【中外時評】「国債村」が崩壊する日


 
この実哲也ってひと、実在するのかな(爆)
ものすごいテンプレ論説といい、BOTじゃねえの?
なんか写真も合成っぽいしwww
 

国債村」が崩壊する日 財政改善へ甘え許されず 

論説副委員長 実哲也
(日経、11年06月19日、日曜日)
 
 ギリシャ、英国、スペインから米国まで。欧米諸国では人々が町に繰り出してデモに参加する姿が目立つ。財政再建のための緊縮策に対する抗議である。
 財政危機に直面したギリシャでは連日数万人規模のデモ隊が公務員の人員や年金の削減反対を叫ぶ。英国では授業料引き上げが学生の強い反発を受けた。
 2008年のリーマン・ショック後に欧米諸国は財政刺激策を競ったが、今やベクトルは逆になり、膨らんだ財政赤字の削減に動く。それが反対勢力との強い政治的緊張を招いている。
 そんな欧米と比べるとまことに静かなのが日本だ。
 国の債務の相対的な規模ではギリシャよりひどく、先進国で最悪の財政状態にある。格付け機関による格下げや格下げ検討も相次ぐが、国債市場はどこ吹く風だ。増税論議はあるものの欧州のように大胆な予算削減で抗議の嵐が起きる姿もない。
 
 大震災という要素があるにしても、同じ赤字病を抱える割には奇妙なまでの違いである。
 
 財政への危機意識がないわけではない。自民党の財務金融部会は今月初め、財政不安から国債金利が急上昇した場合の影響や対応策を記した「Xデー・プロジェクト」報告書をまとめた。
 国の債務が7、8年以内に家計の金融資産残高を超えかねないことなどから「(国債金利急上昇という)万が一の事態がそう遠くない日に現実のものになることも否定できない」と指摘。国債を大量保有する銀行の経営悪化で金融システムに疑念が生じる恐れや、企業の資金調達難、利払い費増加による財政悪化の加速が起きうると警告する。
 危機に至ったら、ギリシャのように「危機前に必要とされるレベルを大幅に超える極めて厳しい歳出・歳入の見直しをせざるをえない」とし、市場沈静化のための規制対応や日銀の市場安定化策にも言及した。
 日銀の白川方明総裁も最近の講演で「政府の支払い能力への信認は非連続的に変化しうる」と述べ、財政健全化が急務であることを強調している。
 にもかかわらず、そのための行動をだれも起こさず、市場でも政治でも静けさが支配しているのはなぜなのか。
 Xデー・プロジェクトで市場関係者らからヒアリングした宮沢洋一参院議員は「特に金融界に先のことを考えている人がほとんどいないことに驚いた」という。銀行の国債保有額は増える一方だが、彼らが意識しているのは目の前の利益のみ。2、3年先は遠い未来で、考えても無駄と見ている印象を受けた。
 政治も同様だ。目先の政局に没頭し、選挙区で得点にならない財政の先行きには気が回らない。いわば感覚のまひである。危機は来るかもしれないがあすではあるまい。そんな弛緩(しかん)した気分が渦巻いている。
 その裏には厳しい目で財政改革を迫るメカニズムが日本には存在しないことがある。
 
 一つは政治的圧力の不在。欧州のユーロ加盟国は財政赤字を一定範囲に抑えることが義務付けられている。規律の緩みが危機につながった反省から再び厳しく互いを監視し始めた。経済優等生のドイツも社会保障費削減を含む財政改革に動く。
 米国では、公的医療費などの歳出削減を迫る野党・共和党の攻勢が「内圧」になっている。
 
 もう一つは市場の規律が働きにくいことだ。国内投資家が国債の94%程度を保有していることが大きい。
 その大半を占める銀行、生命保険など金融機関は「ほかの金融機関も持っているから安心」という横並び意識や、貸し出し難などでめぼしい運用先がない状況を共有する。運命共同体でもある「国債村」の住人は財政の将来が心配だからといって国債売りに走ることはまずない。
 だが、国債市場の鎖国状態がいつまでも続くわけではない。金融機関が国債を買う原資になる家計の貯蓄が減るのは避けられないからだ。あるエコノミストは「15年度前後から海外投資家の国債保有比率が上昇、悲観シナリオなら20年度には30%近い水準になる」と予測する。
 
 国債市場が「開国」すれば、国債村のおきては崩れ、市場から「王様は裸」と宣告される日は近づく。その前に行動を起こさなければならない。
 財政の病は悪化しているから処方箋づくりは容易ではない。消費税増税は欠かせないが、社会保障費の伸び抑制など歳出を抑える厳しい措置も必須。成長力を高める施策も同時に進めなければ赤字は解消しない。
 経済の司令塔なき政権にそんな合わせ技ができるかどうか。もう10年以上も言われてきた財政無策。危機が起きても「想定外」の言い訳だけはできない。