フジテレビ、韓流偏重抗議デモに思う

大手メディアでちゃんと記事になったのってコレが初めてではないか?
是非は兎も角1万人になんなんとするデモが行われたのに報道されない。
マスゴミ村の腐敗堕落のほうに驚くわ。

中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス
フジテレビ、韓流偏重抗議デモに思う 日中韓パブリック・ディプロマシーの実力
福島香織
2011年8月24日(水)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110822/222185/
(略)
 フジテレビが意図的に「韓流」番組を多く流し、偏重がひどいとした抗議デモが21日、フジテレビ本社がある東京・お台場であった。6000〜8000人ほど集まったという。8月7日にも2500人規模のデモがあった。
 
 私はあまりテレビを見ない方で、フジテレビがそんなにK-POPや韓国スターばかりを持ち上げているとは気に留めなかったが、デモが起きると言うことは、そう感じている人がやはり少なからずいるということだろう。
 
 もっとも、フジテレビの方は、この程度のデモは歯牙にもかけていないらしく、抗議文書の受け取りも拒否している。大多数の日本人はやはり、韓流好きで、フジテレビを支持してくれるという自信があるのかもしれない。ちなみに、私の親友の母君も韓流ドラマ好きで、今日は韓流ドラマがあるから、という理由で、友人の誘いを断ったり、用事を早く切り上げて帰ったりすることもあるという。韓流ブームを最初に巻き起こしたのはNHKのBS2で放送された韓国ドラマ「冬のソナタ」だが、その時以来の韓流ファンという。
 
冬のソナタ」ブームの効用
 
 このNHKによる最初の韓流ブーム(2003年)の時、私は北京駐在記者だった。当時、北京のメディア研究者やメディア業界人たちが異口同音に主張したのは、「韓国がやったことを中国もできないか」ということだった。というのも、中国から見れば、あの韓流ブームは「パブリック・ディプロマシー(公共外交)戦略」の見事な成功例だからである。
 
 あの「冬のソナタブーム」で、日本人の対韓感情が劇的に改善されただけでなく、大きな経済効果を韓国にもたらしたことは、当時の中国メディア・宣伝当局関係者から見れば、相当の驚きだった。小泉純一郎元首相の靖国神社参拝問題の影響で日中関係が冷え込むなか、こうした一発逆転的の日本の対中世論変化を中国としてもできないのか、と誰もが考えていた。
 
 パブリック・ディプロマシーというのは文字通り、外交機関ではなく、パブリックのメディアや民間の機関、産業などを駆使して、文化・情報発信、留学などの教育、観光などの市民交流を通じて、直接相手外国市民に接触し、自国のプラスイメージを植え付け、相手外国市民の考え方を自国に有利なように変え、その世論の力を借りて相手政府の外交政策を考えさせてゆく手法である。最近では「ソフトパワー外交」とも言われている。
 
 元は社会主義国プロパガンダ(政治宣伝)に対抗し、共産圏の民主化を推進するものとして、米国でかなり研究の歴史があると聞いている。誤解を恐れずにいえば、非常に洗練された“洗脳”と言っていいだろう。
 
そもそも国産コンテンツが貧弱では
 
 日本人が、原爆を落とした米国に対して「自由と民主の国」というイメージを持ち、かくも親近感を持っているのも、戦後のアメリカの「パブリック・ディプロマシー」効果と言っていいだろう。戦後の文化も何もかも焼け野原になった日本に、豊かで自由なアメリカのイメージを大量に送りこんだ。
 
 母に聞けば、銀幕の女優のファッションからアメリカン・ホームドラマに出てくる家電製品に至るまですべてが憧れだったという。私も小さい時に見たアニメの記憶は「トムとジェリー」や「ポパイ」とアメリカのアニメが多い。こういった幼少期から刷り込まれたイメージというのは、簡単には変わらない。
 
 中国では、こういった米国のパブリック・ディプロマシー戦略に抵抗するために、西側文化を廃頽(はいたい)的な有害文化とする国内プロパガンダを打ってきた。しかし、それでも抵抗できないので、「文化侵略」と呼んでハリウッド映画の輸入本数を制限するなどの政策を取った。だが、改革開放の流れのなかで、文化の流入は阻止しようとしてしきれるものではない。
 
 そもそも国産コンテンツが貧弱ではどうしても大衆の心は外国のソフトパワーに奪われる。なので、中国も自国のパブリック・ディプロマシー戦略の研究とソフトパワー(軟実力)開発に力を入れ始めた。
 
 特に北京五輪の開催が決まってからは、盛んにその方面の研究会やシンポジウムが北京で行われていた。中国はその頃、北京五輪を機に、中国の国際社会でのイメージを一党独裁の途上国国家から責任ある大国に変えたい、変えてゆけるとかなり本気で思っていたようだ。
 
中国は“パクリ”は得意だが
 
 中国が取ったパブリック・ディプロマシー戦略でそれなりの効果をあげたのは2004年から始まった中国語・中国文化学習機関としての「孔子学院」の海外進出だ。
 
 それまで西側社会で中国語の語学学校を経営する人の多くは、1989年の天安門事件を契機に国外に出た元留学生などで基本的に反共産主義、反中国の立場で、語学教育とともに中国に対するマイナスイメージを教え込むとして、中国当局は問題視していた。そこで孔子学院を海外に開設し、外国人に語学とともに中国のプラスイメージを教えこむ。ソウル校を皮切りに2010年までに96カ国・地域で332校と分校扱いの教室が400前後できている。
 
