山崎元のマルチスコープ
【第201回】 2011年10月5日
山崎元
「富裕層」のお金は、“正しく”逃げているか?
http://diamond.jp/articles/-/14299
(略)
 記事によると、富裕層を不動産を除く金融資産を1億円以上持っている世帯と定義すると、金融資産が1億円から5億円までの「富裕層」が84.2万世帯で合計資産額は189兆円、5億円以上の「超富裕層」が6.1万世帯、合計資産額が65兆円にのぼるという(「週刊ダイヤモンド」、以下同じ。p37)。お金持ちは、いるものだ。
(略)
 特集号で取り上げた個別の運用会社を批判しているのではないが、例えば記事の40ページにある「リスクを取ってハイリターンを追求」、「運用に積極的な富裕層の資産ポートフォリオ」として紹介されているポートフォリオを見ると、顧客(カモ)が「プライベート・バンク」などと名乗る金融機関にどのように貢献しているのかが分かってくる。

 この例では、「先物ヘッジファンド」が40%に「新興国債券」・「アジア株」・「先進国債券」・「資源株」がそれぞれ15%の配分となっている。株式が通常のアクティブファンドの投資信託並みの手数料(販売手数料2〜3%、信託報酬年率1.5%〜2%)であれば随分高いし、ヘッジファンドは成功報酬も含めて「手数料の塊」なので、この顧客が実在するとすれば、たぶん、年間で長期金利の2、3倍の手数料を落としているのではないか。

 金融の世界では「丁寧なサービスは、大変高くつく」ということを覚えておく必要がある。

 尚、このページで紹介されている、ある外資系証券のプライベートバンキング部門の資料によるとされる「保有資産の規模別の運用傾向」(作成は富裕層ビジネス研究会)の傾向は面白い。

 資産額が大きくなるほど、目立って「債券」の運用が増えて、リスク資産の比率が小さくなる。
(略)
 他人にお金を預けて、無事に儲ける、ということは実に大変なことだ。