ウッドフォード氏会見ライブ

【ウッドフォード氏会見ライブ】
http://www.sankeibiz.jp/business/news/111125/bsc1111251425019-n1.htm
 オリンパス損失隠し問題で、不正を追及して社長を解任された英国人のマイケル・ウッドフォード氏が25日、解任後初めて同社の取締役会に出席、疑惑の全容解明を求めるとともに、経営陣の刷新を求めた。ウッドフォード氏は続いて午後零時半から、東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見した。

《ウッドフォード氏は開演まで、にこやかな表情で関係者と談笑。会見は予定より6分遅れて、12時36分から始まった》

《冒頭、関係者によるオリンパス問題の経緯説明などが行われた。ウッドフォード氏の講演は12時42分から始まった》

 「アメリカ大統領ではないが、演台から話す(秘書など関係者の紹介を延々と続ける)。置かれている状況は奇妙な状況。私はビジネスマンで、電子機器の会社を経営すると思っていた。しかし、ジョン・グリシャムの小説のようにFBIにあったり、取締役会での攻撃など奇妙な経験した。刺激はたくさんある」

 「今回の問題は、1年前から始まった。菊川さんに呼ばれ、次の社長は君だといわれた。『マイケルには会社を変えられる。オリンパスで一番利益をあげているのは、私が担当していた欧州だ』といわれた。すぐに『はい』といった。やはりこれから、オリンパスに対して、何かを正したいと思っていた。チャンスが来たとして、はいといった。その後、妻に電話した。(ホテルの)パークハイアットに行く途中に電話して、次の社長になるといった。これを受けて、妻が泣いた。うれしくてではなく、怒っていた。何でそんな仕事を引き受けたのか、と。わたしたちは経済的に自立して、子供も2人いるのに、なぜ遠いところで仕事する必要あるのかといわれた。彼女は涙を流していた。こうした状況になるとは思っていなかった。15人くらい取締役がいる中で、社長になった」
 「ただ、日本の事業は販管費が高く、20%くらい削減できると思っていた。たとえば、この20%を削減することができれば6億ドルの会社の利益があがるため、経費を下げる必要があった。私は、その仕事に着手して、楽しんでいた。そうした流れを(経済情報誌の)ファクタが壊した。7月20日のファクタで、5ページに渡り(損失隠しに関わる)特集記事があった。その記事をEメールで受け取った。同僚、友達から受け取った。これは信じられない、考えられないことだと思った。」

 「そして29日に取締役会があった。日曜日に温泉に、仲のいいビジネスマンととともに行った。その時に、記事の翻訳をもってきてもらい、これは真剣に受け止めた方がいいといわれた。私は英雄でなく、ダライ・ラマとは比べようもない。そして、月曜にこの記事を会社の同僚に見せたが、会社では何も言われなかった。取締役会でも見せたが、菊川剛(元会長兼社長)に、知っているが、これは見せるなといわれたといわれた。何でそんなことを言うのか。こうしたことを隠すのは変だと思った」
 「さらに火曜日になって、会議を開くことになった。細かいことを覚えているが、森さん(前副社長)と菊川さん(前会長兼社長)とすしを食べた。そして、その場で、(経済情報誌)『ファクタ』を見せた。その時に部屋の空気がガラリと変わった。日本のこと分かっていないといわれた。いらっとしたことが分かった。私は何でこの件について翻訳がなかったのか。海外でIRをしたときになぜ、誰も言わなかったのか。この記事の内容は深刻では、と言った」

 「菊川さんは、忙しいから気にすることないといわれたが、とても重要だと菊川さんに言った。その後、菊川さんが、ランチミーティングを取りやめやめようと、席を立つときに、この記事は合っているのかと問うと、菊川さんは『ほとんどね』と言った」
 「ファクタの記事は、為替レートにすると、3つのとるにたらない会社に8億ドルが支払われていたということだった。1つは、化粧品の会社。オリンパスのような、これだけのハイテク企業がなぜ、化粧品のクリームの会社を買うのか。この会社は実在する会社で、クリームは1つ15ドルで売っていた。だが、実際にクリームを妻に渡したが、優れたものではなかったということだった。欧米の化粧品会社と競合するものではなかった」