 外国のメディアや報道機関、外国人ジャーナリスト、文化人に特権を与えたりして親中的に育て上げ、対外的に中国のプラスイメージを発信してもらう、というのも、エドガー・スノーの例を引くまでもなく、中国当局の得意とするところである。
 
 しかし、やはり、中国に興味を持たない普通の人に、中国のプラスイメージを刷り込むには、映画、ドラマ、アニメ、ポップスといった大衆娯楽の流行に勝るものはない。ただ、これは難しい。つまり、魅力あるコンテンツを作る実力が必要だからだ。
 
 中国はいわゆる“パクリ”は得意としても、国際市場に売り込めるレベルのオリジナルの中国コンテンツを作るだけの実力はまだなかった。戦略としてはかなり研究を重ねているが、実際の戦術を支えるコンテンツ産業が十分に育っていないことが中国の悩みだった。
 
「日本はばかだね」
 
 こんな風に、米国も、中国も、パブリック・ディプロマシー戦略の研究を重ねているのだから、韓国も当然、研究しているだろう。2003年末から爆発的に起きた日本の韓流ブームは、偶然の産物だったかもしれないが、韓国が中国で起こした韓流ブームはかなり戦略的だ。中国の某テレビ局関係者がこんなことを言っていた。
 
 「韓国政府は中国における、韓国産コンテンツの契約外放送、違法コピーなど、すべて黙認してくれている。それは知的財産権侵害による経済損失以上に、中国で韓流ブームを起こすことのメリットがはるかに大きいと認めているからだ。中国人の対韓国人感情を好転させ、市場が韓国を選ぶように仕向ければ、テレビ用コンテンツだけでなく、韓国製品も売れるし、韓国企業の海外進出もスムーズにいき、最終的には対中外交もやりやすくなる」
 
 「日本は反対に、大局的な利益、国家としての利益よりも、企業レベルの知的財産権保護ばかりを気にして、契約条件は厳しいし、コンテンツ使用料も高い。日本のドラマ1本買う金で韓国ドラマが3本買える。日本を優れたコンテンツを持っていても戦略的に生かし切れていない」
 
 そして、こう締めくくった。
「日本はばかだね」
 
 日本は、「クール・ジャパン」という造語で、アニメ、マンガの分野で優れたソフトパワーを自慢しているが、実はそれは国家の政策や戦略とは全く関わりのないところで生まれて発展していった。私自身は、それこそが日本のソフトパワーの自由活達さ、創造力の背景だとも思うが、もうちょっとその力を外交的に利用する狡猾さは、政治に欲しかったところだ。
 
 北京五輪前の2007年、私は清華大学の某教授に、中国のパブリック・ディプロマシーについて取材した時、こんな会話を交わした。
 
 私が「中国はパブリック・ディプロマシーを相当研究している。日本は全然ダメだから、中国に学ばなければ」と言うと、教授は非公式の個人的意見としてこう答えた。「日本は中国よりもよっぽど優れたパブリック・ディプロマシーを展開している。中国のみならず国際社会における日本アニメ、化粧品や家電製品のブランド、J-POPの流行、すべて結果として大きな国家利益になっている。中国の方が日本に学ばなければ」。
 
 そう言った後で、本音が出た。「もし、日本のパブリック・ディプロマシーに致命的な失敗があるとすれば、それは敗戦の歴史のイメージをうまく好転できなかったことですね。あれほどのソフトパワーがありながら、なぜそれができなかったか、不思議ですよ」
 
 こうやって日、中、韓を比較すれば、いまのところ、もっとも戦略的にも戦術的にも優れたパブリック・ディプロマシーを展開しているのは韓国と言ってもいいかもしれない。
  
ソフトパワーと市場の力の戦い
 
 私は正直、今の日本の韓流ブームには、懸念を感じている。例えば、若者に大人気の「少女時代」や「KARA」が「独島(竹島)は韓国の領土です。ファンならそう主張してね」と訴えれば、そう主張する日本人ファンも出てくるんじゃないか、と。
 
 そんなこと、あり得ない、と思うかもしれないが、以前、テレビの討論番組で、若者の強い支持を集めている堀江貴文さんが「尖閣諸島なんて明け渡してしまえばいい」と言っていたのを思い出すと、今の日本の若者が、国家利益より、女神と崇めるアイドルの意見の方を重視することもあるやもしれないと思う。そうなれば究極のパブリック・ディプロマシーの成功例として歴史に残ることだろう。
 
 しかし、だからと言ってフジテレビ前で抗議デモをする気にもなれない。それはフジテレビという一商業メディアの問題ではないからだ。これをパブリック・デイプロマシーという視野でとらえるなら、あくまで外交交渉であり、世に言う「銃声のない戦争」である。ソフトパワーと市場(市民)の直接外交、戦いである。市場の方が強ければ、外交の主導権を握れる。大切なのは市場(市民)に、少しでも国益意識があるか、ということである。
 
 当たり前だが、もし日本の市場が韓国産コンテンツを本当に歓迎しなければ、企業も無理には売り込めない。韓国スター、アイドルたちにとって、それでもなお日本の市場が魅力的であれば、その市場で売れるために、韓国側が日本人の好まない言動は控えるようになる。ソフトパワーも力だが、市場も力なのである。
 
 例えば、台湾女優の林志玲さんが中国市場に進出する際、彼女の母親は台湾独立運動からすっぱり足を洗った。それは中国市場がそれだけの力を備えていたから、と言える。
 
 今さら、鎖国するわけにはいかないのだから、日本人は堂々と韓流ブームを迎え撃て、と思う。