金融緩和で景気が良くなるby森永オタク郎

   
こういうガチンコ闘論は良いね
内容以前に闘論を諒承された両氏をリスペクト。
ただ漏れは森永氏って評価できないんだよね。この人有名になってから全然勉強していないでしょ。なんら危なさのないタレントになっちゃった。だからテレビで使ってもらえる(笑)
この勝負は池田さんの完勝。問題は資金需要がないって程度のことすら理解していない森永。政府が需要創造をしなきゃいかんのよ。その論点抜きのこの対談は実に不毛。財務省はほくそ笑む。森永って池田財政再建論を宣伝するための噛ませ犬かもしれないと疑ってしまう。
  

2011年02月24日(木) 週刊現代
経済論戦勝ったのはどっちだ!森永卓郎vs.池田信夫 激突120分
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2114
  
「フィクションの話をするんじゃないよ!」。今年の元旦、テレビの生放送中に、景気対策を巡って激論を繰り広げた森永氏と池田氏。はたして日本経済は立ち直るのか。話題の二人
が、再び相見える!
 
■それは19世紀の理論だ
 
〜森永さんと池田さんは、元旦の「朝まで生テレビ!」で、日本経済の再生のために何をすべきかについて、大激論を交わして話題になりました。「朝生」での議論の決着をつける
ためにも、ぜひお二人に、あらためてこの問題について討論をしていただきたいと思います。
 
池田:デフレ、デフレと言いますが、デフレというのは、要するに長期的な経済停滞の結果なんです。だから表面的な現象だけにとらわれるのではなく、その根本原因を考えるべきです。
  
〜池田さんは、日銀による金融の量的緩和(国債の買い取りなどによって銀行に資金供給をすること)拡大に強く反対していますね。
 
池田:必要なときは金融緩和をやるべきですが、日本の「失われた20年」は、成長率の低下によるもの。いまは、いかにして経済の成長率を上げるか、これに尽きます。これ以上の
金融緩和は有害無益です。
  
〜対して、森永さんは、「金融緩和を拡大すべき」という主張をされています。
  
森永:その「成長率を上げる」ために、まずはデフレ脱却をしよう、ということ。この20年、日本は成長しなかったのに、なぜ欧米は2倍くらいの経済規模に拡大したのか。理由は簡単で、日本だけがデフレだったからです。ですから、とりあえず欧米がやったことを日本もやればいい。
   
〜それが、大規模な金融緩和ということですか?
   
森永:'08年のリーマンショックのあと、イギリスは金融緩和によって通貨の供給量を3倍に増やし、アメリカも2・5倍に増やしました。対して、日本はまったく増やさなかった。
   その結果、どうなったかというと、為替がイギリス(ポンド)はかなり下がり、アメリカ(ドル)とヨーロッパ(ユーロ)はほぼ変わらず、日本だけがどんどん円高になった。その影響で製造業が厳しくなり、日本の生産だけが激烈に落ち込んでしまったわけです。だから、日本も欧米と同じように、金融緩和で通貨供給量を増やせば、為替の問題は解決するはず。    
池田:その話については日銀が反論のペーパーを書いてますよ。日銀の供給する通貨(マネタリーベース)と円高は因果関係がない。リーマンショックのあと円高になったのは、それまで売られていた円が巻き戻されたのと、アメリカのような金融システムの壊れた国よりも、日本のほうが安全だと円に投資が集まったからです。これは日銀の白川総裁も言っている。  
森永:いやいや。通貨供給量が増えれば円安になり、物価も上昇する。教科書的な経済理論でも、物価は通貨供給量に比例して決まることになっているでしょ。
   
池田:そんな経済理論はありません。物価が中央銀行の供給する通貨の量で決まるという素朴な貨幣数量説は19世紀の理論。
    
森永:ええっ? そうなんですか? 日本も'01年から断続的に日銀が量的緩和をやりましたよね。あのとき'03年、'04年と、物価はずっと上がっていたじゃないですか。その後、緩和
をやめてしまったからデフレになったんでしょ。もしいま日銀が通貨供給量を100兆円増やすとします。100兆円で国債を買えば、金利1・2%として毎年1兆2000億円の金利収入が得られる。300兆円なら、3兆6000億円ですよ。国庫のおカネが足りないのなら、これをどんどんやればいい。でも、じゃ、なぜそれがなかなかできないかというと、インフレになる危険があるからでしょう。逆にお聞きしますが、通貨供給量と物価が関係ないとおっしゃるなら、いっそのこと、どんどん金融緩和をやればいいんじゃないですか?
  
