダとともに Light Horse Harry一家に吸収されたのだろう。
 Kizzie はニックネームでしょう。本名は分かりません。そのため、他の記録と照合しようがないのです。

 Robert E. Lee には、腹違いの兄弟の Henry (Dark Horse Harry) Lee もいた。

 Robert E. Lee は北部人からも評判の良い軍人ですが、女奴隷関係が調べられたことはありません。

 2006のカナダ国勢調査では、421,100 人が、じぶんは黒人だと記入している。それはカナダの人口の 1.3 percent である。
 Windsor 地区では2.2%なので黒人密度は高い方だと言えよう。

二。
 ミリテクの2011-12-8 記事「Coastal radar offers unprecedented performance of littoral surveillance」。
  EADS社の一部門Cassidianが新製品を開発した。
 海岸や港湾や海峡を、非対称的脅威、つまりいろいろなテロから守るためのハイテク監視装置。
 海上油田や、無人島への不法侵入者も見張ってくれる。

 SPEXER 2000 Coastal という名のレーダーである。灯台など、海岸の高塔の上に設置する。
 とうぜんながら Active Electronically Scanning Array (AESA)。
 これまでの古いレーダーの2台分以上の仕事をやってくれる。

 視程は 21.6 NM (40 km) である。
 シー・クラッターは除去される。
 が、ごくゆっくりと移動するゴムボート(rubber dinghies)や泳者すら見逃すことはない。ドップラーを識別できるのだ。

 レーダー画面上でわかりやすく識別された不審な目標物には、こんどはカメラがズームする。

 すでにドイツ陸軍には、このシステムの軍用版が納品されている。

 ※海保と沖縄県警は合同でこの施設を一刻も早く尖閣諸島に設置しよう。どうも自民も民主も、中共との過去の「密約」に縛られて自衛隊を配備できないようだからな。旧自民でも旧社会でもない第三の政党が立たない限り、こんな腐れ密約も破棄できない。同じ「自民党社会党」を母胎にした「二大政党制」なんて何の意味もありゃせんことがよく分かる話だよ。

■一事がバンジーJUMP【2011-12-31作文】

一。
Bill Sweetman 記者による2011-12-30記事「F-35 Proponents Say The Darndest Things」。
  F-35がどうなるかを考えるとき、エアボーンレーザーを思い出すとよい。ゲイツ長官が計画をキャンセルしたのが2009のことだ。それは開発開始から13年目であり、とうぜん 人件費その他で billions of dollars の税金が消えた。しかし化学レーザーが軍用として適当でないことはその何年も前から知れていたことである。

 187機のF-22のうち全部が最新鋭ではない。四十数機はテストや訓練のための機体であって実戦用ではない。※日本が買う4機のF-35もこういう性格の半人前の機体だね。
 またF-22のうち六十数機は、ある程度戦闘に投入できる機体である。
 そして187機のF-22のうち残る八十数機だけが、最新のレーダーを搭載し、当初計画されたようなパフォーマンスを見せてくれそうなのである。

 発注者である空軍の将校。彼は、彼のうけもちのビッグ・プロジェクトが正式にスタートしただけで、昇進が確定する。空軍に大利権をもたらした功労者として。だから、彼にとってはもはや、そのプロジェクトが計画予算内で実を結ぶかどうかなど、どうでもよいのだ。

 こうして始められた計画が、やがて、予定納期と予定予算がまるっきり守られないことが確定してしまうと、もはやそこには「火事をロケット推進薬で消す」のと同じ作業しかありえない。税金はとことん注ぎ込まれ、完成期は無限に遷延する。メーカーだけが数十年の食い扶持を確保する。

 F-35の場合、800マイル先の敵機を infrared Distributed Aperture System で探知しようと考えているところだが、この装置は絶対にF-35に組み込めるようなサイズではまとめることは不可能だ。まして360度全周の視察がそれでできるなどありえない。

 日本の防衛省は、〈F-35A は安い。なぜならユーロファイターやスーパーホーネットはフライングブームでの空中給油ができるように改造するための費用がかかり、それを加えるとF-35Aより高くなるからだ〉と公式に説明した。阿呆じゃねえの? それしきの改造の費用が、トータルライフサイクルランニングコストの何割にもなると思っているのか? 詭弁も極まれり。トータルライフサイクルランニングコストで比較すれば、給油口を改造したユーロファイターやスーパーホーネットの方が、確実に何倍も安くなるわ。

