マスゴミ衰亡論シリーズ

2011年1月7日(金)
彼らがあのツイートに怒った本当の理由
小田嶋 隆
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20110106/217826/
(略)
 不倫は、本当のことを言えば、業界にあまねく偏在している。誰だって知っている。
 根も葉もない流言飛語レベルの噂から、「公然の秘密」として関係者の誰もが知っているガチなネタに至るまで、テレビ局の周辺には、それこそワイドショーが年中無休の24時間営業で制作できるぐらいの材料が転がっている。
 ところが、それ等の不適切な情交のうち、放送可能な題材として実際の電波に乗るのは、当事者の事務所がある程度納得済みの事案に限られている。あるいは、離婚発表を写真集の発売日にシンクロさせてくる元アイドルの告白話や、半期ごとに新しい艶聞を供給することで芸能生命をながらえている「恋多き」女優の、あっけらかんとした号泣会見みたいなネタだけが、いつもの取材メンバーに向けてプレスリリース付きでセッティングされることになる。
 かくして、記者は記事を獲得し、スタジオはVTRの尺を確保する。他方、スタジオのコメンテーターは批判対象を入手し、恋愛体質タレントは出演機会と人格的陰影をゲットし、週刊誌は部数と下請けの就業機会を手の内に入れる。つまり、誰もが「得」をしているわけだ。
(略)
 ツイートは、マスメディアにとっての生命線である「情報の統制権」を爆破してしまう。これが最も致命的なポイントだ。
(略)
 どういうことなのかというと、特定の情報は、ニュースにすることによってではなく、ニュースにしないことによって交渉のカードに化けるということだ。
 たとえば、表沙汰になっていない醜聞は、表沙汰にしないことを条件に、出演依頼やギャラ交渉においてモノを言う。
(略)
 とはいえ、彼女は干されるだろう。
 理由は、テレビ業界の人間にとって、インサイダー情報の漏洩は掟破りだからだ。
 掟は、法よりも厳格なものだ。
 暴力団の構成員は、法を犯すことをためらわない一方で、仲間内の掟を破る人間を絶対に許さない。テレビの人たちも同じだ。彼等は、基本的には、発覚しない限り、何をやってもかまわないと考えている。でも、同族の掟を破る人間はどんなことがあっても許さない。彼等は、少女買春にかかわった人間や、覚せい剤で逮捕された仲間でも、時間がたてば許すことにしている。が、業界の仁義をないがしろにしたメンバー(沢尻エリカとか)は永遠にハブる。そういう人たちなのだ。
(略)