池田:2000年代前半に、日銀はマネタリーベースを36%も増やしたが、図(次ページ)のように物価はほとんど変わらなかった。だから日銀は量的緩和をやめたのです。300兆円だとか 、そんなバカげた話、やめてください。そんなことを実際にやった国があるんですか。
   
森永:あるじゃないですか。現実にアメリカやイギリスがやっているでしょう。
  
池田:アメリカでも50兆円程度ですよ。日銀が300兆円もばらまいたら、とんでもない悪影響が出る。
  
森永:何ですか、その悪影響というのは。
  
池田:'06年の日銀の金融緩和により、1兆ドルといわれるおカネが日本からアメリカに流れた。そして、それこそがアメリカの不動産バブルを増幅させ、サブプライムローン問題に
つながった。日銀が金融緩和をやると、日本国内に資金需要がないから、カネは海外へ出ていくんです。もしも、今300兆円の金融緩和をやったらどうなるか。今度はカネが中国に流れて、中国のバブルをさらに膨らませることになる。ただでさえ中国経済は不動産バブルで危ないのに、日本のカネが大量に流入してバブルが崩壊したら、前回のアメリカのときより、もっとひどい危機を引き起こすことは確実です。
  
■その話には根拠がまったくない
  
森永:でも、だからといって日本が金融緩和をやらなければ、中国バブルの崩壊を防げるというわけじゃないでしょ? 私が言いたいのは、なぜ日本だけが、ひたすら円高に耐える
耐乏政策のようなことを続けているのかという……。
 
池田:じゃあ、日本は中国バブルを促進するような政策をしろというわけ? 僕は日銀がそれをしないのは、きわめて賢明だと思う。中国だけですむ問題じゃないでしょ。結局日本に
降りかかってくるんですよ。
 
森永:そうおっしゃいますけど、昨年秋に日銀は金融緩和をやりましたよね。じつはその効果がすごく早く出ている。昨年12月の生鮮品を除く消費者物価指数の上昇率は前年同月比
でマイナス0・4%まで回復しました。一昨年12月の数値はマイナス1・3%だったんですよ。一方的な円高に歯止めがかかったし、東証のリート(不動産投資信託)指数もかなり回復した。つまり大きな効果があったわけで、これをもっと拡大しましょうという話をしている。
 
〜ただ先日、アメリカの格付け会社スタンダード&プアーズが日本国債の格付けを下げました。金融緩和の拡大は、さらなる格下げに繋がるという指摘も……。
  
池田:このタイミングで大規模な金融緩和なんてしたら、どうなるか。マーケットは、日本の国債は日銀が引き受けないと消化できなくなったと判断して、みんな逃げていきますよ。あなた(森永氏)が言うように、50兆円も100兆円も日銀が国債を引き受けたら、市場に対して「日本の財政はもう破綻する」とシグナルを送るようなものだ。
  
森永:それはないですよ。今回、国債の格付けが下がったあと何が起きたかというと、国債の値段が上がって円も高くなった。少なくとも市場はいま、日本がヤバイとは見ていない。だいたい日本の国債の95%は国内で保有されています。それが財政破綻したギリシャとの大きな違いです。日本の財政が本当の危機にさらされるのは、外資に大量の国債を持たれてしまうときでしょう。
  
〜日本人は、全体で約1400兆円も金融資産を持っている。国債はその日本人のカネで買われているのだから破綻はしない……?
  
池田:その「日本人が国債を持っていれば大丈夫」という話に根拠がまったくない。仮に日本人は死ぬまで国債を持っているとしても、国債を買える余力はあと3年ぐらいで尽きる
。日本人の個人金融資産と国債残高が実質的に並んでしまうからです。そうしたら、結局は外資に買ってもらうしかなくなる。
  
森永:だから、そうなる前にデフレを止めないと……。
 
池田:残念ながら、1000兆円近い日本の政府債務は、1~2%ぐらいのインフレで解決する規模じゃない。繰り返しますが、根本的な解決は、成長率を上げることしかない。もはや日銀の金融政策でどうこうできるような状態じゃないんですよ、いまの日本は。
  
■どうすればいいと言うわけ?
  
森永:その「成長率を上げる」ために金融緩和、つまり資金供給を増やそうと言っているのですけど。資金供給を増やすと予想インフレ率(将来的に予想される物価の上昇率)が上がり、その分、実質金利が下がるため、企業はおカネを借りやすくなって設備投資を増やし、経済が活発化します。同時に円安になりますから、日本企業の競争力が回復して、輸出も増えることになります。
  
池田:金融緩和は短期の景気対策で、日本経済の実力(潜在成長率)を上げることはできない。いま日本の潜在成長率は0・5%。これは日本経済がいくら頑張っても、これ以上は成長で
きないということ。いくら資金供給を増やしても0・5%しか成長できなくて、何がうれしいのか。
  
森永:ならば、いま仮に通貨供給量を50兆円増やしたとすると、日本経済に何が起こるとお考えですか。
  
池田:何も起きないでしょうね。多少の心理的効果はあるかもしれないけれど。それより先ほど言った中国バブルの後押しになるほうがずっと怖い。
  
森永:じゃあ、潜在成長率を上げるにはどうすればいいと言うんですか。
  
池田:日本がこうなった一番の要因は、'90年代の不良債権処理の誤りです。銀行もさることながら、問題はその融資先企業にある。本当はもう破綻しているのに、ゼロ金利政策によってダメな企業を延命させてしまった。こういう〝ゾンビ企業〟が、ずっと日本経済の足を引っ張ってきた。
  