 オーストラリアは2007に、24機のF-35を買うと予約した。それに日本が続いた。

 大口の戦闘機バイヤーたるインドは、2011-4に、タイフーンかラファールを126機買おうかなと考えた。アメリカはF-35を、空母用タイプも含めて売り込んでみたが、インドは、完全な国内生産、つまり技術移転を望んでいるので、とてもF-35が割り込める余地はなかった。

 ちなみにF-35を1機でも外国に売ることができれば、ペンタゴンが米軍用に調達するF-35の単価は、$10 million づつ減ってくれる計算だ。

 F-35はこれからどんな不具合が発見されるか分からない未完成機体であり、その不具合がみつかるたびに、それまでの料金見積もりは、ぜんぶ書き換えられねばならないのである。

 ※豪州はシナの強圧から自国を守るためにアメリカしか縋る相手がないので、アメリカの要求にしたがってF-35を買うとアナウンスした。日本の立場は豪州よりも強いはずだが、愚かな政府は自分たちは弱いと思っており、それで豪州と同じ選択をした。三菱重工三菱電機はもう少し利口で、バイザー表示システムを地上にもってくれば即座にF-35は無人機に遷移できるシステム構成であるから、そこをとことん学び取りたいと思っているのだろう。

■今日のラーメン、チキショーメン【2011-12-30作文】

一。
 Mark Thompson 記者による2011-12-28記事「Can Iran Close the Strait of Hormuz?」。
  イラン海軍の親玉が、いつでもホルムズ海峡を閉鎖できると語っているが、イランの国庫収入の約半分は、この海峡を通過する原油で稼がれてるんですけど。

 イランはこれまでも、サーベルをガチャつかせる(saber-rattling)たびに国際原油市場が反応して油価が少し値上がりするという仕組みから利益を得てきた。
 今週、さっそく、原油は1バレルあたり $100 に急伸した。

 ホルムズ海峡は、世界の原油移送量の五分の一が通るところである。幅は、いちばん狭いところで 34 miles しかない。
 そのうち航行可能な帯幅は20マイル。
 ※ここにイスラエルがこっそり機雷を撒いたらどうなるんじゃろ?

 2008の米海大のシミュレーションでは、イランがホルムズ海峡を閉塞した場合、米海軍が出動して再開させるまでには、悪くすると5週間から3ヶ月かかるだろうとの結論だ。
 ※原始的な機雷堰でも掃海の確認までに2週間かかるだろ。しかも掃海艇は現場にかけつけるまでにものすごく時間がかかっちまう。だから、LCSを造りましょうというわけだ。

 米海大の昨年のリポートでは、イランは、商船のウェイク(航跡)にホーミングする魚雷を使うこともできるという。

 1980年代にイランはイラクペルシャ湾で「タンカー戦争」を8年間くりひろげた。攻撃は544回なされ、船員400人が死亡。原油の移送量は25%減少した。保険料は、1バレルあたり、「a penny」 だったのが $6 になった。
 米軍専門家によると、イランは機雷を敷設するチャンスはほとんど無いという。それよりも小型舟艇による攻撃や対艦ミサイルの方がありえるだろうと。
 ※航路帯は水深が深いので繋維機雷にするしかないということか。しかも水深が深すぎればそれも無効というわけか。だが方法はある。原始的な超低速の回遊装置をとりつけた浮遊機雷だ。これを海亀のように深度数mで、ホルムズ海峡を、北→南→北→南→……と、電池が続く限り果てしなく往復させる。ナビゲーション・システムは、内蔵の「方位磁石」だけで十分だ。どの船がひっかけるかは誰も分からない。何かにコツンと当たったら、タイマーを作動させ、深度10mまで沈降した頃に起爆させる。

 キロ級潜水艦×3と、それより小さい数十隻の潜航艇は、米海軍のASWシステムの前には、軽い演習ターゲットに過ぎない。
 米海軍はむしろ、イランの全潜水艇を1隻のこらず除去するチャンスが与えられる日を、手薬煉ひいて待望しているのである。