 「このほかに、電子レンジの調理容器の会社、もう1つ資源リサイクル会社を買収していた。それと並行して、オリンパスは、英医療器具会社ジャイラスを、20億ドル相当で買収していた。正当な企業価値に対して100倍の金を払った。そして、報酬として600億円相当が助言会社に支払われていた。この件は森さんに聞いた。ジャイラスの報酬について、実は7億ドルということで、何で支払ったのですかと、私は聞いた。そしたら、優先株だと答えた。なぜ優先株かと聞いたら、森さんは黙り込んだ」

 「国内非上場の3つの会社の件についても聞いた。ばかげていると聞いた。しかし、森さんは、たくさんの企業がこの会社を買収したいと思っていると言った。だが、ファクタの記事を参照したら、何も言わなくなった。電子レンジ容器の会社については、糖尿病の患者にいいといわれた。なぜ電子レンジでチンすると病気にいいのかワケが分からなかった。私は怒りを覚えて、森さん、誰のために仕事しているのかと問いただすと、森さんは『菊川さんに忠誠心を感じている』と言った。オリンパスのトップで変なことがおきていると痛感した」
 「そこの場を逃れたい気分だった。すぐに辞任した方がいいと思った。仲間と思われたくなかった。事実を追求した方がいいと思った。8月の最後の2週間、休暇を取ったが、休暇中もこのことが頭を離れず、2つのことが頭をグルグルと回っていた。国内非上場会社とジャイラスに対する総額15億ドルの支払いについて、だ。オリンパスは年間4億ドルの利益しかないのに、この支払額に対して、かなりイライラした。変なことが起きていると思った。9月22日に日本に戻ったが、ちょっとリラックスした時に、ファクタが続報を出した。詳細が含まれていた」

 「非常に、細かい話や反社会的な会社のことが書かれていた。それを見て、何かしないといけないと思った。巨額な資金が流れ、奇妙なことが起きていると思った。森さんにまず書簡を書いた。8ページに及んだ。取締役会にもCCで送った。3つの国内企業と、ジャイラスの買収報酬、ITXなどたくさんの奇妙な会社について書いた。細かく検討されずに行われていない買収案件があったので、そのうちの2つに焦点あてて調べてくれといった」
 「金曜日に私が出張した際、夜11時にその書簡を出して、返事も来たが、2009年の段階で第三者による評価が行われたので問題ないといわれた。土曜日、不安な気持ちのまま迎えた。森さんに不十分な答えといった。その後、3回目の書簡を書き、月曜日に『がっかりだ』とする菊川さんのコメントが、森さんから返信されてきた。この件については、(会計事務所の)アーンスト&ヤング(E&Y)にCCでメールした。外部に対しても透明性を保ちたかったからだ。それは受理された」

 「私の主張内容が取締役会以外にE&Yにも届いたと喜んだ。私の書簡に対して、十分な情報が得られない場合、次の金曜日の取締役会で報告するといった」

 「私は、外国人社長として、就任後、マスコミに取り上げられ、ヒューマンストーリーとして注目を集めた。しかし、この会社には、企業統治に大きな問題あるので、明確な結論が得られなければ、辞任するとまで書簡の中で書いた」
 「私は、社長就任前に、菊川さん(剛前会長兼社長)から、CEO(最高経営責任者)になると聞かされた。しかし取締役会の人事を決めるのは菊川さんだと後から聞いた。私は、あやつり人形に過ぎないと認識した。CEO、社長になれば、組織のナンバーワンとツーに対する任命権があると思っていた。私が人事を決められれば、この問題を解決できると思っていた。これで(損失隠しを主導した)菊川さんと森さん(久志前副社長)を解任できると思った。ただ、私の人事が決議された取締役会で、私はCEOになったけど、実際に会社を動かしているのは、菊川さんら(日本人経営陣)だと気付いた」

 「私は会社の不正について調べてもらうため、(大手監査法人の)プライスウオータークーパース(PwC)に電話して、英医療器具会社のジャイラスに対して支払われた7億の報酬について調べてほしいと伝えた。PwCにオリンパス社長として、依頼した。これは、私の権限の中で依頼したものだ。PwCからは、調査には1週間待ってくれといわれた。翌週、水曜日に日本に出張から戻り、PwCの調査報告をを菊川さんのほか、すべての取締役、弁護士、E&Yに出した。さらに森、菊川の解職を求めた」

