自閉症は1%

ぜんぜん中身がわからないけど、効率が落ちているのだから入力を増やせばいいことはわかった。
しかしこの治療プログラムを全自閉症児に行うのは物理的に無理だろう。
そうなると親が医師役をできるようになるしかない。
それで教育マニュアルか。

エディターズ・チョイス
2011年9月9日
中野良顯
http://diamond.jp/articles/-/13938
110人に1人が自閉症と診断される時代に123有病率が今や110人に1人と言われる自閉症。その治療法の開発に生涯を捧げ、重要な成果を上げたイヴァ・ロヴァスをご存知だろうか? その集大成となる著書『自閉症児の教育マニュアル』を邦訳した中野良顯・東京成徳大学大学院特任教授が、ロヴァスの仕事と人間を語る。
(略)
 ロヴァスは、「治療密度」(トリートメント・インテンシティ)という変数に着目し、それが治療の成否を決定する最も重要な変数の1つであることを実証した。治療とは患者さんが週1回クリニックに出かけて、1時間程度診てもらうことである、これが私たちの常識である。ところがロヴァスの方法は週1時間どころか40時間もの高密度治療を早期に最低2年以上適用するという型破りなものだった。
(略)

自閉症児の教育マニュアル

自閉症児の教育マニュアル

米国ではデフォルトらしいんだが日本ではタブーなのか?謎だ。

(『わが子よ、声を聞かせて―自閉症と闘った母と子』amazonレビューから)
2才半検診にて我が子が重度の自閉症だということを教えられ、それが一体どんな病気で、そしてどう対処したらよいのかを模索しだしてはじめて、それが病気ではなく障害であり、生涯治癒しないのだということを知りました。そしてあらゆることを大変なスピードで貪欲に学び、方々に働きかけ、結果として、例えることも出来ないような絶望の淵に立たされることになりました。そんなときです、この本に出会ったのは。この本には、自閉症児の親にとって、今日なお容易にならないが見逃すことの出来ない1つの問題、「行動療法」というタブーが提示されています。ロヴァースの行動療法の資料は、日本での権威からの誹謗のためにもはや手に入らないのです。そして専門家に行動療法を相談すると常に受容の問題にすり替えられてしまうという現実。私たち夫婦はまず、この本の付録をもとにカードをつくり、自分たちでそのマネゴトを真剣に、ほんとうに真剣にすすめ、自閉症児への「入力」の糸口を得ることができたのです。そうこうしているうちに東大の図書館でロヴァースの件の本を見つけ全ページをコピー、そうした些細な手掛かりをもとに、協力や理解を得られることのないまま数年を積んでいきました。重度のまま小学校へ入学することとなった我が子は、会話はおろか、しゃべることすら未だ出来ないままでしたが、この時点ですべての身辺自立は身についていました。これをアンバランスだと言われればそれだけのことですが、どれほど算数の計算が出来ようと、漢字を覚えられようと、人とまじわる「糸口」が備わらなければ、それではヒトは生きていけないのではないかと私には思えるのです。この本により促されたことの答えは、この子が一生かけて見いだすべきこと。短絡的な回答は得られないものです。ともあれ、この本がすべてのはじまりであったことは事実であり、ひとりの自閉症児の人生にとって重大な意義をもった本であることには間違いありません。

ナチュラル―これがロヴァース法批判の一つのキーワードでしょう。ケーゲルの基底反応訓練は、極力日常場面に近い場面で行われます。また、身の回りで自然に起こることを学習機会として活用することを推奨します。
http://www.yahata-sinri.com/index.php?ABA%E5%86%85%E9%83%A8%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E7%95%B0%E8%AD%B0

幼児期の療育を考える(17)
自閉症児の療育に高い効果を上げることができるABA(応用行動分析、行動療法)ですが、より細かく見ていくと、ABAと呼ばれる自閉症児むけの療育プログラムにもさまざまな「流派」があります。

