キムは日本の島影をみた。松島(現・竹島)である。


 
新聞連載小説を待ち遠しく読んだのは久しぶりだった。
描写のいちいちが具体的で発見があり、少しもだれたところがない。
・・・それはそれとして、以前このブログでは朝鮮通信使が鶏を盗んだシーンを紹介した。こんどはさり気なく竹島に言及している。
辻原登さん、なかなか骨のある人のようだ。

韃靼の馬(427)
原郷25
日経新聞 2011年01月14日)

 
(略)
 ──生気を取り戻した天馬を乗せた清和号は、翌払暁、抜錨してウルルンドに別れを告げた。日が中天に差しかかる直前、キムは日本の島影をみた。松島(原・竹島)である。翌朝、差しのぼる陽光を全身に浴びて、薄桃色に輝く隠岐の島々右舷にとらえた。
 清和号は北西風に乗って順調に航行をつづけ、清津を発って十日後の正午、敦賀の深い湾の中に滑るように入って行く。
(略)