 「PwCのレターは30ページの文書だった。これには説得力があった。しかし、ここまで踏み込んだことで、ここで、やめるかもしれないと思った。レターをメールで送った後、朝1時に起き、Eメールを開いた。すると緊急取締役会を開くという内容のメールが届いていた。ガバナンス(企業統治)の深刻な問題を話し合うということだった。この時点で、自分は解職になると思った。もし、菊川と森さんが自分の解職の要請を受領するなら非公式に合うと思っていたからだ」
 「私は70歳の男性(菊川氏)がおとなしく、静かに去るかと思ったが、私以上に何か恐れているとして、抵抗した。会社には9時に到着した。私の横には森さんが座っていた。菊川さんの席は空いていた。9時2分過ぎに時計を見た。周りを見るとそわそわしていて、誰も目をあわせなかった。森さんから『マイケルさん、東北の出張はどうでしたか』と聞かれた」

 「私は『森さん、駆け引きをしないでください』と言ったら、森さんは急いで、菊川さんを呼びに言った。最終的に9時7分過ぎ、菊川さんが自分のいつもの席でないところに着席した。菊川さんは、今日の議題となっていたM&A(企業の合併・買収)の議題はキャンセルされたといった。海外では、取締役会の場で、キャンセルするのは会社法に違反するが、日本ではそうではない。この議題はキャンセルされた」

 「議題を見ると、1という項目にはウッドフォード氏を解任するということが書かれていた。ウッドフォードが利益相反があるというのが理由だった。挙手が求められたが、私を除く全員が挙手した。勢いよく挙手した。小学校の授業のようだった。考える時間もなく、その前に決まっていたと思った。取締役会が一致団結していた。また、ウッドフォードを世界の関連企業の取締役からも解任するという議題2に対しても全員が挙手した」
 「会議は9時15分に終わった。実際のところ、会議では、何人が手を挙げて、賛成したかも数えてはいなかった。会議終了後、財務担当役員が急いで会場を出た後、笑みを浮かべていたが、居心地が悪そうだった。過敏になっていた。こういう解雇には暴力的になる人もいる。ただ、ニコニコしながら、私の近くにきて、私が2つ持つ携帯のうちの1つ、ギャラクシーを回収された」

 「解任された後、反社会的勢力のことなどが心配になった。15億ドルの説明が付かない資金がケイマン諸島に流れているのが心配で、手が震えた。この日の10時にオリンパスが記者会見した。記者に私は(オリンパスの不正が書かれた)ファイルを渡した。記事としてぜひ、取り上げてほしかったからだ。私は非常に心配であったし、不安だった。ジャーナリストにとっては素晴らしいストーリーなので書いてほしいと思った」

 「私はタクシーに乗って、羽田空港に向かった。キャセイパシフィックのビジネスクラスシートだった。私の嫌いなトイレの隣だった。ひどい1晩をすごして英ヒースロー空港に到着した。すると、私が渡したファイルを基に新聞の1面に記事が取り上げられた。ブルームバーグ、ロイターでもカバーされた。1週間後には日本の記事でも取り上げられた。それ以降のストーリーはご存じの通りだ」
《興奮気味のウッドフォード氏の冒頭の説明は40分以上に及んだ。質疑応答がようやく始まった》

 −−高山修一社長の次の社長は誰か、あなたはすでに、社長になっていいと言っている。もし株主が了承すれば、社長に戻っていいと言っている。この会社の中で友好に仕事できるか。オリンパス関係者と話すと、反感もあると思うが