森永:でも、ゾンビ企業を一掃すると、大量の失業者が出て、かえって景気回復の足を引っ張ることになるのでは。デフレが止まっても立ち直れないレベルの企業はともかく、そうでない企業まで潰せというのは、やりすぎではないですか。
  
池田:あのね、森永さんのような意見は、一般受けするから政治的には通りやすいでしょう。でも、政治家たちがそういう問題の先送りをしてきたから、この20年、日本は低迷を続
けているわけですよ。確かに、一時的には倒産企業も失業者も増える。でも、それを乗り越えないと次に進まない。とるべき処方箋はわかっているのだから、あとは政治家が悪役をひきうける覚悟を決めるかどうかなんです。
   
森永:うーん。それでも私はその前に、デフレからの脱却を最優先すべきだと思います。デフレのまま、成長率が上がるなんてことはないんだから。
  
■「海外逃亡」するしかない
  
〜池田さんは、具体的にどうすれば成長率が上がると考えているのですか。
  
池田:抜本的な日本経済の改善には産業構造の転換が必要です。これから日本が何によって儲けていくか。ここがものすごく難しい。金融、IT、ソフトウェアなどが言われています
けど、現状はいずれもダメで、とくにソフトウェアは壊滅状態。残念ながら。
  
森永:日本企業は通常の為替レートになれば元気を取り戻しますよ。今は一方的な円高から一応底を打った状態ですけど、じつは昨年秋の金融緩和のあと、日本企業の生産は急速に
回復している。昨年12月の鉱工業生産は前月比3・1%増、今年1月は5・7%増の予測です。ですから1ドル100円は無理としても、90円台になれば、日本経済はかなり回復するはずです。
  
池田:今の為替レートは割高ではない。実質実効為替レートという物価を反映した基準で見ると、むしろまだ割安です。これは経済の基礎的条件を反映しているので、日銀が変え
ることはできない。円安で新しい産業が生まれることもない。
  
森永:私は新しい商品やアイデアが経済をひっぱり上げるというのは幻想だと思う。経済産業省の統計から分析すると、製造品に占める新商品の割合は、ほんのひと握りです。日本
経済を引き上げる力はない。
  
池田:この「iPhone」を見てくださいよ。10年前は存在していなかったものが、いま全世界で5000万台以上売れてるんですよ。これによってアップルの時価総額マイクロソフト
抜いた。日本にはこういうダイナミズムがないから停滞が続いてるんです。
  
森永:繰り返しますけど、日本の成長率を上げるには、通貨供給量を増やし、それによって企業の設備投資が……。
    
池田:あなたの意見は、ある意味で正しい。そうやって日銀がめちゃくちゃな金融緩和をやったら、世界の投資家が日本国債にカラ売りをかける。その結果、国債も円もドーンと
値下がりしてハイパーインフレが起きる。そうなったらもちろん財政は破綻、倒産企業も続出で日本経済は地に落ちる。そして、すべてリセットしたうえで焼け跡からの再出発に
賭けるんだ、と。いや、これはもう避けられないシナリオかもしれない。だから、森永さん、いっそのこと、早く日銀総裁になってくださいよ(笑)。
  
森永:それはもう、やらせてくれるなら、ぜひ(笑)。
  
〜どちらにしても、日本が危機的であるのは間違いない、と。民主党・菅政権は、この状況に立ち向かうにはあまりに頼りなく、方向性がないように見えます。誰か期待できる政治
家はいませんか。
  
森永:私は小沢一郎さんに期待しているんですけどね。2009年のマニフェストは、バラマキだと批判されたけど、整合性をもっていた。つまり平等社会をつくるために、官僚とアメリカと財界という三大権力と対決しようというのが、あのマニフェストだった。
   
池田:僕も以前は小沢さんに一縷の望みをもっていました。かつての『日本改造計画』には、これからの日本は個人が独立して自己責任でやっていくべしという政治家の姿勢が出ていた。 ただ、いまとなってはどうなんでしょうね……。
  
〜となると、われわれは自分で自分の身を守るしかなさそうです。どうしたらいいんでしょう。
  
森永:私と池田さんの一致点は、どのみちこの先、インフレになるだろうということ。それなら、たとえば借金をして家や不動産を買うのは? もちろん、変動金利ではなく固定金利で。
  
池田:海外投資で資産を逃がしておくとか。円が暴落したら逆に儲かる。今の話は冗談に聞こえるかもしれませんが、そうじゃないですよ。先ほど言った最悪のシナリオが、あと何年かで現実になる可能性は高い。もはや日銀がカネをばらまくぐらいのことで解決できる問題じゃない。
   
森永:そこは最後まで、意見が一致しませんね……。

池田信夫
1953年生まれ。NHK経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は上武大学教授。株式会社アゴラブックス代表取締役。主な著書に『新・電波利権』(アゴラブックス)など

森永卓郎
1957年生まれ。経済アナリスト。経済企画庁、三和総合研究所経済・社会政策部長を経て、現在、獨協大学経済学部教授。近著に『ニュースのウラ読み経済学』(PHPビジネス新書)など