 ※もうひとつ忘れちゃいませんか? 北風が吹いている時に、核分裂物質の「沃素131」ガスをホルムズ北岸から放流したらどうなるか。

四。
 David Lague 記者による2011-12-29記事「New Satellites Extend Chinese Military Reach」。
  2020までに35機の北斗衛星を投入したいシナがまた打ち上げに成功。
 すでに北斗は10機廻っている。来年は6機を追加するであろう。

 1996に台湾海峡を通った2隻の米空母の現在位置をシナ軍は追跡することができなかった。宇宙からの海洋監視がまるでできないことに彼らは焦り、そこから宇宙投資が加速したのだ。

 また1991湾岸戦争、1999のNATOのユーゴ空襲、そして2003イラク侵攻で示されたGPS誘導爆弾の威力をシナ軍は欲しくてたまらない。

 偵察衛星は過去10年で30機軌道投入した。
 当面の目標は、西太平洋での米軍の動静をリアルタイムで宇宙から把握し続けることである。

 最近ではシナは電子諜報衛星も打ち上げている。地上の電波を拾いまくる衛星だ。

■さてどうなりますかなあ【2011-12-29作文】
一。
 Greg Miller 記者による2011-12-28記事「Under Obama, an emerging global apparatus for drone killing」。
  イラクでは RQ-1 Predator は Balad Air Base などから運用されていた。

 ステルスUAVによる偵察や、プレデターによる爆殺。この作戦を統御している秘密のセンターが、米国の東部のどこかに2箇所ある。また米本土南西部には、遠隔操縦拠点がある。また少なくとも6ヵ国の外国の領土内に秘密の作戦基地がある。

 CIAと空軍は、イエメンなどでは統合作戦本部を置いているが、それぞれ別な「キル・リスト」を持っている。人物が重なるのは一部で、過半は重ならない。
 すでに彼らはドローンを使って他国領内で、3人の米国市民を殺害した。うち2名は、アルカイダの一員だろうという容疑でだ。

 ドローンは、クリントン政権時代から使われている。

 George W. Bush 大統領時代、テロ容疑者を外国領土で拉致して秘密の留置場に監禁して拷問するというやり方が内外世論の大不評を蒙った。それに対してプレデターによる裁判なしの爆殺に文句を言う声は小さい。ますますこの方法こそはオバマ政権から愛されるはずだ。

 全世界にこのドローン基地を配備しとけば、いつでも地球のすみずみで、殺したくなった容疑者を空から殺せるわけですが、わが政権はそんな目標は追求していませんよ、と政府高官は言う。

 オバマが大統領になった2009時点で、秘密のプレデター作戦が展開されていたのはパキスタン領内においてのみであった。その攻撃回数は44回、死者は400名だと、New America Foundation は言っている。
 この数値、オバマ政権下では、すでに攻撃240回に達しており、それによる死者も、1600人を越えたであろう。

 もっとも新しい数値。Congressional Budget Office によれば、いま、775機の Predatorsと Reapers ならびに他の medium- and long-range drones を米国は保有している。

二。
 Seth Robson 記者による2011-12-28記事「Japanese, U.S. troops to train each other in hand-to-hand combat」。
  キャンプ座間で U.S. Army Combatives tournament が開催された。米陸軍の徒手格闘競技大会だ。


 徒手格闘のことを、米陸軍では U.S. Army Combatives と呼んでいる。
 朝霞駐屯地自衛隊体育学校徒手格闘教官たちと、彼らは交流を予定している。

 朝霞の学校長の Makato Hatanaka 少将は、10月に U.S. Army Combatives class を見学している。
 そして、互いに若手教官を交換国内留学させることになった。

 米陸軍教官たちがいちばん知りたいこと。日本軍人は、「殺さない技」から「殺せる技」へのエスカレーションをどの段階で許容しているのか。そのルール・オブ・エンゲージメントを知りたい。

 ※武術道場が表向き永遠に秘密にする部分。柔道の蟹挾みや相撲のサバ折りのように「怪我させやすい技だから使ってはいけない」というアマチュア向けの公式ルールが作られてあるなら部外者は納得しやすいが、それがないにもかかわらず、相撲の「河津掛け」のように公式試合では互いに暗黙の禁じ手にする、あるいは相撲の小手投げのようにほどほどに加減をしてやれよという暗黙の合意があったりする。これが明瞭に言語化されていないことに、外人の研究者はすごくイライラしているはずです。「ルール・ブックになんで明記しないんだ? すればいいじゃん」とね。