 「はっきりさせたい。絶対に戻りたいと固執しているわけでない。私は、不正に解任されたわけなので、法的には何ら(社長に復職しても)問題はない。しかし、戻らなくても結構だ。呼ばれれば戻る。私はこのように記者会見を開いているが、このような事態が8週間も続いているので、家族と穏やかに過ごしたいという希望もある。オリンパスの社員として、仕事の40%を日本で費やした。菊川さん(前会長兼社長)、森さん(久志元副社長)との合意の下に、オリンパスをグローバルカンパニーにすることが目標だった。米国のビジネスをきちっと行えば1億ドルレベルで利益が上がると今でも思っている。(オリンパスの復職を求めて署名を求めている)宮田耕治元専務のような活動もある。また、日本の方々がこんなひどい目にあわされておかしいということもある。ただ、サポートしてくれる同僚もいる。オリンパスのスタッフとの問題もない。問題どころかサポートしてくれる人が多いと実感している」
 −−今思うと、この問題は早期に当局に持ち込んだ方がよかったのでは

 「私が当局にいっていたらどうなっていただろうか?もし、日本の当局に直接、持ち込んだなら、十分な対応をしたと思う方は手をあげてください。5人くらいですか? では、国際的メディアに持ち込んだ方がいいと思う方?(多くの記者が挙手する)。内部で6つの書簡を取締役に出した。無視するだろうと思った。その結果、解雇されると思っていた。検察、警視庁がより扱いやすい事件の形にした上で、行動をとれたと思う。メディアでストーリーを知らせた。日本では、株式持ち合いやスキャンダルがあっても波風を立てないというルールがある。直接、当局に訴えていたら、取締役も代わっていなかった」

 −−もともとは誰かの内部告発

 「内部告発です。その人は勇敢です。私は51歳、子供も大きく、銀行預金もある。それだけに今回の内容は記事にしやすかった」

 −−全体的な会計事務所の変化があったが、40年くらい同じ会計事務所使っていた。その段階で、何か変なことは起きていなかったか

 「2009年にKPMGから監査法人がアーンスト&ヤング(E&Y)に変わった。取引についての変更ということで心配はしていなかった。E&Yは信頼がおける。ですので、監査法人の変更が何かを意味するとは思っていなかった」
 −−さきほど、解任の際に、財務担当の方がニコニコしながらやってきたと言った。なぜ笑みを浮かべていたのか。日本の人は追いつめられると笑みを浮かべることがあるのか

 「確かにそうかもしれないが、私はよくその方を知っている。とてもよく知っているので、彼は自分が何をしていたか知っていた」

 −−(2000年に買収した携帯電話販売などを手がける)ITXに対する疑いとは何か。野村証券との関係で調査は必要か

 「このような会見にオリンパスにも参加してほしいものです。彼らが十分な話をしないからです。まず後半部分から答える。野村との関係だが、何も分からないのでコメントできない。ITXについては相乗効果のない会社。これについては、ロイターも言っている。オリンパス自体が認めているが、まさに価値のない会社。2006年−08年に買収した調理器具、廃棄物リサイクル、化粧品という国内の3つの非上場会社を買収して、損失を隠していた。その会社の価値を示す評価通りの額でなく、巨額で買収している。東京の検察当局、証券取引等監視委員会とも話したが、こうした企業の法定監査人はどこか、外部監査はどこかといった疑問はたくさんある」

 −−不正を訴え出たことで身の危険を感じたということだが
 「以前より安全だと思う。クロールという法的な情報の監査を行う会社も関与しているからだ。ただ、これ以上、私から話せることは何もない。誰かを刺激する利害関係者はいない。資金がどこに流れたかを調査すれば、もっと犯罪性があったか明確になる」

 「組織犯罪は日本では特別な意味を持つ。決定的な証拠はないが、巨額な金が流れたのは事実。疑惑の多い取引、損失を隠すために会社を設立するというのは違法だ。誰がそれを行い、何人で行っていたか分からない。組織犯罪であれば、ひどいことになるが、現時点では証拠がない」

 −−オリンパスは買収前に企業価値を計る「デューデリジェンス」をしていたのか

 「確かに疑問に思うのは当然の会社だ。何かが間違っていた。評価は不正だった。デューデリジェンスは誰の責任か。国内非上場会社3社を6億ドルで買収した後、初年度に556億円分が償却された。2つの会計事務所がかかわっているので、質問すべきだ。なぜ20年も損失が隠され、特徴を持つ会社を過大評価して買ったかを調べるべきだ」

