電力自給ってどうなの?

鳥取ガスの挑戦】
第1回:「電力会社に頼らない施設を作りたい」、ガス・コージェネを中心に電力を完全自給
第2回:自家発電特有の問題が引き起こした全館停電、安定稼働にはノウハウが必要
第3回:台数制御に向けて直流給電を検討、将来はスマート・グリッドの実験も
大森敏行

 
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20110711/193237/?ref=ML
 電力会社から商用電力の供給を一切受けず、自家発電だけで必要な電力を賄っている施設が鳥取県鳥取市にある。鳥取ガスが作り上げたオー
ル・ガスのショールームサルーテ」だ。ガス・エンジンにより発電を行うガス・コージェネレーション・システムに太陽光発電パネルと小型風
力発電機を組み合わせ、完全自立型の電力システムを構築した。
(略)
 
 当時、サルーテのエネルギー・システムの全体的な設計を行った鳥取ガス 供給保安チーム 製造グループ 課長の窪田幸男氏によると、「商用
電力がなくてもガスだけで自立できるという実証試験的な意味合いがあった」という。
 
 メインの発電源は、ガス・コージェネレーション・システム。22kWの発電能力を持つ発電機が5台ある。稼働しているのは4台で、1台はトラブ
ルやメンテナンスの時のための予備機だ。発電機はヤンマーの製品で、システムの構築には「ヤンマーにかなり協力してもらった」(窪田氏)。
 
 太陽光発電には、4kWの発電能力を持つ三洋電機製の民生向けパネルを2組使っている。風力発電機は最大でも1kWの発電能力しかなく、全体の
発電にはほとんど寄与していない。ただ「風力発電の方が(一般の来場者には)興味を持たれる」(窪田氏)ことから、自家発電をアピールする
看板としての役割を果たしている。館内の空調は、ガス・ヒートポンプ・エアコンと、ガス・コージェネレーション・システムの排熱を利用した
吸収式冷凍機を併用している。
(略)
 ガスと商用電力を併用する一般的な業務用施設に比べ、光熱費は1.2〜1.3倍程度になっているという。
 
 ガス・コージェネレーション・システムの発電効率は、最大でも約26%しかない。排熱を利用することで、ようやく総合効率が約83%に上が
る。つまり、熱を使い切らなければコスト的に厳しい。このため、空調が不要な季節は効率が上がらず、どうしてもコスト面で不利になる。夏は
コージェネレーション・システムの排熱を使う吸収式冷凍機を冷房に利用しているが、それでも全ての排熱は使い切れていないという。
(略)
 なぜUPSから頻繁な給電が行われていたか。そのカギは電力の品質にある。UPSの初期設定は、商用電力の高い品質に合わせてあった。ところ
が、1号機が発電する電力は電圧の変動が激しく、初期設定の正常範囲を逸脱することがあった。その際、UPSの保護回路が電圧を安定させようと
して、その動作の間、内蔵する2次電池から電力を供給していたのだ。冷蔵庫のコンプレッサやコピー機などの動作により負荷が増えた場合に
は、発電機はフィードフォワード制御で電圧を高めてから電力を供給する。そのため、どうしても小型の発電機では電圧の変動は避けられない。
(略)
 もっとも、運用の工夫が不要になった訳ではない。今でも「朝、照明をつける順番を間違えると電力供給が止まってしまう」(窪田氏)という
問題はある。
(略)
 発電機の台数制御を断念した理由は、やはり電力の品質だという。発電機間で連系を行おうとすると、ベースになる電力が必要になる。通常で
あれば、高品質な商用電力をベースに周波数や電圧、位相を合わせていく。ところが、1号機が発電する電力をベースとして使おうとすると、負
荷の変動により電力の品質が変わるため、同期が難しい。このため仕方なく今の構成になったのだ。
(略)