高まるアウトソーシング批判におびえるインドIT企業

 
こんなの当たり前だよねえ
以前は全体として景気が良かったから槍玉にあがらなかっただけの話。
日本でもいずれこういう「愛国的」議論が出てくるだろう。
そのときマスゴミが「米国型経済」で企業繁栄国民窮乏の韓国経済をどう評価するか見ものですな
 

高まるアウトソーシング批判におびえるインドIT企業
米国民に雇用を提供することがカギ
Bloomberg Businessweek
Bruce Einhorn(Bloomberg Businessweek香港支局アジア地域担当エディター)
Ketaki Gokhale(Bloomberg News記者)
米国時間2010年11月4日更新
「 India Outsourcers Feel Unloved in the U.S.」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20101112/217057/
 
 バラク・オバマ米大統領は11月6日から4日間、インドのムンバイとニューデリーを訪問し、インドの政界や財界幹部と会談する(本誌注:オバマ大統領の訪印は予定通り完了した)。米国内では現在、インドのアウトソーシング請負企業に対して拒否反応が起こっている。この問題について、オバマ大統領がインド側から批判を受けることは確実だ。
 
 米議会は8月、就労ビザ申請料金を2000ドル(約16万円)引き上げ、約4300ドル(約35万円)とする法案を可決した。インドのソフトウエア業界が設立したロビー団体ソフトウエア・サービス業協会(NASSCOM)のソム・ミタル代表幹事は「IT(情報技術)分野の外国人労働者が米国に滞在するには就労ビザが必要だ。インド企業にとって、年間2億5000万ドル(約200億円)の負担増となる恐れがある」と不満を表明している。

 同じく8月、米オハイオ州は、州政府がIT事業を外注する場合、インドをはじめとする海外への業務委託を禁止することを定めた。インドの中堅ITサービス会社ヘキサウエア・テクノロジーズ(本社:ムンバイ)のP・R・チャンドラセカールCEO(最高経営責任者)は「米国内のこうした動きを懸念している。他州にこうした動きが広がらないことを望む」と語る。


北米市場に依存するインドのITアウトソーシング産業

 インドのアウトソーシング請負企業の業績は、世界同時不況の余波で伸び悩んでいた。だが現在、景気回復に伴い、こうしたインド企業は再び業績を伸ばしている。米IT市場調査大手フォレスター・リサーチ(FORR)によれば、IT投資の意欲が回復し、米企業や米政府のアウトソーシング支出は今年、前年比5.6%増と大きく伸びる見通しだ。

 インドのITサービス最大手タタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS、本社:ムンバイ)は10月22日、今年度第2四半期(7〜9月期)の北米での売上高が、過去最高の10億ドル(約820億円)に達したと発表した。同社のアジア太平洋部門を統括するビシュ・アイヤル氏は「当社のサービスに対する需要が急増している。顧客は当社のような企業が提供するアウトソーシングサービスを必要としている」と語る。

 だが、米国で保護主義的な措置が拡大すると、堅調なビジネスが一気に落ち込むことが懸念されている。米国市場は、年間500億ドル(約4兆1000億円)に上るインドのITサービス輸出額の61%を占める。ヘキサウエアの昨年の売上高2億1500万ドル(約180億円)の3分の2は、米国企業向けのものだった。大手のインドIT企業も米市場に依存している。

 米メディア・情報サービス大手ブルームバーグの調査では、TCSの前年度(2010年3月期)の売上高のうち、米国向けが57.5%を占めた。TCSの主要ライバルであるインドのITサービス大手インフォシス・テクノロジーズ(INFY、本社:バンガロール)も、北米向けが全体の66%を占めている。

日本、中国などアジア市場の開拓は進んでいない

 インド企業の経営陣は、事業の多様化や新規顧客の開拓の必要性を認識している。だが、北米や西欧以外の市場を開拓する取り組みはあまり成果を上げていない。米アウトソーシング業務コンサルティング会社TPIのアジア太平洋統括責任者アルノ・フランツ氏は「インド企業は日本市場にはあまり食い込めていない」と指摘する。

 インドのアウトソーシング請負企業は中国市場に大きな期待をかけている。インド企業は中国で技術者の採用を増やし、多国籍企業中国企業から業務を請け負っている。とはいえ、米金融大手ゴールドマン・サックス(GS)のリポートによれば、インドの主要ITサービス企業は中国で5000人程度しか雇用しておらず、売上高は2億5700万ドル(約210億円)ほどにすぎない。TPIのフランツ氏は「各社とも中国進出にかけている。だが、成果が出るにはまだ時間がかかる」と語る。


米国内での現地採用や米企業の買収にシフト

 新たな市場に根付くには時間がかかるため、インドのIT企業は今後も米国での事業拡大に取り組む必要がある。また、雇用流出を危惧する米国側の反発を和らげるため、米国内で現地雇用を拡大することにも力を入れている。

 インドのITサービス大手マヒンドラ・サティヤム(本社:ハイデラバード)は10月13日、米ケンタッキー州厚生省の文書管理システムを整備する事業を受注したと発表した。同社は米国をはじめとする11カ国に「近隣事業所」と呼ぶ現地拠点を設立。米国などの海外で、現地社員を採用する体制を整えようとしている。同社のC・P・グルナニCEOは「顧客は近隣事業所の方が安心して業務を委託できる。その結果、米国就労ビザを確保する必要性も低下している。インド国外で現地採用した社員は2006年には1人もいなかったが、今や全体の約20%を占めている」と語る。

 ビザ発給ルールや州政府のアウトソーシング方針をめぐる不穏な動きを受け、インド企業が米企業の買収に乗り出す可能性もある。過去10年間で、インド企業による北米でのIT関連のM&A(合併・買収)は19億ドル(約1600億円)に上っている(ブルームバーグ調べ)。

 米国内ではアウトソーシングを批判する政治的主張が目立つ。だが、生産性向上を目指す欧米企業にとって、業務を外部委託し、経費削減を図る意義は今後も大きい。国際会計・コンサルティング大手デロイト・トウシュ・トーマツ(DTT)の上級ディレクター、センジョイ・セン氏(ハイデラバード在勤)は「全体の業務の30〜80%はインドへの外注が可能だ」と語る。

 インドへの業務委託で米国内の雇用が失われるとの警戒論が高まる中、インドのアウトソーシング請負会社は最大の市場である米国で受注が減ることを懸念している。

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