 「聞いたところでは、グローバルの企業にデューデリジェンスを依頼したとされる。オリンパスの投資を見る会社に依頼したということだが、後から法定に出してもいいような見直し、確認というのは誰がしたのかという疑念はある」
 −−高山社長の立場は、菊川氏の代わりに発言しているだけなのか。それともあなたが解雇されたのは不適切だったと言っているのか

 「高山社長は菊川さん(前会長兼社長)が辞任したときに信憑性を失った。7億ドルの助言料がケイマン諸島を経由して支払われたことは適切で、買収額も適切といった。ヨーロッパなどでこんなことをいうとキャベツを投げつけられただろう。私の経歴を見ると、分かっていただけるが、(解任の)2週間前にCEOに任命されていた。菊川さんに不正を突きつけたことで役目を解かれたのは明白だ」

 −−あなたの発言には、取締役らに脅しをされたという事例が含まれている。非合法的な行為があったと思うが、それを実行した人は、やくざなどに脅されてそれをやっていたと思うか
 「彼ら自身が何かに恐怖を感じていたかのように思ったことはある。そういう疑念はあった。不正なやりとりが明白になってどうなるか恐れていたということはあるだろう。ただ、やくざが関与していてそれを恐れていたとは思わない。総会屋もいなかった」

 −−菊川さんはあなたのことを好きといった。企業文化にも理解していると言っていた。どうやってオリンパスを再建するのか

 「私はオリンパスの企業文化を壊した。再建をどうするかは、何十億ドルも不正な資金を使っている人のそれを問うてみてください。彼らはかなりの資金をナンセンスな会社に投じた。私がCEOなら、正直さを信じるでしょうか。私は、メディカルビジネスで利益を上げてきた。株主などに復帰を求められれば応じるが、会社をきれいにするということで、私の役割は終わったと思っている。社長に相応しい人がいて、株主もそれを望むならそれでいい。高山社長は将来的に辞任しないといけないと自覚していると思う。

 −−オリンパスの不正で何が一番問題だったのか

 「菊川さんがトップだったこと。過去の有価証券の取引を隠していたことが問題。状況は100倍くらい悪くなっていった。リーダーシップが問題だった」
 −−今でも取締役会のメンバーだが、オリンパスは独立の会社として維持できるか

 「オリンパスのビジネスは優良。キャッシュフローもある。意味のない取引をやめれば、内視鏡、医療機器がある。画像ビジネスが赤字を出していても、銀行が支持してくれれば−支持してくれると思うが−、維持はできる。価値のある資産も持っている。オリンパスの工場は生産を続ける。上場廃止は起こらないと思っている、上場廃止になれば、会社の社員にとってもひどいことになる。当局の調査は続くがその中でも、オリンパスの上場は続く」

 −−なぜ自分が社長に選ばれたと思うか

 「非常に面白い例だと思った。ヨーロッパの社長をしているとき、2件の不正を告発した。それだけに、今となればなぜ菊川さんが私を指名したのかは分からないが、菊川さんが必要だったのは、フリーキャッシュフローを出して、利益を出す人間だった。利益を回復させたあとに、森さん(前副社長)が社長になるという筋書きだったと思う」
 −−今回の騒動で株主価値が崩壊した。不採算部門を売却するという考え方は

 「私は左派。無駄とか不正は受けられない。ビジネスマンとしては、ロマンを忘れてはいけないが、きちんと利益を求めていかなめればならない。私はカメラ事業の販管費をかなり抑えた。オリンパス製のレンズは顕微鏡にも使われている。化粧クリームとか不正なものを無くす。オリンパスで問題だったのは、新規ビジネスを始めるとき関係のないビジネスを始めたということ。顕微鏡は、オリンパスにとって非常に優良。ポートフォリオの再編が必要だ」

 −−日本の財界全体をオリンパスの不正で下げてしまうことは不公正と思うか。同じような不正をしている会社がほかにもあると思うか

 「日経平均株価が下がっていることを私のせいにしたいようですね。ヨーロッパ、米国でもいろいろなことが起こっている。すべての日系銘柄がオリンパスのようだとは思わない。これは非常に極端な事件。野田首相が『日本はほかの資本主義と同じ』といったのはよくわからないが。日本の株主は発言しない」
 「さらに、日本には独特の慣習がある。それが株式の持ち合い。それぞれ5%の株をもつことが可能になっている。不文律として、それを売らないということ。海外であれば、こういったビジネス上の関係は特異だ。日本は活力のある経済にし、景気を活性化しないといけない。たくさんの優良な会社はあるが経営陣がよくない。日本では株式の持ち合いがあるから経営陣の交代が起きない。株式の持ち合いを解消することを恐れるべきではない」