特にここで触れておくべきだと思われるのは、ABAに基づく療育法の中でも、週20〜40時間、2年間以上という極めて高密度な介入を2〜3歳という幼児期に行なう「早期集中介入」とか「高密度介入」などと呼ばれる手法です。
この手法は、今から20年あまり前に、アメリUCLAのロヴァース博士によって開発された手法であり、その名をとって「ロヴァース式」「ロヴァース法(メソッド)」などと呼ばれたりもします。
現在ではいくつか派生系の療育法も存在しますが、どれも、3歳以下の自閉症児を主な対象として週20時間以上という長時間のABA療育を行なうという共通点を持っています。さらには、これらの療育法には熱狂的な「ファン」がいて、他の療育法に対して極めて否定的・排他的な傾向が強いということも特徴だと言っていいかもしれません。
このタイプのABAはTEACCHに対して明確に否定的な立場をとり、「普通の環境」の中で、子どもをできる限り「普通」にするという、TEACCHとはまったく逆の目標を設定するのが一般的です。

この療育法に効果があるのかないのかと聞かれれば、恐らく効果があるだろう、とは言えるでしょう。科学的に効果の実証されたABAを採用して長時間取り組むわけですから、効果がゼロということは考えられません。
問題は、週20〜40時間という途方もない長時間の療育のコストに見合うだけの「劇的な」効果があるのか、それだけ長時間の療育プランを誰が組み立てるのか(小中学校の数年分の指導要綱に匹敵するボリュームですから、率直に言って素人に組めるとは考えにくいです)、さらには子どもの側のストレス、そして療育する親の側の心身・金銭面での負担と挫折のリスクなどについてどう考えるか、といったことでしょう。

実は、早期集中介入が、一般的なせいぜい週数時間から10数時間程度の療育に比べて、明確に優れているということは必ずしも確認されていません。
「毎日1時間より毎日5時間のほうが効果があるだろう」という相対的な量の効果を超えて、早期集中介入の支持者が主張しているような「集中的な療育によって、初めて療育効果に『質的』な違いが生まれ、自閉的な症状がほとんど消える場合がある」といった素晴らしい効果については、ロヴァース本人の研究以外ではほとんど確認されていないのが現状です。
また、ロヴァース式の早期集中介入で一般的に行なわれる「ことばのトレーニング」として、動作模倣から始まり、音声模倣、音声によるマッチングなどを順に訓練し、最終的に「欲しいものをことばで要求する」という行動ができるように進めていくやり方が知られています。ただ、このやり方は、後で紹介するPECSなどと比べると、ことばのコミュニケーションとしての機能への配慮が不十分で、やり方として稚拙だと言わざるを得ません。そういう意味では、ロヴァース式ABAで用意されている「療育メニュー」は、20年の時を経て少しずつ古臭いものになってきている事実も否定できないでしょう。(ただし、この辺りのやり方を改善しているABAの流派も存在します。)

これらの問題と現状をふまえると、「早期集中介入」は、少なくとも誰にでもすすめられるものではなく、親御さんの熱意が非常に高く、長時間の療育をこなしてくれるスタッフが確保できて(金銭面も含めて)、療育効果がせいぜい通常の療育の数割増しといった「量的なもの」に留まってもやむを得ないという心の準備ができていて、トータル数千時間の療育プランを立てられるようなABAのプロのサポートが受けられて、かつ子どもが超ハードなABAのトレーニングを楽しく受け入れてくれるような状態が認められた場合に限り検討すべきものだと考えられます。
また、いくつかの研究からは、このような早期集中介入は、どちらかというと知的な遅れの小さい、一般に「高機能」と呼ばれるような自閉症児に対してより効果的である可能性が指摘されています。この辺りもあわせて考慮すべきでしょう。

これらの条件をすべて満たすケースは、実際には極めてまれではないでしょうか。
現実的な選択としては、「早期集中介入」というアイデアのうち、「『早期』介入」には意味があると認めたうえで、週20時間、40時間といった時間(「集中」介入)には必ずしもこだわらず、親も子どももストレスなく実施できる量の療育を継続的に続けていくことを考えるべきなのではないかと思います。
いわゆる「ロヴァース派」からは、長時間やらないABAは無意味だと主張されていますが、これは恐らく、TEACCH的な構造化など、ABAによる介入以外の工夫をまったく考慮しない状態での比較でしょうから、一般原則とまでは言えません。
そして、学習に関する一般論からいえば、どんな量のABAであれ、やらないよりはやったほうが効果があることは間違いありません。
http://soramame-shiki.seesaa.net/article/25581910.html