 −−今日の取締役会に行くときと帰るときの気持ちを

A、行く時は、マスコミに囲まれ、ガードマンにズボンを引っ張ってもらってようやく中に入ることができた。2人の弁護士と一緒に行った。菊川さん、森さんは辞任したのでいなかったが、取締役会には緊張感があった。高山社長が昨日発表したが、既存の取締役が退陣するといった。将来のことについては同意ができたと思う。上場廃止は間違っているといった。四半期報告を14日までに出して、上場廃止を食い止める。将来は、新しい取締役のもと、オリンパスは新しい1歩を踏み出す。生産的な会議だった。少し勇気づけられた」

 −−プロの社員が医療機器を作っている。社員の人は会社を辞めていない。中国の会社のヘッドハントもない。社員へのメッセージはあるか

 「技師、エンジニアリングがオリンパスの長所だ。いまも手作りで製品を製造している。これが長所。弱いのは会社だ。いろいろな人とも話をしたし、草の根の人とも話した。『あなたたちが大事です』と。だから、私はここに戻ってきた。社員のためにこういうことをしている」
 −−リポートをもらう前の菊川氏(前会長兼社長)と森氏(前副社長)との関係は。これまでに文化的な違いを感じることはあったのか。なぜ今、ここに戻ってきたのか。あなたはマゾか

 「私はマゾかと思う(会場に笑いが起こる)。菊川さんは魅力もあるし、スマイルもいいなと思った。ヨーロッパで実績を挙げた経歴を見て社長に選んでくれたのだと思い、忠誠も感じた。いい人物だと思った。森さんは内気で、知性があった。今回のような暗い部分があることはまったくわからなかった。就任パーティーでは、大々的で700人が招待された。非常に丁寧な扱いを受けたと印象を持ったが、先頃のランチミーティングで、菊川さんと森さんがすしを食べ、私の前にはツナサンドが用意されたとき、そういう意図がなかったにせよ、彼らは保身に走っていると感じた」

 −−上場廃止しないことは適切か

 「組織犯罪と関連がある場合は、上場廃止は適切だろう。それ以外はどうか。重要なのは、過去の不正をただすこと。上場廃止となる必要はない」

 −−日本の電機業界について
 「日本は、消費者家電という意味では韓国に後れをとっている。企業統治、企業家精神としては、1回始めたことをやめることが難しい風土がある。日本の経営者はどこで利益が出るかに特化すべき。もっと厳しく評価して特化すれば、過去と同じように輝きを取り戻すだろう。製造部門は選択と集中をすればよい。赤字ならそこにリソースを投入する必要はない」

 −−外国人が日本のリーダーシップをとったほうがいいか

 「私が戻ってきたのは、オリンパスの不正をただすため。木を揺らしたら、猿が落ちてきて、その中にゴリラもいた。私が社長を務めた会社は、ヨーロッパで、働きたい会社に2回表彰された。私には会社を経営して働きやすい職場を作ることはできる。だた、日本が挑戦する人を求めているのなら、そういう人を起用すべき。日本では、取締役会でもすべて根回しで事前に決まっている。私と会ったこともないのに、会議の前にすべて決まっているのだ」

 −−日本語を勉強する意志はなかったということだが、取締役会で、日本語を使ってだまされるとは考えなかったのか

 「日本語を話さなくても、仕事をしている人はいる。日本語を話したとしても同じような指摘をして、同じように損失隠しを発見していた。言い訳をするとすれば、イギリス人は、世界で最も語学が下手だ。私の妻はスペイン人、家族はイギリス人だけではないが、私は語学が苦手だ。海外では、イギリス人でもアメリカ人でも、韓国、ブラジルの人だって社長になる。言語は1つの要素だが、それがすべてではない。本当に優秀な人が社長になるべき。学ぶということは大事だが、それがすべてではない。日本語を話すからといって、世界のトップとなっている人はいない」